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バッハとテドロスは習近平と同じ船に:漕ぎ手は「玉砕」日本
2021年に延期された東京五輪(写真:アフロスポーツ)
2021年に延期された東京五輪(写真:アフロスポーツ)

IOCとWHOは建党百周年記念を輝かせたい習近平国家主席と利害を共にし、彼らが乗る船「習近平号」をコロナ失敗国・ワクチン後進国である日本が玉砕覚悟で漕いでいる。命と税金を奪われるのは日本国民だ。

◆習近平にとって御しやすいWHOテドロス事務局長とIOCバッハ会長

バッハ会長やコーツ副会長を中心とするIOC(国際オリンピック委員会)が、いかに緊密に結託しているかに関しては一昨日(5月26日)のコラム<バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ>に書いた。

これに加わるのがWHO(世界保健機構)のテドロス事務局長だ。

テドロスがどれだけ習近平と「つるんで」いるかに関してはこれまで何度も書いてきたが、まだご覧になっておられない方は2020年1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>など、その周辺コラムをご覧いただきたい。

しかしそのテドロスもコロナの世界的蔓延が日々爆発的に拡大している状況を受けて、東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪と略称)の延期を勧告せざるを得ないところに追い込まれ、安倍元首相からの申し出もあり、2020年3月24日にはバッハも渋々「1年程度の延期」に同意した。

2020年5月16日にはIOCとWHOが覚書を交わし、IOCはWHOの助言に従って行動することとなった。

こうなったら東京五輪に対するIOCの方針は習近平の意向一つで左右されることになるのは目に見えていた。

◆今年の中国共産党建党100周年記念を何としても輝かせたい習近平

今年7月1日は中共共産党建党100周年記念だ。そうでなくとも輝かせたいだろうが、拙著『裏切りと陰謀の中国共産党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』に書いたように、習近平にとっては、中国の如何なる他の指導者よりも「建党100周年」に対するこだわりは強いはずだ。それは権勢欲とか名誉欲とか、そういった一般の指導者が持つ野心以外に「親の仇を討ってやる!」という1962年以来蓄積してきた強烈な復讐心が心の底に内在しているからだ。

だから、ちょっとやそっとのことではへこたれない。

何を言われようとも、7月1日を輝かしく迎えて、来年の北京冬季五輪へとつなげていこうとしている。

だからテドロスを使ってWHOを動かし、テドロスとともにバッハを誘い込んでIOCを動かしている。

くり返しになるが、5月26日のコラム<バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ>に書いたように、東京五輪が中止されれば、それはコロナのせいなので、「コロナの責任論」が世界中で再燃するだろう。となれば、習近平が必死で避けている「ウイグルの人権問題」にも焦点が当たる。

だから習近平はバッハに「五輪を政治化してはならない」と言わせており、ウイグル問題をスルーすることに今のところ成功している。本来なら「政治化させないためにも人権には焦点を当てなければならない」のに、本末転倒だ。

だから東京五輪は、習近平・テドロス・バッハが乗った船「習近平号」が何としても断行しようと必死なのである。

◆「習近平号」の漕ぎ手は「コロナ惨敗国」日本:ツケを払うのは日本国民

そのような外圧を喜んで受けて立ち、「習近平号」の漕ぎ手を自ら名乗って懸命に漕いでいるのが日本政府だ。

そのツケを払わせられるのは日本国民で、国民は命を捧げ経済破綻を強いられる。

日本はコロナ対策で惨敗した国だ。

ワクチン接種に関しても世界一の後進国であると言っても過言ではない。

さまざまなデータが出ているので、ここで指摘するまでもないことだが、最も見やすいデータにNHKの表示がある

ここまで立ち遅れている国が、世界から10万人も集めて東京五輪を開催しようというのだから正気の沙汰ではない。

7月末に高齢者向けのワクチン接種が終わったとしても、若者たちはどうするのか?

子供たちもどうするのか?

7月に東京五輪を断行してしまえば、日本政府のこれまでの国民の命を軽視する姿勢から推測すれば、ワクチン接種のスピードは減速する可能性さえある。

復興五輪などと銘打ってスタートしたはずの東京五輪だが、あの原発事故から日本は何を学んだのか?

「予想できない危機」を回避するのが「リスク管理」ではないのか?

復興どころの騒ぎではなく、日本は今、第二次世界大戦の「玉砕精神」に基づいて「習近平号」を疾風の如く走らせるために、罪もない日本国民の命を犠牲にして盲進しているのである。

◆東京五輪を断行した時に強いられる契約「開催都市計画」

東京が2020大会の開催都市に決定した際に、東京都、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会、IOCの3者で締結した「開催都市計画」なる契約がある。そのリンク先にある「開催都市契約(日本語訳)(899 KB)」というPDFをクリックすると、そこに詳細な契約内容が書いてある。

その24頁にある「24.」の「a)保健サービ」に概ね以下のようなことが書いてある。

――開催都市(など)は、IOCから受けたすべての指示に従い、(中略)本大会のために開催国に滞在中に発生したあらゆる症状について、IOCが指定する一部のカテゴリーの資格認定を受けた人々(選手、チーム役員、チームスタッフ・・・・・・・が含まれるが、これらに限定されない)に対し、無料で提供するものとする。(引用ここまで)

この無料提供というのは、日本側がお金を出すということだから、結局は日本国民の税金から捻出することになる。

私たち日本国民は、このコロナ禍の中で「命の選択」をされて入院も出来ず自宅療養で死んでいき、ワクチンの接種も受けられないまま、全世界から10万人ほどの関係スタッフを受け入れ、しかも爆発的なコロナ感染が待っているかもしれない中で、東京五輪開催を強要されているのである。

復興五輪は「予期できない津波による原発事故が招いた災害からの復興」を謳いながら、コロナという、予期できないウイルス災禍の中で、やはり「予期できないリスク」を回避せずに断行しようとする玉砕行動に向けて、いま日本は突き進もうとしているのだ。

虚構の「勝利」を国民に信じさせて、竹やりで原子爆弾に立ち向かった愚かな日本。

その愚かさだけでなく、原発事故もリスク回避できず、さらにコロナ爆発と日本国民の命と財産を捧げて「習近平号」を守り抜こうとしている愚かさに、日本国民全体が気づかなければならないのではないだろうか。

得をするのは習近平。

儲かるのはIOC。

多大なる犠牲に苦しむのは日本国民なのである。

天安門事件以降の日本の中国支援が、今日の中国の繁栄をもたらしたことは、もう何度も書いてきた。拙著『裏切りと陰謀の中国共産党100年秘史』の冒頭と最終章をご覧いただければ、スタートから今日まで、中国共産党の繁栄を支え続けてきたのは日本であることが明確になる。

日本国民には、その自覚を持ってほしいと切望する。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。7月初旬に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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