米中の新産業力を比較考察する本を執筆する過程で、日本を参考比較対象としてみた。すると、「なぜ日本の製造業はこんなにまで没落してしまったのか」、「なぜNatureの研究者ランキングなどで、日本はここまで低いのか」といった疑問にぶつかった。
そこに共通しているのは「短期的成績が求められるようになったから」という事実で、日本企業の場合、その原因は「物言う株主」(アクティビスト)の存在であること……
中国で相次いでいる無差別殺傷を、日本のメディアでは「社会への報復」と一括りにしてまとめて「得意がる」傾向にある。しかし事件の真相をたどっていけば、その言葉は日本で2008年から流行した「無敵の人」が発端になっていたことがわかる。
中国の場合は鄧小平が号令をかけた「向銭看(シャン・チェン・カン)(銭に向かって進め)」が生んだ社会的病理も混在している。
日本では短絡的に「最近は中国の経済状況……
APEC(アジア太平洋経済協力)2024は11月15日と16日にペルーの首都リマで開催され、18日からはブラジルのリオデジャネイロでG20が開催されている。ペルーではAPECが正式に始まる前に習近平国家主席(以下、習近平)はオンラインでペルーのチャンカイ港開港式に出席し存在感をアピールした。ブラジルはBRICS(新興国)の仲間でもあり、習近平はG20でグローバルサウス(新興国&途上国)の支援に向……
11月15日、石破首相はAPEC首脳会議が開催されているペルーのリマで習近平国家主席(以下、習主席)と会談した。11月16日の中国の中央テレビ局CCTVは、リマにおけるリマ以外の出席国との2国間会談に関する報道をしたが、多くの国の中で、石破首相との会談は最後に報道された。
会談冒頭の握手の際に習主席がにこやかに「下午好!」(こんにちは!)と大きな声で挨拶したのに対して、石破首相はニコリともせ……
11月11日夜、広東省珠海市で多数の死傷者を出した暴走車の容疑者が、自殺を図って意識不明なのに、なぜ動機が離婚財産分与への不満と分かったかというと、スマホの中に全ての情報が入っているからだ。事件現場の真横には、離婚後の財産分与訴訟に関して争っている裁判所がある。
日本では中国経済の状況が悪く、貧者が「社会への報復」をしているとして「一党支配体制への不満の爆発」につながるという視点からの情報が……
日本のメディアや米国問題研究者の多くは、「ハリスに有利」という米メディアの支持率ばかりを見て、「トランプ圧勝」の予測をする人は、(個別的例外を除けば)ほぼいなかった。
なぜ日本メディアは「ハリス旋風」に目を奪われ、客観的な予測ができなかったのか。
米メディアのほとんどは民主党寄りであるという決定的な欠陥があることに、多くの日本人が気が付いていないからだ。トランプ前大統領が第一次トランプ政権……
大統領選に圧勝したドナルド・トランプ前大統領は、選挙運動中に「全ての国に10~20%、中国からの全輸入品に60%の関税を課す」と表明している。しかし最大のトランプ支援者となったテスラCEOのイーロン・マスクは、EVの上海工場で莫大なビジネス権益を有しているだけでなく、中国政府に特別な厚遇を受け、習近平国家主席がトップを務める清華大学経済管理学院顧問委員会(海外大手企業トップが集まり中国経済発展を助……
「米大統領選」に関する中継番組は数多くあり、中国の関心の高さを表しているが、「トランプ勝利」を中国がどう見るかに対する官側の報道はいつも通り淡々としており、感想のような「視点」を表現する情報はない。「米大統領選」そのものに対する中国官側の「視点」としては唯一、11月6日に書いたコラム<中国CCTV:米大統領選_「札束」の力と「銭」のルール>がくり返し報道されただけだった。トランプ勝利……
11月3日、中国中央テレビ局CCTVは「央視新聞客戸端(CCTV新聞顧客端末)」で、<米国選挙_「札束」の力と「銭」のルール>という見出しで、「金」で決まる米大統領選のからくりを詳細に報道している。そこから、なぜトランプ氏が激戦州の一つペンシルベニア州で勝利したかが見えてくるのは興味深い。
米大統領選に関して中国の官側メディアが中国の「視点」を披露するのは珍しいので、本稿ではまず、CCTV報道……
世界中に「民主」を輸出しては戦争を仕掛けるNED(全米民主主義基金)は現在、アメリカの民主党を中心に全世界で暗躍しているが、ドナルド・トランプ前大統領はNEDが嫌いで、実は習近平国家主席やプーチン大統領が好きなようだ。トランプ政権時代だった2018年、アメリカの雑誌The New PublicがCNNの録音を基に報道している。
習近平やプーチンにしても、中国やロシアに潜り込んで反政府勢力を育て……
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