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トランプ「習近平との春節電話会談で蜜月演出」し、高市政権誕生にはエール 日本を対中ディールの材料に?
トランプ大統領と習近平国家主席(韓国釜山で)(写真:ロイター/アフロ)

2月4日夜、習近平とトランプが電話会談し、「新しい1年」の米中友好関係を強化していこうと仲良く誓い合った。2月4日は立春なので、春節を祝っての電話会談と位置付けることができる。中国では米中のこの電話会談を大々的に報じ、「今後は米中両大国が仲良く世界で活躍していこう」というムードに満ちている。

G7のうち日本だけが「台湾有事」をクローズアップして対中強硬姿勢を貫いている現状に加えて、米中のこの蜜月は、日本の孤立化を加速させるのではないかと懸念される中、トランプから高市内閣誕生にエールが送られるというハプニングが起きた。

日本叩きの手を緩めていない習近平と中国人民は侮辱を受けたことになるが、ある意味トランプは対中ルールを有利に進めるために高市政権を利用したことにもつながり、習近平の日本叩きは一層激しさを増すだろう。心配されるのは極右化した日本の対米従属化がもたらす危険性だ。

◆中国での大々的な報道は何を意味するのか? 

2月4日、21:37:48に新華網が<習近平とトランプの電話会談>に関する第一報を1行で短く伝えると、同日23:49に中央テレビ局CCTVが新華社が直接作成提供したと思われる詳細な文字情報を伝えた。その3分後の23:52:54に新華網がCCTVに提供した文字情報全文を独自に伝えている。同時に外交部が文字情報を新華網の全文と同じ形で伝えた。実にアクロバット的だ。これを皮切りに、おおむね図表1の順番で報道が拡散していった。

但し、図表1を作成した2月5日09:17までの状況であって、このあとも次から次へと現れてきているので、拾い漏れがあるかもしれない上に、公開は図表1より遥かに多い。

図表1:習近平・トランプ電話会談を報道した官側主要情報のロゴ

公開されている情報に基づき筆者作成

なぜこのような図表を作成したかというと、一般には「新華社情報に従って外交部が発表し、それを受けてCCTVが発表する」というのが主たる流れだからだ。時にはそれに対して環球時報の電子版「環球網」が評論を加える。もちろん一般の民営のウエブサイトは主として外交部の報道を転載するというのが通常の動きである。

それなのに、今回は、国賓としての訪中ではなく、たかだかと言っては悪いが電話会談なのに、ここまで大きく報道したのは、春節における習近平とトランプとの電話会談に、習近平がことのほか大きな期待を寄せているだけでなく、「米中で世界を統治するというトランプのG2構想に呼応しよう」という習近平の密かな決意が潜んでいるからだと見ていいだろう。なお、どの文字情報も上記の新華網の文字情報に基づいている。

◆習近平・トランプ電話会談の内容

では実際には、どのような会談が行われたのだろうか?

新華網あるいは外交部の文字情報に基づいて概観する。

■習近平は、以下のように述べた:

  • 過去1年間、われわれは良好なコミュニケーションを維持し、両国人民および国際社会から歓迎されている。
  • 私は中米関係を非常に重視している。新しい1年も、さらに大きく良いことを成し遂げていく意欲がある。米中双方ともにそれぞれの懸念を抱えているが、双方が平等・尊重・相互の態度で半分ずつ歩みよりさえすれば、必ず解決策を見つけることができる。
  • 中国には第十五回五ヵ年計画があり、アメリカは建国250周年を迎え、両国はそれぞれAPEC首脳非公式会談とG20首脳サミットを主催する。相互信頼を築き続け、正しい共存の道を見つけ、2026年を中米が相互尊重・平和共存・ウィンウィンの協力に向けて前進する年とすべきだ。
  • 台湾問題は中米関係において最も重要な問題である。台湾は中国の領土であり、中国は国家主権と領土保全を守らなければならず、台湾が分断されることは絶対に許されない。アメリカは台湾への武器販売を慎重に扱わなければならない。

■トランプは以下のように述べた:

  • アメリカと中国は共に偉大な国であり、米中関係は世界で最も重要な二国間関係である。
  • 習近平国家主席とは偉大な関係を築いており、私は習近平国家主席を非常に尊敬している。私と習近平国家主席との指導のもと、米中は経済・貿易などの分野で良好な交流を続けてきた。
  • 私は中国の成功を喜ばしく思っており、アメリカと中国との協力関係を強化し、二国間関係の新たな発展を促進したいと強く思っている。
  • 私は台湾問題に関する中国の懸念を重視しており、中国とのコミュニケーションを維持し、私の任期中は米中の良好かつ安定した米中関係を維持したいと思っている。(新華網や外交部からの引用はここまで)

二人の会話から受ける印象としては、トランプが2回も「偉大な」という言葉を使って中国と習近平を讃えているということと、二人とも「台湾問題」に関して重きを置いているということなどが挙げられる。トランプは台湾問題に関しては2026年1月18日の論考<トランプG2構想「西半球はトランプ、東半球は習近平」に高市政権は耐えられるか? NSSから読み解く>にも書いたように、「習近平は台湾を中国の一部とみなしているんだから、何をするかは彼次第さ」と言っている。「自分の任期中は何もしないだろう」という言い訳のようなものが付随するが、基本的には「習近平次第さ」という姿勢だ。

また「偉大なる米中両国が強大な影響力を世界に及ぼす」というG2構想意識が双方にあることは、全体の文章から読み取れる。

◆トランプは自身のSNSであるTruthでどう言っているか?

一方、2月5日0:38に、トランプは自身のSNSであるTruthで、主として以下のように書いている。

中国の習近平国家主席との素晴らしい電話会談を終えたところです。長時間にわたる綿密な会談で、貿易、軍事、4月に予定している中国訪問(とても楽しみにしています!)台湾問題、中国による米国からの石油・ガス購入、中国による農産物追加購入の検討、航空機エンジンの納入など、多くの重要な話題が非常に前向きな形で話し合われました。

中国との関係、そして習近平国家主席との個人的な関係は極めて良好であり、この関係を維持することの重要性を私たちは共に認識しています。

▲今後3年間の私の大統領就任期間中、習近平国家主席、そして中国との関係において、多くの前向きな成果が達成されると信じています。(以上、Truthより)

トランプのTruthにおける投稿から見ると、「台湾問題」を含めて「素晴らしい電話会談」であったとトランプが認識していることがわかる。その上で「中国との関係、そして習近平国家主席との個人的な関係は極めて良好だ」と書いているのだから、トランプは「台湾問題」に関して総合的に「友好的、かつ楽観的」に考えているというのが読み取れる。

習近平も、トランプが台湾問題に関して敵対的でないということを認識した上で、アメリカの台湾への武器売却にダメ押しをしていると読み取れる。それは2025年12月26日の論考<トランプが習近平と「台湾平和統一」で合意?>に書いたように、「中国との関係、そして習近平国家主席との個人的な関係は極めて良好であり台湾に米軍武器を売却しても、台湾に独立は主張させない」というトランプの計算を習近平が知っているからかもしれない。

◆トランプ・習近平蜜月を、バイデン政権時での会談頻度で比較

2月4日の電話会談を、おおまかにトランプ就任1周年とみなして、バイデン政権の最後の約1年との比較を、米中間の首脳会談や電話会談などの頻度と比較してみた。それを図表2に示す。

図表2:バイデンとトランプの、会談頻度による習近平との緊密度比較

公開されている情報に基づき筆者作成

会談で話されている内容や、同盟国を誘い込んだバイデンの「対中包囲網」戦略および「台湾有事には米軍が駆けつける」発言などを考えると、会談頻度以上に、そもそも二人の対中姿勢が異なる。トランプは大統領就任直後の2025年1月23日のダボス会議にオンライン参加して「私は習近平が大好きだ、ずーっと好きだった」と言ったことから始まり、「習近平愛」を(今のところ)個人的に貫いている。

その基本姿勢をベースにしながら図表2をご覧いただくと、どれだけトランプがひっきりなしに習近平と話し合っているか、そして今般の春節電話会談がどれだけ特別な重みを持っているかが見えてくるのではないかと思われる。

◆G7の中で日本だけが「対中強硬姿勢」だが…

図表3に、G7首脳の「習近平との関係」と「台湾問題に対する姿勢」をリスト化して比較してみた。国の出現順序は日本の外務省のG7議長国順に従った。

図表3:G7首脳の「習近平との関係」と「台湾問題に対する姿勢」

公開されている情報に基づき筆者作成

図表3には一応書き込んであるので詳細な説明は省略するが、少なくとも、日本だけが「対中強硬姿勢」を貫いていることが歴然としている。どの国も(心の中はどうであれ)習近平に対して、習近平が最も喜ぶ「一つの中国原則を遵守します」と、にこやかに強く誓っている。これは「世界の潮流」を見ながら、自国の経済成長を最優先するための「外交術」だ。

図表2からも見えてくるように、日本の高市政権だけが「いまだバイデン政権の対中姿強硬勢から抜け出していない」。その意味では「世界の潮流」を見ていないことになる。

◆トランプが8日投開票の衆議院選挙に対して高市政権誕生にエール

ところがここに来て、トランプが突然、高市早苗にエールを送った。2月6日の【速報】トランプ大統領“3月19日に高市氏と日米首脳会談を予定” 衆議院選挙での高市総理と連立政権への支持表明も(TBS NEWS DIG Powered by JNN) – Yahoo!ニュースによれば、トランプは5日、「3月19日に高市総理をホワイトハウスにお迎えできることを楽しみにしています」とTruthに投稿し、日米首脳会談を来月19日に行う予定だと明らかにしたとのこと。また、トランプは8日投開票の日本の衆議院選挙について触れ、「選挙結果は日本の将来にとって極めて重要だ」と指摘した上で、高市総理を「強力な評価に値する人物だ」と称賛し、「アメリカ合衆国大統領として、高市総理と、その連立政権が体現するものを、完全かつ全面的に支持する」と表明したというのである。

たしかに筆者自身もトランプのTruthにおける投稿で確認した。

選挙中の民主主義国家における特定の候補者に対して世界に影響力を持つ他国のリーダーがこのような内政干渉に等しい意思表示をするというのはルール違反だが、突如他国の大統領を拘束連行するトランプなので、ルール破り批判には耳を貸さないだろう。

筆者から見ると、これは昨年11月28日の論考<トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」 高市政権は未だバイデン政権の対中戦略の中>を反射的に想起させる。トランプは昨年11月24日に習近平に電話を掛けながら、その翌日には高市早苗にも電話をして「習近平を刺激するトーンを和らげるように」という趣旨のことを言ったとウォールストリート・ジャーナルが報じている。対中ディールのためだ。

いまは習近平もトランプ流路線に乗ってきているので、もう習近平を多少は刺激しても大丈夫だとトランプは踏んでいるのだろうか。

トランプは、習近平やプーチンのように専制主義的な国家における強いリーダーが好きだ。欧州で言うならばイタリアのメローニ首相のように極右の指導者が気に入っている。

メローニは高市早苗と熱く美しいハグを見せたが、図表3にあるように、習近平にはその何倍にも及ぶ世界的影響力と覚悟で「対中良好関係」を復活させ(実際には「一帯一路」脱却からの転換を示唆する)「対中関係を再起動させます」と誓っている。外交術としてはみごとに強かだ。

しかしわが日本の高市政権は図表3に示したように徹底的な対中強硬路線を選んでおり、それによって日本国内における支持率を上げてきた。

ここから何が見えるだろうか?

そこから見えるのは、高市政権が「台湾有事」を理由に日本の防衛力強化を図る手法を選択することによって、習近平は「対米ディール」のためにも、なお一層日本叩きを強化するだろうということだ。

一方、トランプにとって自らの政治生命の命運を握るのは習近平との関係であって、高市早苗との関係ではない。高市早苗との関係は、習近平とのディールを有利に運ぶための「駒」の一つに過ぎない。

日本の防衛力を強化するのは悪いことではないが、台湾有事を理由にすることによって高市政権はトランプに「捨て駒」として利用されるだけでなく、自ら日本を戦争へと導く道を選んだということにつながる。トランプが高市政権再誕生にエールを送ったということは、習近平を、絶対に高市政権を許さないという方向に強力に押しやったのに等しいからだ。

それでいて、台湾有事になってもトランプは米軍を派遣することはないだろう。

そうなると、「存立危機事態」は成立していなくても、日本の若者は単独で中国と戦わなければならないところに追い込まれる危険性が待っている。

戦争というのは「カッコいい勇ましいこと」ではなく「死ぬこと」だ!

日本人は台湾のために死ねますか?

トランプの恐るべき手段は、ベネズエラの大統領をいきなり武力によって拘束連行するだけでは終わらない。

日本はいま、新たな危機へと突入しようとしていることを自覚し、慎重に見極めなければならないと強く思う。

 

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権時代)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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