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「被災者をも自己アピールのネタに?」 中国のネットがざわつく高市総理の被災地視察
「令和8年熊本地震による被災状況視察のための熊本県訪問」(首相官邸ホームページ)より転載

高市総理の被災地熊本視察を基に官邸が制作したBGM入り動画に関して、日本では「まるでプロモーションビデオではないか!」とする批判が湧き出ている。たとえば、<高市首相の被災地視察動画が炎上 BGM付き「総理が主役のPV」に「政権プロパガンダ」批判(J-CASTニュース) – Yahoo!ニュース>や、<「アホか」芥川賞作家も苦言…高市首相 熊本地震の視察動画が大炎上、被災地訪問を“プロモーションビデオ化”と波紋>などがある。

中国のネットでも「被災者をも自己アピールのネタ」に使ったことに対する高市早苗への批判が尋常ではない。

特に中国には「跪(ひざまず)く」ということに対して激しい「屈辱感」を抱く文化があるため、かつて天皇陛下や安倍元総理が避難所に直接赴いて跪いて被災者の話を聞いたことと高市早苗を比較するコメントが多く見られた。

何よりも高市早苗が「厳選された5人の被災者代表」としか面会せず、おまけにその中には地元の元役人が一般被災者として潜り込んで高市早苗を絶賛していることを見逃していないのには驚いた。

◆環球時報:高市早苗が面会した被災者の中に地元の元役人が紛れ込んでいた

中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」が注目したのは、高市早苗が面会した「被災者」は「厳選された5人」で、その中に地元の元役人が紛れ込んでいたことだ。そこには「高市が5人の被災者代表と面会する動画を見た日本のネットユーザーは、動画の中で『日本人として本当に良かった』と語った79歳の男性が、一般の被災者ではなく、今年4月に退任したばかりの地方自治体委員会の元副委員長だったことを突き止めた」と書かれている。

そのような事実が日本のネットで報道されていることを知らなかった筆者は、環球時報が高市早苗を貶(おとし)めるためにフェイクニュースを流しているのではないかと疑い、日本のネットで調べてみたところ、それが真実であることを知って驚いた。

8月4日、「人生はくじ引きの連続」というウェブサイトで<高市首相の熊本被災地視察はやらせ?滞在時間40分・51分論争の真相と菅直人5時間説比較、島田博行氏は誰で何者か経歴・役職まとめ>というタイトルの論評があり、そこに「島田博行さんは誰で何者?」とあり「高市早苗首相と意見交換した被災者の一人が、島田博行(しまだ・ひろゆき)さんです。島田博行さんは79歳で、氷川中学校で避難生活を送っている住民として取材に応じました」と説明している。その際、「日本人として本当に良かった」と感謝の言葉を述べたそうだが、実は「島田博行さんは一般の避難者であると同時に、氷川町の代表監査委員を務めています。熊本県町村監査委員協議会でも、副会長を務めていることが公式名簿で確認できます」と書いてあるではないか。

これには驚いた。

このように用意周到に厳選されていた「被災者代表」の中の誰が何を言うかまでが準備されていて、「回答を示した紙」までが高市早苗側から用意されて被災者代表に渡されていたという情報もある。こうして冒頭で述べた官邸制作の「高市早苗のためのプロモーションビデオ」が公開されたのであることがわかる。

支持率低迷のために、なんとか自己アピールをしたいのだろうが、いくらなんでも地震の被災者を自己アピールのために使うというのは「良心の限界」を超えているのではないだろうか?

◆中国のネットに現れた膨大な数の「高市早苗、自己アピールのための芝居」

中国のネットでも「自己アピールのための芝居」といった類の発信が多く、あまりに膨大な数に及ぶので一つひとつ列挙するわけにはいかないが、その内のいくつかを下記に示す。中国語ではあるが、画面をご覧いただければ、中国のネット民が何を言いたいかが概ね伝わってくると思われる。

因みに最後の二つの「空から祈祷」に関しては、日本では「安倍晋三元総理のコスプレではないか」という趣旨のX投稿もある。

◆中国のネット民が強い関心:天皇陛下も安倍晋三元総理も跪いて被災地視察をしたが、高市早苗は跪かない

中国では上記以外にも膨大な数に及ぶ「高市早苗のためのプロモーションビデオ」に関するコメントがあるが、中でもハッとしたのは「跪く」に関する中国人ならではの視点だ。

8月4日の<高市は跪いていない>や同日の<高市早苗被災地視察で跪かず 日本のネット民が天皇や安倍の古い写真を掘り起こした>などがあるが、そこで使われている写真を図表1~図表3に示す。

図表1:2016年の熊本地震の後、被災地を視察した83歳の当時の天皇陛下

中国の日本地産攻略のWeChat公衆号より転載

図表2:2016年熊本地震の時に被災地を視察した安倍晋三元総理

中国の日本地産攻略のWeChat公衆号より転載

図表3:避難所現場で跪かずに、厳選された被災者代表5人とテーブルを挟んで会談するのみの高市早苗

中国の日本地産攻略のWeChat公衆号より転載

冒頭に書いたように、中国では「跪く」ことは「さあ!俺の股をくぐれ!」と言われたのと同じ程度に「激しい屈辱感」を与えるものとみなす文化がある。

「跪いて生きるより、立ったまま死ぬ方がましだ」(宁可站着死,不愿跪着生)という言葉さえあり、「跪く相手は天と地と父母のみ」(跪天跪地跪父母)という共通認識が強い。

日本には畳があり、正座する習慣もあるので、中国人の目から見るほど「跪いて、相手の目線と同じ高さになって話す」ということに対する畏敬の念は強くないかもしれないが、中国では「この姿勢」に尋常ではない関心を抱いている。

中国のネット民が、高市早苗の姿勢や言動を当時の天皇陛下や安倍元総理と比較して、少なからぬ日本人同様の疑念を抱くのは注目に値するのではないだろうか。

もっとも、中国のネット民が習近平に対して何か自由に発信できるかと言ったら、そうではないことは言うまでもない。他国の首相に関してなら書けるために書いているに過ぎないことは明らかだ。ただ、その内容から見ると、もし自国のリーダー(習近平)に対して自由に書くことが許された場合、このようにレベルの高い適切な分析をするかもしれないことが推測される。それは中国共産党政権が続く限り実現しないだろうが、いつか、そんな日が来るのを待ちたいものだという思いが、ふと脳裏をよぎった。

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国長春市で中共軍による食糧封鎖に遭い家族を餓死で失う。1953年日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『G2構想 勝つのは米国か中国か』(7月2日発売予定)、『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』、『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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『G2構想 勝つのは米国か中国か』

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『台湾機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』

遠藤誉著(新潮社)
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by Homare Endo(Bouden House)
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