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バッハ会長の頭には「チャイニーズ・ピープル」しかない
橋本聖子会長と対談するバッハ会長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
橋本聖子会長と対談するバッハ会長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

バッハ会長が「日本人」を「中国人」と言い間違えたのは、ただ単なる「うっかりミス」だろうか?彼の頭には中国との利害関係しかなく、私たち日本人は東京2020を巡り「習近平+テドロス(WHO)+バッハ」の構図を直視しなければならない。

◆バッハ会長が「最も大切なのはチャイニーズ・ピープル」と

7月13日、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が、東京2020組織委員会の橋本聖子会長を表敬訪問した際、日本人の安全を訴える場面で「最も大切なチャイニーズ・ピープル」(中国の人々)と言い、あわてて「ジャパニーズ・ピープル」(日本の人々)と言い直す一幕があった。

その証拠は、こちらの報道で確認することができる。

動画の7分38秒あたりから注意深く観察していただきたい。

バッハ会長は次のように言っている。

――And now our common target is safe and secure games for everybody; for the athletes, for all the delegations, and most importantly also for the Chinese people……Japanese people.

この部分の和訳:

――そして今、私たちの共通の目標は、すべての人にとって安全で安心な大会であることです; 選手たち、すべての代表団、そして最も大切なチャイニーズ・ピープル(中国の人々)……(あ、いや)ジャパニーズ・ピープル(日本の人々)にとってです。

人は誰でも言い間違いはあると思うが、バッハ会長に限って、そして「日本人」を「中国人」と間違える場合に限っては、単なる「うっかりミス」で通り過ぎるわけにはいかないのである。

◆東京2020を巡る「習近平+テドロス+バッハ」の構図

これまで何度も書いてきたように、習近平はWHOのテドロス事務局長と「特別の仲」だし、バッハ会長とも「特別の仲」だ。

これに関しては、2020年1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす> や2020年5月26日のコラム<バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ> あるいは2021年5月28日のコラム<バッハとテドロスは習近平と同じ船に:漕ぎ手は「玉砕」日本>などで、いやというほど書いてきた。

しかし、そのとき日本人の何人が、私の主張に理解を示してくれただろうか?

残念ながら、「遠藤が変なことを言っている」というコメントが少なからずあり、この3者の癒着が、どれほど日本人に災いをもたらすかを理解してくれた人は多くはない。

そこで今般、われわれ日本人の目の前でバッハ会長が「最も大切な日本人」を「最も大切な中国人」と、「うっかり?」言ってしまったことを契機に、ここでもう一度、私がなぜ警鐘を鳴らしているのかに関して、因果関係を明確にしておきたい。

◆東京大会開催と習近平の利害の因果関係

  1. 仮に東京大会が開催されなかったとしよう。開催されない理由は「コロナ感染が収束していないから」以外の何物でもない。
  2. コロナで開催できなかったのだとすると、その責任と非難の矛先はコロナ感染の発祥地である中国に向く。何といっても習近平はWHOのテドロスと組んで、パンデミック宣言を遅らせた確信犯だからだ。あのときいち早くコロナの「人-人」感染を認め、パンデミック宣言をしていれば、武漢から外部への人流を抑えることができたはずだから、コロナはここまで全世界に広がらなかったかもしれない。となると、全人類は団結して習近平を非難することになるだろう。習近平として、それだけは避けたい。
  3. また、東京大会が開催されなかったとなると、日本はアメリカに同調して「北京冬季大会ボイコット」を叫び始めるかもしれない。習近平としては国家と一党支配体制の威信にかけて、それだけは絶対に避けたい。2022年は、何といっても第20回党大会がある年で、習近平はここで中共中央総書記のポストを続投することを決定しなければならないのだから。
  4. そこで仲の良いテドロスに呼び掛けて「コロナ感染の程度は、東京大会を開催するのに差し支えない」というメッセージを出してもらう。バッハは「WHOが阻止していないので、東京大会を開催しても構わない」と言うことが可能になる。
  5. 習近平はバッハとも「仲が良い」ので、「東京大会を成功させよう」と呼びかけることができる。
  6. 結果、習近平は「東京大会開催賛成!」と意思表示をする、という論理だ。

おおむね以上が「習近平が東京大会開催を支持する理由」であり因果関係である。

当然、莫大なチャイナ・マネーが、さまざまな形を取って、「仲の良い二人」に流れていることは言を俟たない。

◆日本人は習近平が成功するために犠牲になり、日本政府は一党支配体制維持のために貢献している

この構図と因果関係を理解することができれば、日本人の多くは「コロナ下での東京大会開催」に反対したはずだ。

それなのに、それを直視してくれる日本人は多くはなかった。

かつて天安門事件後の対中経済封鎖を、強引に解除させたのは日本であることは、もう繰り返すまでもないだろう。

あのときは中国共産党による一党支配体制を崩壊させることができる唯一のチャンスだった。だというのに、日本は「中国を孤立させてはならない」として中国に「温かな手」を差し伸べ、こんにちのような巨大な力を持つ中国を「一生懸命に」育ててきた。

いま私たち日本人は、又もや同じことをしていることに気が付いてほしい。

それとなく気が付かないように持って行っているのは、政権与党だけでなく、一部のメディアも同罪だ。

東京大会開催に強引に持って行ったのは政権与党の親中派であり媚中派だ。

その結果、日本人の命を犠牲にし、日本の尊厳を失わせている。

バッハ会長が来日した今、中止を叫ぶことができる段階は過ぎてしまったかもしれないが、せめて日本人が今、何を失おうとしているのかに気が付いてほしいと心から願う。

東京大会開催をコロナが原因で中止した場合、習近平の中共中央における威信は必ず揺らいだはずだ。それは一党支配体制の維持を困難にする。

習近平が何を考えて、何をやろうとしているのか、その真相を知るには『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』を理解しない限り不可能だと断言できるとともに、中国の真相を本気で知らない限り、日本は永遠に「中国共産党に貢献する国家」から抜け出すことはできないことも、断腸の思いで警告しておきたい。

コロナ下における東京大会開催は、中国共産党一党支配体制崩壊の滅多にないチャンスをさえ、摘み取ってしまったという皮肉を直視してほしい。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授、北京大学アジア・アフリカ研究所特約研究員、上海交通大学客員教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文版・英文版もあり)、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Chinese Issue Global Research Institute, Professor Emeritus, Doctor of Science at the University of Tsukuba. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Chazu Chugoku Kenkoku no Zanka (Japanese Girl at the Siege of Changchun) (including Chinese and English versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chaina jajji — Motakuto ni narenakatta otoko (China Judge: The Man Who Couldn’t Become Mao Zedong),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.