
※この論考は7月29日の< From Black Ships to White Hulls: Taiwan–US Coast Guard Imagery and the Transformation of Indo-Pacific Maritime Order>の翻訳です。
台湾がASEANの公式な外交文書に登場することはないものの、台湾と米国の沿岸警備隊の協力を示す写真の公開は、台湾がより実務的な形で地域に関与できることを示している。
マニラで開催されたASEAN関連会合で、マルコ・ルビオ米国務長官は、海洋の航行の自由や、国家による国際水路の支配がもたらすリスクを広範に議論する中で、台湾海峡に言及した。一方でASEANの共同声明は、こうした広範な戦略的枠組みを織り込んでいない。国連海洋法条約、南シナ海における航行・上空飛行の自由、国際航路に使われている海峡の通過通航権については再確認したが、台湾海峡には言及しなかった。
この違いはASEANの戦略的な線引きを反映している。加盟国は開かれた海洋秩序を支持しているが、台湾を地域の集団安全保障に組み込むことには依然として消極的だ。しかしそのわずか数日後、米国在台湾協会は台湾の海巡署(海上保安庁に相当)の巡視船「台北」が米国沿岸警備隊の巡視船ミジェットと並走する写真を公開した。添えられたコメントによれば、捜索救助、災害対応、海洋保護、違法漁業対策、海上での麻薬取り締まりに備えるための活動だ。
日付、場所、作戦名は記されていない。それでもこの写真は、主に覚書や実務者交流、水面下の作戦での接触を通じて築かれてきた関係を公に示すこととなった。台湾はASEANの外交文書で言及されることはなくとも、より実務的な海上法執行ネットワークの一角を占めているのだ。
1枚の写真に2隻の船体
写真の公開は計算された戦略的情報開示だった。米国政府は「共同パトロール」「台湾海峡作戦」「軍事演習」といった表現を避けながらも協力関係が分かるようにした。一般に公開することで政治的支持と運用面での円滑な連携を示す一方で、曖昧さを保つことで当面のエスカレーションを抑制し、今後の協力拡大に向けた余地を残している。
写真には2隻の大型艦艇が写っている。台湾の4千トン級「台北」は主力の巡視・救助船だ。ミジェットは長期展開、法執行、海軍作戦との統合が可能なレジェンド級の国家安全保障巡視船だ。5カ月にわたる西太平洋展開中、ミジェットは米国第7艦隊の戦術指揮下で活動し、日本、フィリピン、韓国、シンガポールと共同作戦、実務者交流、能力構築活動を実施した。
台湾と米国は2021年に沿岸警備作業部会を設立し、海洋資源保護、違法漁業対策、捜索救助、環境保護、専門訓練に取り組んでいる。今回の写真公開により、その関係は制度上の協力から、広く認知される実務的な連携へと移行した。台湾はもはや保護を必要とする単なる島には見えない。この写真は、執行権限と運用資産を保有し、地域に公共的利益を提供しうる海洋アクターとしての台湾を映し出している。
ホワイト・ハルであることの意味
「ホワイト・ハル(白い船体)」は船舶の正式な分類ではない。この用語は海洋安全保障の分野において、沿岸警備隊や海上法執行機関と、各国海軍の艦艇「グレー・ハル」を区別するために用いられる。この区別は塗装の色だけでなく組織の任務にも関係している。グレー・ハルの主な役割は軍事的抑止、戦闘、戦力投射だ。他方のホワイト・ハルは法執行、捜索救助、漁業管理、税関執行、環境保護、航行の安全を目的としている。
ホワイト・ハルは軍艦では通常立ち入ることのできない政治空間で活動できる。沿岸警備隊間の協力に相互防衛条約は不要だ。捜索救助演習も軍事力を統合する必要はない。違法漁業に対する措置は広範な国際的正当性を有している。つまり通信手順、船舶の識別、証拠収集、協調航行を、正式な同盟政治に発展させることなく進めることができる。
政治的ハードルが下がるからといって戦略的効果が失われるわけではない。主権争いやグレーゾーンでの対立の最前線で沿岸警備隊が活動することが増えている。沿岸警備隊は海軍同士の対立というような印象を直ちに生み出すことなく、管轄権を主張し、自由な出入りを確保し、威圧行為を記録し、競合する法執行権の主張に異議を唱えることができる。
この二面性を体現しているのがミジェットだ。この巡視船の所属は法執行機関だが、西太平洋への展開では人道支援活動、海上法執行、同盟国の能力構築、後方支援、海軍との連携という役割まで担っていた。ホワイト・ハルは制度上、海軍とは区別されているが、両者の活動領域はますます重なるようになっている。
幕末の黒船からインド太平洋の白船へ
日本の読者にとって「ホワイト・ハル(白船)」は歴史上の出来事を連想させる。1853年にマシュー・ペリー提督が浦賀に来航した事件は、黒船のイメージで日本人の記憶に刻まれた。蒸気動力、重武装、砲艦外交を目にした徳川幕府は、西洋主導の国際秩序と向き合うことを余儀なくされた。黒船は外部からの圧力、制度的混乱、日本の強制的開国を象徴するものとなった。
現代の西太平洋におけるホワイト・ハルは、これとは異なる大義名分に基づいている。現代の米国の海洋力は、捜索救助、法執行、災害救援、漁業保護、情報共有、パートナーの能力構築を通じて地域の制度に入り込んでいる。黒船は集中的に威圧することで通商を求めたが、ホワイト・ハルは継続的な協力と制度的な連携を通じて影響を積み重ねている。
どちらの形も米国の海洋力を表すものに変わりはないが、地域へのアクセスと影響力を行使する仕組みは異なる。黒船外交が一度の接触で集中的に威圧したのに対し、ホワイト・ハルによる協力は、継続的な作戦、共通の基準、制度的な連携を通じて影響力を浸透させている。また、海軍戦略、同盟、抑止力にもつながっている。
黒船は劇的な接触を通じて日本を変革した。ホワイト・ハルは共通の通信手順、互換性のある訓練、情報共有、捜索救助体制の連携、海事機関の職員同士の交流といった日常的な実務を通じて地域秩序を塗り替えている。制度を通じたその累積的な効果は、一度の航海より長く持続するだろう。
中国:管轄権を巡る争い
台湾に対する中国の圧力は、中国人民解放軍海軍だけでなく、政府や法執行当局を通じても行使される傾向が強まっている。中国は海警局の巡視船や海上監視船の派遣、そして国内法規を根拠に、台湾周辺海域は中国政府がすでに執行管轄権を有する地域だと広く主張している。
このアプローチの核心にあるのは、通常の法執行という表現だ。警戒活動、臨検、警告、乗船要求は、通常の管理業務のように見せることができる。こうした取り締まりを繰り返すことで、係争中の主張を徐々に実務上の慣行に変容させられる。中国政府は、中国船の存在感を高めるだけでなく、中国当局には台湾周辺の行動を規制する権限があるという前提を確立しようとしている。
台北とミジェットの写真は、その前提に異議を唱えるものだ。この写真は、台湾を独自の船舶、法的責任、国際的パートナーを持つ海上法執行主体として示している。台湾は中国海警局の管轄対象とは映らないし、単なる軍事的な火種とも映らない。捜索救助、密輸取り締まり、漁業法執行、航行安全には有能な当局間の協力が求められるが、この写真はその国際的な海洋ガバナンスの中に台湾を位置づけている。
したがって、中国政府の長期的な懸念は米国の巡視船1隻の存在にとどまらない。台湾は、米国、日本、フィリピンが重層的に作り上げている沿岸警備ネットワークと徐々に連携を深めていく可能性がある。船舶の識別、情報交換、事案の記録、公開文書化などでの協力関係が密になれば、中国のグレーゾーン作戦はより可視化され、一方的な定義づけは難しくなるだろう。物質的には中国が優位を保つものの、海上での事案の法的・政治的解釈を巡る対立は激しくなるだろう。
日本とホワイト・ハルの新たなネットワーク
日本は今回の写真をより広範な海洋構造を踏まえて読み解くべきだ。日本、米国、フィリピンは、沿岸警備隊の共同演習、海洋領域の認識、法執行訓練、能力構築を通じて協力を拡大してきた。重なり合うこれらの関係を連携させれば、米国沿岸警備隊、日本の海上保安庁、フィリピン沿岸警備隊、台湾海巡署を結ぶ新たな機能的ネットワークが見えてくる。
これら4つの機関を結びつける共通の枠組みや恒常的な調整メカニズムはまだない。台湾の外交的立場や「一つの中国」政策により、台湾が米国・日本・フィリピンの枠組みに正式参加することはできない。しかし海洋ネットワークは多くの場合、単一の制度や機関を中心に構築されるものではなく、二国間・三カ国間の取り決めが重なり合うことで発展していく。
捜索救助、災害対応、違法漁業の取り締まり、汚染防止、情報交換、専門的訓練が、連携可能な接点になる。個々の活動を通じて目の前の公共の目的を果たす一方で、継続的な協力によって通信、監視、運用面での連携の円滑化を進めるのだ。
日本にとって地理的に大きな意味を持つ点でも重要だ。日本のエネルギー・商業ルートは、台湾周辺海域、バシー海峡、南シナ海を通る。東シナ海、台湾海峡、南シナ海は外交上においては区別されるが、海運、海底インフラ、軍事の観点では地理的に結びついている。
台湾が実務面で参加すれば、日本の南西諸島、台湾の東側海域、バシー海峡、ルソン島北部の間に生じている重要な海洋情報の空白を埋めることができるだろう。日本政府はASEANに対し、台湾海峡を共通の安全保障宣言に組み込むよう求める必要はない。沿岸警備隊が実務面で連携すれば、東南アジア諸国の政府に陣営選択を迫ることなく、地域の状況把握能力を高めることができる。
とはいえ、日本はこうした協力が持つ民生的・公共財的な性格を維持しなければならない。沿岸警備隊のあらゆる取り組みを軍事的封じ込めの一環としてしまえば、地域は受け入れに慎重になるだろう。日本の優位は、専門的な法執行、インフラ、訓練、危機管理と、海洋能力とを結びつけられる点にある。
フィリピン:戦争未満での均衡確保
フィリピンの状況を見れば、インド太平洋の安全保障にとってなぜホワイト・ハルの協力が重要なのかが分かる。フィリピン政府はスカボロー礁やセカンド・トーマス礁周辺で、中国沿岸警備隊からの度重なる圧力に直面している。放水、進路妨害、接近操船といった行為は、通常の武力衝突とは見なされない水準にとどまっているとはいえ、フィリピンの負担となっている。
沿岸警備隊のあらゆる対立に海軍が対応すれば危険なエスカレーションにつながりかねないが、外交的抗議だけでは補給、漁業保護、物理的存在感を維持できない。そこで沿岸警備隊が連携すれば、直ちに軍事的対立や同盟条約上の義務を招くことなく、監視、記録、通信、訓練、後方支援を行うための中間的な手段として機能しうる。
米国沿岸警備隊の展開はすでにフィリピンの能力構築、捜索救助訓練、多国間演習への準備を支援している。こうした活動は、民生面ですぐに役立つだけでなく、より広範な戦略的影響もある。フィリピン政府は多くの接触を軍事衝突未満にとどめたまま、存在感と持久力を強化できるのだ。
台湾とフィリピンが直面している主権争いや外交的制約は同じものではないが、どちらも沿岸警備隊の活動や対外的主張を通じて自国の管轄権を常態化しようとしている中国政府の試みと対立するものだ。漁業管理、捜索救助、台風対応、密輸対策、環境保護は、正式な安全保障関係がなくても実務で交流できる分野だ。
フィリピン政府にとって米国在台湾協会の写真は、米国のホワイト・ハルによる関与が南シナ海での個別事案への対応にとどまらず、西太平洋全域での慣行になりつつあることを示すものでもある。ネットワークが広がれば、運用・政治面での圧力を分担できるかもしれない。それが持続するかどうかは、参加各国政府が実際の執行能力を強化しつつ、民生面での正当性を維持できるかどうかにかかっている。
保護対象から制度の一員へ
今回の写真は、地域における台湾の立場が保護の対象から海洋ガバナンスを運用する一員に変化したことを示している。
インド太平洋における競争は、軍事同盟にまで至らないレベルの制度を通じて行われることが増えている。中国は沿岸警備隊、公用船、行政規制、定期的な巡回によって管轄権を主張している。米国とそのパートナーは、訓練、協調航行、海洋領域の認識、違法漁業対策、捜索救助ネットワークを通じて、別の正当性を築いている。
この争いは船隊の規模の問題にとどまらない。重要なのは、どの当局が警告を発し、船舶に立ち入り、アクセスを維持し、事案を記録し、合法的な行動を定義し、その行動が正当なガバナンスであることを地域各国に納得させられるかという問題だ。
抑止や戦争という最終局面を規定しているのはグレー・ハルだが、一方でグレーゾーンの日常的な秩序をホワイト・ハルが形成する傾向が強まっている。
ASEANの共同声明で台湾が言及されなかったことは、地域外交の政治的限界を反映している。だがホワイト・ハル同士の関係なら別の形で関与できる。正式には政治参加できないとしても、運用上の協力は拡大できる。
この写真は、地域ガバナンスに貢献しうる海上法執行パートナーとしての台湾を公に知らしめるものだ。安全保障上の競争の最終局面を規定しているのは依然として海軍による抑止力だが、沿岸警備隊間の協力は、台湾が同盟に至らないレベルで制度に参画できる余地を広げている。
ペリーの黒船は集中的な威圧を通じて新たな秩序を宣言した。現代の白船のやり方はそれとは異なる。パートナーを結びつけ、協力を日常化し、演習や航海、海上での共同作業を1件ずつ積み重ねていくことで管轄権の正当性を構築するのだ。
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