習近平国家主席にとってEUとの投資協定である「中欧投資協定」は長いこと悲願だった。しかしバイデン政権の介入や中国の安価なEVの「津波」によって挫折し、EUは2024年10月にEVに関する対中関税を決定。両者の関係は冷え込んでいた。
ところが「トランプ関税」がEUにも圧し掛かってきたことによってEUの対中姿勢は一転。EVに対する対中関税を撤廃し、価格協定で折り合う方向に動き始めた。実は2021年に……
石破首相は4月30日、東南アジア歴訪を終えて帰国した。石破政権発足以来、二回目の東南アジア訪問で、東南アジア重視が目立つ。
習近平国家主席も4月14日から東南アジアを歴訪している。トランプ関税に報復関税を宣言した数少ない国として、東南アジアを味方につけておくことが目的だろう。
トランプ大統領は東南アジアに関心が薄いにもかかわらず、相互関税に関してだけは非常に厳しい数値を出しているので、東南アジ……
解放の日
トランプ大統領の「関税愛」は今に始まったことではない。トランプ氏は1980年代以来、アメリカを利用していると彼が見なす国々に対抗する手段として、関税の活用を一貫して訴えてきた。「日本株式会社」の台頭が米国企業を圧倒すると政財界のエリートが危惧していた1980年代当時、トランプ氏がターゲットにしたいと考えていたのは日本だった。それから40年が経ち、トランプ氏は全世界に戦いを挑んでいるが、……
トランプ大統領は黒字の対米貿易国すべてが米国に貿易赤字をもたらしたとして4月2日に相互関税を課すと発表した。報復関税を宣言した国・地域には厳罰が待っているとしたにもかかわらず、中国が報復関税をかけてきたため、今ではあたかも米中関税合戦の様相を呈しているが、トランプ関税は同盟国をも含めたすべての対米貿易黒字国を相手にしているので、決して中国にターゲットを絞ったものではない。
しかし、米国の貿易赤字……
(本文末尾にTSMC海外工場に関する追記があります。4月24日加筆)
4月15日、米紙ウォールストリート・ジャーナルが<米国は関税交渉を利用して中国を孤立させる計画>(有料)という見出しの記事を報道した。要は中国に不利な貿易を実行すれば、「トランプ関税」のディールで「あなたの国の関税を緩和してあげますよ」ということだ。
これに関連した記者の質問に回答する形で、中国商務部は「そのような事態が発生……
4月17日、アメリカのピューリサーチが米国民の民意調査の結果を発表した。対中感情が2024年よりも改善し、関税の引き上げに関しては、米国民の半数以上が「良くない」と回答している。
中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は大喜び。しかし中国には言論統制があるので、民意調査を行うことは基本的にできない。したがって中国の庶民がアメリカをどう思っているかという調査はない。
そこで、中国のネ……
習近平国家主席が遂に中国の最強カード「レアアース凍結」を切った。
4月13日の論考<米軍武器の部品は中国製品! トランプ急遽その部品の関税免除>で、米軍武器製造の際の海外サプライチェーンにおいて中国製品が最も多いことを書いた。その中には他国で代替できるパーツがないわけではない。それでも中国に頼っているのは値段だけの問題ではなく、中国でしか製造できないパーツが多いからだ。
中でもレアアースは中国……
中国の「反外国制裁法」は近年、台湾とその経済、特にハイテク産業に影響を及ぼすとして大きな議論を呼んできた。遠藤教授の記事「習近平が睨んでいるのは『台湾統一』か 中国の『反外国制裁法実施規定』」では、この法的枠組みが台湾経済の将来に及ぼす影響について興味深い分析がなされている。教授の考察は中国の制裁措置がもたらす経済損失に焦点を当てているが、私のこの記事では若干異なる視点に立ち、台湾の柔軟な経済戦略……
日本時間4月12日(アメリカ時間4月11日夜半)、米税関・国境警備局(CBP)は、連邦政府が「スマホ、パソコン、チップおよび一部電子製品」を「相互関税」から免除することに合意したと発表した。
スマホはアップルの工場が中国にあるからであり、パソコンも中国から輸入しており、アメリカ国民の不満がトランプ政権に向かうことを避けたためだが、「一部電子製品」の中に、米軍武器を製造する際の「中国製品」が入って……
4月9日、トランプ政権の対中追加関税50%が発表されるとすぐ、中国はピッタリ同額の対米報復関税50%を同日夜発表した。しかし世界の株価暴落と米国債が売られるのを見てか、トランプ大統領は13時間後に前言を翻した。「報復関税をしなかった国に対する関税適用を90日間一時停止する」と言い始めたのだ。その数時間前まで「90日間一時停止はフェイクだ」と断言しておきながら、「基本関税10%以外は90日間一時停止……
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