李克強の死が、かつて天安門事件を招いた胡耀邦の死同様に、民主化運動につながるのではないかという憶測が日本では盛んに流れている。それを中国政府が恐れているという情報も、日本人の耳目には心地よいようだ。
本稿では、「李克強の習近平に対する相対的な党内序列は如何にして形成されたのか」に注目して、自分自身で判断できるようにファクトを確認したいと思う。
◆鄧小平が強引に失脚させた胡耀邦の死が招いた天安門……
李克強前首相が逝去した。まだ若いのにと、残念に思う。日本ではもっぱら「習近平のライバル」と位置付け、「権力闘争に敗北した」といったトーンの報道が目立つ。もし習近平が権力闘争のために反腐敗運動をしたのなら、なぜ側近の秦剛(元)外相や自身が昇進させたばかりの李尚福(元)国防部長を更迭したのか。権力闘争論者には説明がつかないだろう。反腐敗運動は軍にはびこる底なしの腐敗を撲滅し、軍のハイテク化を図るのが目……
国連安保理で25日、イスラエルのガザ地区への地上侵攻に対して米国が「停戦」ではなく「一時中断」という案を提唱し否決されたことを、日本では米国が「人道的見地から」提案したと報じている。それに対して中国では米国案を「ただ単に中東における米国の軍事配備を完成するまでの時間稼ぎに過ぎない」という解説が飛び交っている。皮肉なことに、その視点の発信源は米国のウォール・ストリート・ジャーナル報道だ。
◆……
中国の王毅外相兼中共中央政治局委員は10月23日、パレスチナとイスラエルの外相とそれぞれ電話会談し、即時停戦とともに「イスラエル同様パレスチナの国家も建設すべきだ」という「二国家解決案」を双方に対して伝えた。21日には中国政府の翟隽(てき・しゅん)中東担当特使がカイロ和平サミットに出席し、同様の主張をしている。
10月11日のコラム<ハマスの奇襲 背景には中東和解に動いた習近平へのバイデンの対抗……
Introduction
The Belt and Road Initiative (BRI) has entered a new phase marked by a transformation from large-scale infrastructure projects to smaller, higher-quality endeavors. President Xi Jinping'……
一帯一路構想の現状
一帯一路構想の10年:節目と変化。2013年に打ち出された中国の一帯一路構想が10年目を迎えた。中国は当初、東南アジア、南アジア、中東、北アフリカ、欧州の各国を結ぶ「シルクロード経済ベルト」(一帯)と「21世紀海上シルクロード」(一路)という、2つの重要経済ルートに沿って大規模インフラを建設するプロジェクトとして、この構想を打ち出した。この経済ルート……
10月18日、北京で第3回「一帯一路」国際協力サミット・フォーラム開幕式が開催された。習近平国家主席の基調講演の次に、プーチン大統領が壇上に立ってスピーチをしたのは、習近平がいかにプーチンに重きを置いているかを国際社会に明らかにするのに十分な効果を上げたにちがいない。
その後、習近平とプーチンは単独会談も含めて3時間ほど話し合っているが、何しろこの日はバイデン大統領が今から戦争を始めようとしてい……
10月9日、中国外交部報道官は「中国はイスラエルとパレスチナの友人」と発言して「中立」の立場を鮮明にしていたが、10月13日にサウジアラビア(以下、サウジ)・イラン両国首脳が会談してサウジが「イスラエルとの和解は凍結する」と表明した瞬間から、事態は一気に急変していった。
中国は明確にイスラエルのガザ地区に対する過度な報復攻撃を非難し、アラブの盟主・サウジやイランあるいはロシアと足並みを揃えながら……
1947年、国連は「パレスチナの地」を(ユダヤ教の)イスラエルと(イスラム教の)パレスチナで二分するとしながら、そこにいた多くのパレスチナ人を故郷から追い出したままこんにちに至っている。
不平等にも、国家主権を持った独立国家として国連加盟を認められていないパレスチナの一部であるガザ地区はいま、イスラエルによって壁で包囲され水道もガスも電気も断たれた状態でイスラエルからの陸海空による全面攻撃を受け……
The Current State of the Belt and Road Initiative
A Decade of the BRI: Milestones and Transformations. China's Belt and Road Initiative (BRI) has reached its tenth anniversary since its launch i……
カテゴリー
最近の投稿
- 「米国の500倍の生産力を持つ中国の造船業」PartⅠ 米国はなぜ負けたのか、関税で中国を倒せるのか
- 国有経済VS民営経済のターニングポイントか? 中国の2025年両会から読み取れる政策シグナルとは
- Turning Point for the State vs. Private Economy? Policy Signals from China’s 2025 Two Sessions
- 中国の防衛費は異常に高額なのか? 防衛費GDP比の米中日比較
- 中国2025年の中央1号文書を発表:食料安全保障、農村振興、農業改革の継続を重視
- 科学誌ネイチャー「米中AI競争は土俵が違う」――「中国は製造業土台に実用型、アメリカは投資型」
- 習近平とプーチンを喜ばせた「トランプ・ゼレンスキー会談決裂」
- わずか1カ月
- 習近平・プーチン・トランプの相互関係 トランプはウクライナ問題解決後、対中攻撃を考えているのか?
- Food Security, Rural Revitalization, and the Unfinished Missions of Agricultural Reform in China’s 2025 No. 1 Document