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政教一致を謳う統一教会は台湾で政党結成
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)日本本部(写真:つのだよしお/アフロ)
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)日本本部(写真:つのだよしお/アフロ)

統一教会は「政治と宗教は一つにならなければならない」と主張しているようだが、日本では自民党に食い込むことはあっても政党結成にまでは至っていない。しかし台湾では既に政党を結成。取材したところ、「日本には公明党があるではないか」と反論された。

◆統一教会の台湾における布教活動

香港メディアの一つである「超越新聞網」は7月13日、<安倍刺殺は、恐るべき韓国の邪教を表面化させた!>というタイトルで、日本だけでなく、韓国や台湾などにおける統一教会の布教活動に関して詳細に論じている。

台湾における統一教会の布教に関しては、統一教会自身による報道があるが、ここでは「超越新聞網」の報道を参考にして紹介したい。

その報道には、おおむね以下のように書いてある。

――1967年、(アメリカの)CIA(中央情報局)の要請により、文鮮明は日本人女性の福田修子(韓国系の鄭仁淑)を台湾に派遣し、1971年に合法的な宗教団体として登録した。それを知った蔣介石は激怒して、すぐにそれを禁止した。蒋介石の厳しい弾圧の下、統一教会は地下活動を行い、李登輝政権が登場するまで、「家庭教会」の形で持ちこたえようとした。1993年に李登輝の招待により、文鮮明夫妻は台北を訪問して「立法院」でスピーチをしたため、(邪教の)信者は一気に5万人に膨れ上がった。2011年に「統一教台湾総会」に改名し、「純愛運動」とか「理想の家庭創建運動」など21の支部が台湾で組織された(引用ここまで)。

引用文の中にある「CIA」との関係に関して、同じく「超越新聞網」は「文鮮明が1950年代初期に韓国で世界基督教統一神霊協会(略称:統一教)を設立して活動していた時期、CIAは文鮮明を情報提供者として扱い、文鮮明はCIAの保護下に置かれていた」と説明している。1955年7月13日にソウルの警察側が文鮮明を「集団姦淫罪」で逮捕したのだが、同年10月4日、CIAの干渉により文鮮明は無罪放免となったという。

韓国はアメリカの準植民地であるため、CIAは統一教会を反共主義の最前線として位置づけ、1957年にも韓国当局が文鮮明の農村における布教を(淫乱な)邪教が農村の生産性に影響を与えるとして拘禁すると、再びCIAが干渉してきて釈放した。その恩義に報いるために、CIAは文鮮明に、1958年に(アメリカのもう一つの準植民地である)日本を訪問させ、布教に努めさせたのだと「超越新聞網」は書いている。

さらにアメリカが力を及ぼしている台湾にも統一教会を派遣させたのが、冒頭の引用文に書いた「1967年」のことだと、「超越新聞網」は位置付けている。

◆統一教会自身による台湾における活動の紹介

2011年9月14日、統一教会は、世界平和統一家庭連合のニュースとして<台湾の統一教会が優秀宗教団体特別賞を受賞>というタイトルで台湾での活動を報道している。

それによれば、台湾には1万5000もの宗教団体があり、その中から毎年、台湾政府の内政部(総務省に相当)が「優秀宗教団体」を表彰しているが、中華民国の建国100周年記念行事として、過去に優秀宗教団体賞を受賞した261の団体の中から、過去15年間で12回以上、または10回連続で優秀賞を受賞した宗教団体4団体に特別賞が与えられたとのこと。台湾統一教会は2001年より10年連続で表彰された実績を認められ、その4団体の一つに選ばれ、特別賞を受賞したという。

最近の活動は、統一教会自身が披露した動画などに、華々しく載っている。

たとえば2020年8月10日には<父の日に模範的父親が表彰されただけでなく、結婚生活60年目の夫婦も結婚式の服装をして祝福された>という動画があり、「集団結婚」だけでなく、すでに結婚している老夫婦にも布教を浸透させているためか、やはり「結婚」を媒介として布教する様がうかがえる。

◆台湾で結成された統一教会の政党「天宙和平統一家庭黨」

このような社会環境の中、統一教会は2014年7月20日に、「天宙和平統一家庭党」なる政党を設立している。

創黨理念には、「社会は宗教、政治、経済という3つの力で構成されている」とあり、「宗教と政治が調和」してこそ、国家は正しい統治ができという趣旨のことが書いてある。

興味深いのは、「今日の政治は、政治的に支配権を得るために宗教家を利用する」が、宗教の神聖な意志を無視しているので、宗教家自身が政治に直接関わらなければならないという趣旨のことが書いてあることだ。

つまり、日本の政権与党・自民党との関係を深めている背景には、やがて政権を取るというか、政治に入り込んでいこうとする意図が見て取れる。

おまけに「天宙和平統一家庭黨」の「綱領」を見ると、以下のようなことが書いてある。

  • 統一教会が世界を神に導かれた一つの国家(One Family under God)に持っていくこと。
  • まずは段階的に台湾を統一教会が創った天一国(天宇和平統一国)にする。
  • 世界各国に天一国を建設し、アメリカが独立時に13州をまとめてアメリカ合衆国としたように、統一教会が指導する連邦国家を世界に創り上げること。(以上)

日本は今、その過渡的段階として利用されているということだろうか。

◆台湾の知人を取材:日本には創価学会があり公明党が政治参加しているではないか!

宗教に強い関心を持っている台湾の友人に電話して取材した。

「台湾には統一教会の政党があるようですね?」

と軽く聞いたつもりだが、彼女は強い剣幕で反駁してきた。

「そうですよ!日本にだって公明党があって、しかも政権与党にさえなってるじゃないですか?日本の憲法では政教分離の原則があっても創価学会が公明党を作ることを認め、おまけに政権与党の自民党と組んで連立与党を作ることさえ認めていますよね!その日本から、統一教会に関して何か言われる覚えはないわけですよ。統一教会はそのうち、世界中の国で政党を作って天一国により全人類を統治するつもりですから」と、まるで「そのつもりでいてください」と言わんばかりの、思いもかけない回答が戻ってきた。

彼女は統一教会の信者だったのかもしれないので、あわててお礼を言って電話を切った。

その後、台湾における創価学会がどうなっているのかを調べてみたところ、「台湾創価学会」というホームページがあり、基本紹介には、創価学会は1962年に台湾に上陸し、1990年に正式に宗教法人として台湾で認められたとある。そして、やはり統一教会同様、台湾の「行政院賞」や、22回連続で内政部が発布している「全國性社会団体公益貢献賞」など、数多くの賞を受賞していることが書いてある。2017年と2021年には「芸術教育貢献賞」を受賞し、台湾政府の文化部からは「文馨賞」も受賞しているようだ。

ただ、創価学会は「親中」なので、台湾で政党を作るなら、国民党寄りになるのかもしれない。

日本国憲法にある「政教分離の原則」に対する解釈を、改めて思い知らされた次第だ。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。2024年6月初旬に『嗤(わら)う習近平の白い牙』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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