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不正流出したネパール・中国「土石流」監視カメラ映像は、ロイターが配信権を獲得して正当化されたのか?
ネパール・中国国境の土石流に関するNewsflareの動画の画面キャプチャー

8月30日の論考<中国はネパールと中国(チベット)国境の土石流をどのように報道し、どのように報道しなかったか?>で、あの衝撃的な土石流の映像は中国側の監視カメラから不正流出したものであることを明らかにした。

それが世界のどのメディアでも「正当に」使っていいようになったのは、ロイターがその映像の配信権(クレジット)を獲得したからだということが、その後の追跡でわかった。

今般は、どのようにしてロイターが配信権を手に入れたのかを追跡調査する。

不正流出した映像は「違法映像」であることは確かだが、それが巡り巡ってロイターが配信権を獲得することによって「正当化」されるのは、ふと、マネーロンダリングで「犯罪などで得た資金の出所を分かりにくくし、正当な資金に見せかける行為」=「資金洗浄」を彷彿とさせる。これは今後のネット社会におけるX投稿や投稿者の著作権などにも関係してくるので、正確にそして忠実に追跡を試みたい。

 

◆不正流出映像はどのようにしてロイター社に渡ったのか?

先ず、いうまでもなく不正流出させた中国の監視カメラの職員がロイター社とビジネス関係を持っているなどということは考えられない。不正流出させた動機が正義感からであったとしても、中国政府の監視条例に抵触し逮捕される。ましてや外国の通信社とビジネス関係にあったなどということにでもなったら、死刑にも相当し、一族郎党、中国では生きていけないことになるだろう。

となると、この可能性は全否定していいと考えられる。

次の可能性としては、中国の一般ネット民の誰かがロイター社に投稿したということが考えられるが、実は8月28日に、南ドイツ新聞(有料)が使用している「ギロン(吉隆)県の監視カメラの映像」に「Video: Newsflare via Reuters Connect」というクレジットが付いていることを発見した。つまり、南ドイツ新聞がReuters Connect経由で使用権を得た映像であることを意味する。その中の一画面を図表1に示す。

 

図表1:南ドイツ新聞に書いてあるクレジットにNewsflareの文字が

ネットから転載し、和訳は筆者が付加した

 

図表1の右下にあるNewsflareがカギとなりそうだ。

Newsflareとは何者か?

調べてみると、Newsflareは「一般ネットユーザーから動画を集め、報道機関等にライセンスを販売・仲介するUGC(User Generated Content、ユーザー生成コンテンツ)サービスの一つ」とのことで、一般ユーザーの投稿が主役になるそうだ。

そこで、ロイターとNewsflareの関係を調べてみたところ、両社は2018年から正式に提携しており、Reuters自身の発表でも「Newsflareが一般市民などから集めた目撃・速報動画を、Reuters Connectを通じてロイターの報道機関顧客に提供する仕組みである」と明記されている。

となると、ネットに流出している監視カメラ映像を、ネットユーザーの誰かが「金になる」と考えてNewsflareに投稿し、Newsflareが投稿者からライセンス販売の権限を得て、ビジネスが成立したことになる。このとき、Newsflareが投稿者から動画そのものを購入するのではなく、「投稿者が著作権を保持したまま、Newsflareに対して動画の利用ライセンスを第三者に販売・仲介する権限を与える」という仕組みになっている。

この時点で、「不正流出した土石流映像」はNewsflareがライセンスを販売・仲介する媒体となり、ロイターとの契約に基づいて、ロイターが配信権を持つに至る。言い換えれば、Reuters Connectを通じてロイターの報道機関顧客に提供されることになる。

世界中の報道機関は、この瞬間から(Reuters Connectと契約がある場合や、Reuters Connectを通じて当該映像について利用許諾を受けたりする場合もあるだろうが、その上で)「ロイター配信」というクレジットを書きさえすれば、非常に「正当に」この「不正流出した映像」を使っても良いことになる。

図表2には、「氷河崩落から不正流出した映像が正当になるまでの時系列」を示した。

 

図表2:不正流出した映像が正当になるまでの8月26日の時系列

公開されている情報に基づき、筆者が推論し作成

◆SNS由来の報道素材が抱える問題

これはNewsflareだけの問題ではなく、SNS由来の全般が抱えている問題である。イギリスの競争・市場庁(CMA)が2026年に行った報道用写真・映像市場の調査でも、業界関係者はSNS由来の報道素材について、主要な懸念として以下の二つを挙げている。

  • authenticity(真正性)
  • potential legal risks(潜在的な法的リスク)

つまり、SNS上の映像には常に、

  • 本当に投稿者本人が撮影したのか
  • 単なる転載ではないのか
  • 投稿者に、第三者へライセンスを与える権限があるのか
  • その映像の中に別の権利者の映像や著作物が含まれていないか

という問題が存在している。

今回のギロン港(吉隆口岸)の映像は、さらに特殊だ。

一般ネットユーザーが自分のスマホで災害現場を直接撮影した映像ではなく、ギロン港検問所の「公安監視システムの映像」を、職員が「個人のスマホ」でモニター越しに撮影したものとみられる。そのため、仮にNewsflareが「スマホでモニターを撮影した人物」まで特定して、その人から利用許諾を取得していたとしても、その人物が元の監視カメラ映像そのものを第三者へ商業利用させる権限を持っているわけではない。

そもそも、図表2の時系列および 8月30日の論考<中国はネパールと中国(チベット)国境の土石流をどのように報道し、どのように報道しなかったか?>から考えて、明らかな法律違反で「違法映像」だ。

しかし<Newsflareが投稿者から購入した段階での不正流出した映像>では、当該動画がそのまま観られる。<Newsflareはさらに別の角度からの監視カメラの映像>も流しており、逃げ惑う人々が土石流に呑まれていく瞬間が、生々しく映っている。

報道機関にとっては、何物にも替えがたいほど「絶対に欲しい」映像だろう。

人類全体にとっても、今後の警鐘として非常に貴重な映像でもある。

しかし、一般ネットユーザーが自分のスマホで撮影した映像をXに投稿したのなら、それをX投稿として扱う場合は別だが、不正流出した映像が「洗浄化」される過程には、やはり議論の余地があるのではないかと思う次第だ。

多くのメディア関係者あるいは読者の方々の見識を仰ぎたい。

 

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国長春市で中共軍による食糧封鎖に遭い家族を餓死で失う。1953年日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『G2構想 勝つのは米国か中国か』(7月2日発売予定)、『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』、『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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『台湾機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』

遠藤誉著(新潮社)
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by Homare Endo(Bouden House)
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