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米・世論調査:米同盟国は「トランプよりも習近平が頼りになり、中国が世界の覇者になる」と思っている
トランプ大統領と習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)

米メディアのポリティコ(POLITICO)はイギリスの世論調査会社パブリック・ファースト(Public First)に依頼して、今年2月6日から9日にかけて米国とそのトップ同盟国(米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ)を対象として世論調査を行なった。その結果を3月15日に発表したのだが、結果が凄い。

米国の「キー同盟国」は「トランプよりも習近平が頼りになり、中国の技術の方がアメリカより優れていると思っており、さらに10年後の世界の覇者は中国であると思っている」という結果を出している。

3月30日の論考<中国はイラン攻撃を非難し停戦を求め、日本はイラン攻撃を非難せずG7にホルムズ封鎖非難声明を出させる>の文末でお約束したので、考察を試みる。

◆ポリティコの世論調査と調査対象国

3月15日にポリティコは<米国のトップ同盟国は中国に傾き始めている トランプのせいだ>という見出しで、世論調査の結果を発表した。

「米国のトップ同盟国」を、ポリティコの原文では“Top US allies”と書いたり、“four key U.S. allies”と書いたりしているが、その4つの「トップ同盟国」あるいは「キー同盟国」は「カナダ、イギリス、フランス、ドイツ」であって、その中に「日本」はない。

G7諸国で考えると「イタリア」もないのだが、日本人としては「日本」は「米国のトップ同盟国」でもなければ「米国のキー同盟国でもない」と米国のメディアが位置付けているのかと、なんとも複雑な気持ちになる。

あるいは日本は米国と対等な関係ではないので、他のG7諸国と同じ意味での「同盟国」ではないと位置付けているのかもしれない。だとすれば、日本はアメリカの「属国扱い」にされていることになり、さらに憂鬱だ。

しかし、イタリアも入ってないということは、ひょっとしたらG7のうち、トランプ2.0になってからは、(訪問予定のアメリカを除いて)国賓として中国を訪問した国を対象としているのかという解釈もできる。3月31日にネット公開された動画「ニュースの争点」という番組で【イラン攻撃で中国崩壊は嘘なのか? 習近平の思惑】をテーマに話をさせていただいたが、そこでは図表1を中心に「トランプ2.0になってから中国を国賓として訪問した国あるいは訪問予定の国」を対象としたのではないかという解釈を行なった。

図表1:トランプ2.0後、訪中した(or訪中予定の)国と習近平との関係

公開されている情報を基に筆者作成

さて、この世論調査結果には、いくつかのQ&Aがあるが、ここでは、以下の3項目を取り上げて考察する。

  • その1:トランプと習近平、どちらが頼りになるか?
  • その2:米国と中国、どちらの技術が先進的か?
  • その3:米国と中国、10年後にはどちらが覇権国になっているか?

◆その1:トランプと習近平、どちらが頼りになるか?

ポリティコの世論調査の中には「あなたはトランプが統治する米国と(習近平が統治する)中国のどちらを頼りにするのがいいと思いますか?」という質問がある。この質問に対する回答を図表2に示す。

図表2:トランプ大統領が統治する米国と中国、どちらを頼りにするのが良いか?

ポリティコにある図表を転載し、英語を筆者が和訳して付加

図表2をご覧になると明らかだが、どの国も「トランプより習近平を頼りにする方がいい」と回答している。驚きだ。

特に、圧倒的にトランプよりも習近平を頼りにできるリーダーとみなし、トランプを頼りにできないとみなしているのがカナダだ。

カナダはトランプに「カナダを米国の第51番目の州にする」と言われ、激しくトランプを批判している。カーニー首相は昨年5月にトランプと会談したときも、「カナダは売り物ではない!」と面と向かって反論した。

ところが、1月28日の論考<「世界の真ん中で咲き誇る高市外交」今やいずこ?>に書いたように、カーニーが習近平と会談したあとのインタビューで「中国は今やカナダにとってアメリカよりも予測可能で信頼できるパートナーである」と肯定した(有料)と報道されている。習近平との会談後のカナダ首相のウェブサイトにも、「世界第2位の経済大国である中国は、カナダにとって計り知れない機会をもたらす」とも書いてある。

この論考を思い出すと、そう言えばG7の首脳の一人が「中国は今やカナダにとって、アメリカよりも予測可能で、信頼できるパートナーである」と言ったので、ひょっとするとポリティコはカーニーのこの言葉にヒントを得て、こういった世論調査を思いついたのではないかと推測してしまうのである。

なぜなら、設問に「どちらを頼りにするのがいいか」という表現があることに、やや不自然さを覚えたからだ。

カーニーが2026年1月20日にスイスで開催されたダボス会議でスピーチし「大国に迎合して、安全を買うことはできなくなった」と言ったのは多くの人を感動させた。トランプ2.0誕生後、国際社会を象徴する言葉として有名になったことは今さら言うまでもない。ポリティコの世論調査のきっかけには、やはりカーニーの言葉が胸に届いたのではないかと思ってしまうのだ。そうでないと選択肢として「トランプが統治する米国」と書かずに、単純に「米国」と書いていいはずだが、ここも「こだわり」が気になった。

結果的に、トランプが「習近平の方が良いよ」と同盟国を中国に傾けさせていったとしか言いようがない。

◆その2:米国と中国、どちらの技術が先進的か?

ポリティコの質問の中に「あなたは最も先進的な技術を持っている国は中国だと思いますか、それともアメリカだと思いますか?」というのがある。この質問に対する回答を図表3に示す。

図表3:最も先進的な技術を持っている国は中国か米国か?

ポリティコにある図表を転載し、英語を筆者が和訳して付加

ポリティコには、図表2以外は「わからない」という言葉がなくて、灰色の部分だけがあるのみなので、変更せずにそのまま転載した。図表3をご覧いただくと、米国自身以外はみな、どの国も中国の技術の方が先進的だと思っている。

手前味噌で申し訳ないが、拙著『米中新産業WAR トランプは習近平に勝てるのか?』で中国の新産業が、どれだけ世界で群を抜いているか、どれだけアメリカに「絶対に追い付けないほどの差を」を付けてしまっているかを詳述した。

またGRICIの論考においても数多く書いてきた。

たとえばアメリカに関しては、

・・・などがあり、欧州に関しては

・・・などがある。全体としては

などもあり、中国の圧倒的な技術力の先進性を示している。

したがって調査対象となった国々は中国の優位性を知っている。米国自身が「世界脅威年次報告書」で「米国を圧倒する中国のAI人材」の存在を認めているので、否定のしようがないだろう。

その駆動力を形成したのは習近平が2015年に発布したハイテク国家戦略「中国製造2025」であり、2025年までの目標を凌駕するほどに達成していることを確認したのが前掲の『米中新産業WAR』だ。

これまでカナダに関して論じたことはないが、最近のカナダの分析や報告書では、中国のエネルギー産業、EV産業などの産業の優位性を明確に認めている

そもそもトランプ自身も今年3月27日の<フロリダでのサウジ未来投資会議での講演>で、「中国の技術力の高さを絶賛」しており、好むと好まざるに拘(かか)わらず、「中国を尊重しなければならない」とさえ言っているくらいだ。

中国のネットではこのスピーチを受けて、多くの動画が発信されている。

◆その3:米国と中国、10年後にはどちらが覇権国になっているか?

ポリティコの世論調査では、「あなたは10年後に世界の覇権国になるのは中国だと思いますか、それとも米国だと思いますか?」という質問がある。その回答を図表4に示す。

図表4:10年後に世界の覇権国となるのは中国か米国か?

ポリティコにある図表を転載し、英語を筆者が和訳して付加

米国はさすがに10年後も自国が世界の覇権国だと思っているが、米国以外の同盟国が全て「10年後には中国が覇権国となる」と考えているというのは、相当に恐ろしい話だ。

これは先進的な技術力において中国が勝っていることと、製造力こそが軍事力であるという事実、および何よりも中国は経済貿易などで世界と関係を強化している事実があるからだ。2023年のデータしかないが、Lowy Instituteが調査した<世界貿易における中国対米国>にある地図の一つを図表5に示す。

図表5:米中どちらがより大きな貿易相手国か?

Lowy Instituteのウェブサイトから転載し和訳を筆者が付加

2023年時点ですでに世界各国の最大貿易相手国は中国になっていることが一目でお分かりいただけるだろう。これが年々中国へと傾き、2025年のトランプ関税で一気に中国に傾いていった。新しいデータマップが描かれたら、ほとんどが赤く染まっているにちがいない。この点から見ても調査対象国の多くが(米国自身を除くすべての国が)「10年後の覇権国は中国だ」と言っていることが理解できる。

それだけではない。

今般のイラン攻撃によって、多くの西側諸国がトランプから離れていった。

◆イラン攻撃を国際法違反だと批判している西側諸国

3月30日の論考<中国はイラン攻撃を非難し停戦を求め、日本はイラン攻撃を非難せずG7にホルムズ封鎖非難声明を出させる>にも書いたように、日本の高市総理がイラン攻撃に関して「自衛のための措置なのかどうかも含め、詳細な情報を持ち合わせているわけではない。わが国として法的評価をすることは差し控えさせていただく」をくり返しているため、日本政府としては「イラン攻撃を非難する」という姿勢にない。

ところが上記のポリティコの世論調査が対象として米国のトップ同盟国らは、早くから「イラン攻撃は国際法に違反している」と明言して、絶対に対米協力は行なわないと宣言している。どの国の誰が、いつ「イラン攻撃反対」を表明したかに関して一覧表を作成してみた。それを図表6に示す。

図表6:米イスラエルによるイラン攻撃に反対表明をした西側諸国の一覧

公開されている情報を基に筆者作成

図表6では、二重線の上半分にポリティコの世論調査が対象とした国を列挙し、下半分には調査対象とされていない国のケースを列挙した。まず上半分をご覧いただくと、フランスのマクロン大統領をはじめ、世論調査対象国のリーダーがすべてイラン攻撃を批判している。下半分の国々も強烈な批判の意思表示をしている。

ここに来てトランプは自らイラン攻撃を始めておきながら、その結果招いたホルムズ海峡封鎖に関して開放してほしい国が勝手に自分で努力しろと言って、それを放置したまま米国はイランから手を退くと言い始めた。米国内のガソリン代高騰などで中間選挙に敗北するリスクが出てきたからだ。またNATO離脱も検討しているとしている。

これでは米国の権威は強降下していくばかりだろう。

ポリティコの世論調査はイラン攻撃前だったので、図表4の傾向もイラン攻撃によって、いっそう習近平側にシフトしていくにちがいない。

となれば、習近平の「武力攻撃の形を取らない」台湾統一も、現実味を帯びてくる。習近平の狙いは、実はそこにしかないのだから。

この静かに動きつつある、しかし巨大な地殻変動を見逃してはならない。

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権時代)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
台湾機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相
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遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)
Japanese Girl at the Siege of Changchun: How I Survived China's Wartime Atrocity
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(遠藤誉著、毎日新聞出版)
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