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米中貿易データから見える「アメリカが常に戦争を仕掛けていないと困るわけ」
ウクライナ戦争でぼろ儲けするアメリカの軍事産業(写真:ロイター/アフロ)

中国税関総署データにはアメリカ製造業の空洞化が表れ、アメリカが常に戦争を煽っていないと困る現状の一端が見えてくる。次に餌食になるのは日本人だ。そのための国際世論をアメリカは必死で形成している。

◆中国の主な貿易相手国/地域

8月30日のコラム<中露貿易の加速化 対露制裁は有効なのか?>で引用した中国の税関総署が8月18日に公開したデータを詳細に分析すると、実に興味深い現象が見えてくる。その基礎となるデータを先ずご覧いただきたい。

図1:2022年1-7月 中国の主な貿易相手国/地域

中国税関総署のデータを基に筆者作成

あれだけ対中制裁とか対中包囲網などを呼びかけながら、相変わらず中国の最大貿易相手国はアメリカではないか。

韓国は陸続きの隣国なので仕方ないとしても、日本も台湾や(中国)香港と同じように多い。もちろん、日本の最大貿易国は中国だ。

◆アメリカは中国から何を輸入し何を輸出しているのか?

では、アメリカは中国から何を輸入し、何を輸出しているのかを見てみよう。

2021年12月の税関総署による輸入品目リストおよび輸出品目リストに基づいて計算すると、まず中国からアメリカへの輸出品目内訳は以下のようになる。

図2:2021年 中国からアメリカへの輸出品目内訳

中国税関総署のデータを基に筆者作成

品目は非常に複雑に分類されているので、たとえばアメリカへの輸出の43.2%を占める品目に関して「機械類、電気機器及び部品等」と書いたが、ここには非常に多くのものが含まれているので、象徴的な書き方をここでは選んだ。詳細を知りたい方は品目リストの当該リンク先(この場合は「16番」)をご覧いただきたい。

感覚的にわかりやすいように具体例を挙げるならば、たとえばパソコンや家電製品(電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、ドライヤー、掃除機、電灯・・・)などが「機械類、電気機器及び部品等」に入る。アメリカは製造業をほとんど中国に移してしまっているので、それを取り戻すのはなかなか難しい。なぜなら中国には指示に忠実なブルーカラーのチームが整然とできあがっており、安価なサプライチェーンも中国国内で成立しているので、他国に移すのには高いバリアがある。

パソコン出荷台数の世界1位は中国のLenovo(レノボ、聯想)で、2021年には3億4,000万台を突破し、圧倒的な強さを見せている。

1984年に中国科学院という権威あるアカデミーから下海(シャーハイ)して「下界」に飛び込み、最初に「おいしいカニ」を捕った人と表現された創始者に勇気づけられて、北京の大学地区には「中関村」という「中国のシリコンバレー」と呼ばれる街ができたが、そのころ中関村で道路に部品を並べて売っていたのは、すべてアメリカ製中古品だった。

今やレノボは IBMやNECあるいは富士通のPC部門まで買収して、世界一のPCメーカーに成長している。

図2における輸出品目のうち次に多い「雑品」(14.2%)は、たとえば布団やクッション、おもちゃ、家具、アクセサリー・・・など幅広いものを網羅している。

問題は「製品」として製造されたものの、ほとんどすべてが中国で作られているということだ。

それなら中国はアメリカから何を輸入しているかというと、図3に示すように「機械類、電気機器及び部品等」が多いものの、こちらでは「部品等」の方に傾いており、製造業における製品を製造するための、アメリカが制裁を加えていない種類の半導体のようなものも含まれる。

図3:2021年 中国の、アメリカからの輸入品目内訳

中国税関総署のデータを基に筆者作成

図3にある「植物性生産品」は「大豆やトウモロコシ、牛肉・・・」といった食料品や肥料類が主たる内容だ。

◆空洞化したアメリカの製造業

図2、図3から見えてくるのは、アメリカの製造業の空洞化だ。

アメリカの商務省経済分析局のデータによれば、アメリカの製造業と金融等部門のGDPに占める割合の推移は図4のようになっている。

図4:アメリカ製造業と金融部門のGDPに占める割合の推移

アメリカ商務省経済分析局データを基に筆者作成

第二次世界大戦後のアメリカの製造業は強く、独壇場と言っても過言ではなかったが、やがて日本が追いつき、そして中国に追い抜かれて、衰退の一途をたどっている。

図4で興味深いのは、天安門事件があった1989年から日本の天皇陛下が訪中した1992年辺りにかけた変化だ。本来だったら、民主化を求めた若者を中国人民解放軍が惨殺した1989年6月4日の天安門事件により、中国共産党による一党支配体制は崩壊するはずだったが、日本の自民党政権が「中国を孤立させてはならない」として西側諸国による厳しい対中経済封鎖を解除させてしまった

これを境に世界は中国に投資して世界の製造工場は中国に集中し、中国は「世界の工場」と化してしまった。特にアメリカは会社ごと中国に移転させてしまったためにアメリカ国内の製造業は空洞化してしまい、1990年を境に、製造業と金融等部門のアメリカGDPへの貢献度が逆転してしまう。

製造業に従事していたエンジニアも同じだ。

図5に示すのはアメリカ労働統計局のデータ から作成した製造業と金融等部門における雇用者数の割合の推移である。

図5:アメリカ製造業・金融等部門の雇用者数の規模推移

アメリカ労働統計局データを基に筆者作成

みごとに製造業の雇用者数が激減していき、これ以上は減ることができないミニマムのエンジニア数で落ち着いてしまった。

金融業に関しては人数的には数多く必要なわけではない。少数の者がパソコンを操り、時にはAIに動いてもらって、アメリカが大儲けするように操作している。

◆ドル覇権を可能ならしめる戦争ビジネス

製造業で金稼ぎができなくなったアメリカが重視したのは何か?

金融を操ってドル覇権を維持する最高の方法は戦争ビジネスだ。

そもそも第二次世界大戦後、アメリカはひっきりなしに世界の各地で戦争を起こしてきたが、最近では「アメリカ国民は参戦しないで(=アメリカ国民は犠牲にならずに=戦費にお金を注がずに)、他国に戦争をさせて不安を掻き立て、武器を売りまくる」という手段を使うことが多い。

たとえば今般のウクライナ戦争が良い例だ。

バイデン大統領は副大統領だった2009年7月からウクライナに入り浸り、マイダン革命というクーデターを起こさせて他国の親露政権を転覆させ、親米政権を打ち立てることに成功した。そしてNATO加盟努力を義務化する憲法までウクライナに制定させて、プーチンの怒りを刺激することに成功している(詳細は拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』第五章や5月6日のコラム<遂につかんだ「バイデンの動かぬ証拠」――2014年ウクライナ親露政権打倒の首謀者>など。ミアシャイマー氏やエマニュエル・トッド氏あるいはスイス平和エネルギー研究所なども、オバマ政権時代のバイデンの動きは国際法違反であると指摘している)。

アメリカは参戦しないで「プーチンの狂気」を不安材料にしてNATO加盟諸国を刺激し、ウクライナに武器を提供(結局は売る)だけでなく、NATOが軍備に向けて動くことにも成功している。

こうなると、アメリカの武器は際限なく売れるだけでなく、欧州が不安定になるので、投資家は紛争地ではない「安全な」アメリカに投資し、ドル覇権はますます強固になるという仕組みだ。おいしいことばかりではないか。

一方、製造業を中国に頼っているため、口では対中包囲網を提唱しながら、実は中国を完全に切り捨てることはできない状況でありながら、習近平政権を刺激して、なんとか台湾への武力攻撃をさせようと、国際世論作りにバイデンは必死だ。

もし大陸が台湾を武力攻撃することによって統一させたりなどしたら、台湾国民の反感を買って、統一後、一党支配体制の崩壊につながる危険性を孕むことになる。だから台湾が政府として独立でも宣言しない限り、習近平は台湾を武力攻撃したりはしない。

しかし、それではバイデンは困るのである。

武力攻撃する証拠に軍事演習を激化させていると国際世論を煽るために、軍事演習を激化させる原因を必死で作っている。それはアメリカ政府高官の台湾訪問であったり、台湾への大量の武器売却であったりする。

それに対して北京政府が抗議行動を起こさなければ、中国人民(ネットユーザー)が黙っていない。この悪循環を利用して、バイデンは次の戦場を台湾と定めている。

この扇動行為だけで、周辺諸国は軍備を強めようとするので、アメリカ軍事産業はニンマリだ。

ただ、忘れてはいけない。

アメリカの軍事産業が儲かるために命と金を捧げるのは日本である。

アメリカは製造業の中国依存から抜け出せないため、このまま行けばGDPで中国がアメリカを超えて世界一になるのは時間の問題だ。

それを潰すには、中国が戦争をしてくれることである。

それしか手段がない。

アメリカが戦争を煽る理由には多くの要因が複合的に絡んでいるが、今回は米中貿易データからアメリカ製造業の空洞化を浮き彫りにさせ、演繹的にアメリカの戦争ビジネスに絞って考察を試みた。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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