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中国のネットで沸く高市X投稿「風呂掃除、洗濯、裁縫、アイロンかけ…」
高市早苗総理大臣(写真:REX/アフロ)

7月20日、高市総理はXに「平日は、公邸に戻ってから、風呂掃除、入浴、夕食、夕食後の洗い物、洗濯、簡単な掃除まででプライベートな時間は精一杯で…」などと投稿。日本でも多くの批判や疑問が出回っているが、中国のネットも負けていない。「高市X投稿」で持ち切りだ。

◆「高市X投稿」の内容

読者の皆さんはすでにご存じだとは思うが、念のため図表1に高市総理のX投稿(ポスト)内容をお示しする。ログインした場合は日本時間の午後10:33が表示され、ログアウトだと世界標準時間が表示される。図表1はログアウトで閲覧した時の画面である。

図表1:7月20日の「高市X投稿」の画面

高市早苗のポストの画面キャプチャー

一国の総理大臣が平日、公邸に戻ってから「風呂掃除、入浴、夕食、夕食後の洗い物、洗濯」に時間を費やし、連休になると「大量の洗濯後のハンカチやインナーのアイロンかけと、お裁縫(スカートの裾のほつれのまつり縫いやジャケットの緩んだボタンの補強)を一気に処理」している。「特にアイロンかけが下手で時間がかかるので、つい先延ばしにしていた結果、スーツに合わせるインナーが殆ど無い状況に。これで会期末までのハンカチとインナーを確保でき、明日から又、頑張れます!」とは何ごとか。

睡眠時間に関しても「久々に5時間も睡眠を取れた(総理就任以来、0時間〜3時間睡眠が常態化)」と、睡眠不足を自慢している。

7月20日の論考<高市内閣支持率41% 中国は支持率下落をどう見ているか?>に書いた「支持率41%」にショックを受けて「私、こんなに忙しい」アピールをしているものと思われるが、それは全くの逆効果だ。日本国民が高市総理に求めているのは風呂掃除でもなければ、スカートのほつれの縫い物仕事でもない。「私、ふつうの庶民なの…」をアピールして支持率回復を狙っているとすれば、それは大きな勘違いだ。

◆「高市発言」で対立する中国にとっては格好の嘲笑対象

昨年の「高市発言」をきっかけに、最も問題となる人物としてその言動を追っている中国にとって、この「高市X投稿」は格好の嘲笑対象となった。

7月21日、中国共産党機関紙の姉妹版である「環球時報」はウェイボー(Weibo)で<高市早苗が「苦情」を投稿:家事に長時間費やし睡眠不足:日本のネット民が怒って批判>という見出しで「一国の首相ともあろう者が、家事労働で時間がないと嘆き、ネット民の同情を買おうとしているが、この【庶民的であること】を売り物にした投稿は、多くの日本国民の間で強い反感を買っている」と酷評している。

すると新浪財経が<家事労働で寝る時間がない? 高市早苗の苦情は厳しく批判されている>と受け、今度はまた環球時報がウェイボーで対応。そこには日本のネットに現れた風刺画(図表2)までが転載されている。この風刺画は、「@oyamada_maki」というXアカウントを持つ日本人による投稿だ。

図表2:日本のネットに現れた風刺画

環球時報が転載した「@oyamada_maki」というXアカウントを持つ日本人が投稿した風刺画

もう、日本のネットを見ているのか中国のネットを見ているのか区別がつかないほどの迅速さと詳細さで、日本のネット情報が中国のネットにつぎつぎと転載されているのがわかる。

ウェブサイトSohu(搜狐)も負けていない。<高市早苗、多忙アピール投稿 : 家事に長時間費やし、3時間未満しか眠れない ; 日本のネット民が激しく非難 : 政府業務を適切に処理するどころか、同情を得ようとしている>と発信。21財経は<高市早苗は多忙アピールを投稿 : 家事に多くの時間を費やし、1日に3時間も眠れない。浴室清掃、料理、食器洗い、洗濯を自分でこなし、その後夜遅くまで仕事をしているという。日本のネット民たちは、彼女の精神状態は歪んでいると怒りの批判を浴びせた>という、やたら長いタイトルで情報発信。

ウェブサイト網易は<高市首相は大変さを演じるために「ガタッ!文学」を投稿 : 毎日3時間しか寝ていないのに、まだスカートのほつれを縫い、皿洗いを続けている!  しかし、日本のネット民からは厳しい批判>という、日本人には少しわかりにくい見出しで報道している。「ガタッ!文学」というのは「あまりに信じられなくて、ガクッとする」というニュアンスの音「ガタッ!」を用い、「文学」といやらしく高めて嘲笑するような風刺的表現だ。

ともかく、このような情報が、大手ウェブサイトに現れるので、中国のネットは「高市X投稿」で燃え上がり、大小さまざまなサイトが発信して、SNSでは収拾がつかないような活況ぶりだ。

◆中国のネットでの主たる反応:「売惨」(支持率を買うために悲惨さを売る)

中国では長いこと共働きが中心になっていて、いわゆる「主婦」というのが現れてきたのは、改革開放がかなり進んで富裕層が増え始めた後のことだ。そのため、それほど富裕でない家でも家政婦がいたり、子育て家庭になると「保母(バオ・ムー)という子供の面倒を看る「お手伝いさん」を雇っていたりする場合が多い。

そのためもあってか、

    一国の首相ともあろう者が、なぜ家事労働をする人を別途雇用しないのか?

という疑問が随所で見られた。国から高給を与えられているはずだから、家事労働を首相の代わりに遂行する人くらいは雇えるはずで、「日本はそういう仕組みになっていないのか?」という疑問を多くの中国のネット民が書いている。

最も頻繁に出てきた単語は

売 惨 】

である。これは「支持率を買うために悲惨さを売る」という意味で、中国語の漢字のインパクトにハッとした。

また平日の睡眠時間が「0から3時間」ということに関しては、「作秀」という言葉が目立った。「作秀」というのは、「パフォーマンスをする」とか「人目を意識した見せかけの行為をする」という意味で、平日(毎日?)、「寝てないか、寝ても多くて3時間」というのでは体がもたないはずで、「真実を書いていない」という不信感が目立った。

結局、「そこまでして支持率を上げたいのか」という疑念が全体を覆い、高市早苗の思考回路、意思決定にまで話が及んでいる。

◆「高市発言」も支持率を買うためか・・・?

そこで、ふと、立ち止まって考えてみた。

拙著『G2構想 勝つのは米国か中国か』のp.225で、高市氏が2024年12月10日に、訪日中の台湾の民進党秘書長と会談して「もう、台湾が大好きで、大好きで・・・」と発言したことに触れた。続けて彼女は「(『一つの中国原則』を認めない)民進党で政権を維持してほしい」とにこやかに語っている。

このとき高市氏は同年10月にあった自民党総裁選で石破氏に敗れたばっかりなので、おそらくは次の自民党総裁選での効果を狙ったものだと思われる。日本国民の支持率が上がれば、自民党総裁選で有利になることを計算しての発言と解釈することができる。

となると、2025年11月7日の「高市発言」も、今にして思えば「解散宣言」をしたときの「自分の人気」すなわち「支持率」を計算したための発言だったのかもしれない。

今般の大幅下落した41%支持率を挽回させようと、支持率を上げるために投稿した「高市X投稿」の目的と思慮の浅さを考えると、全ては「支持率を上げるため」であり、そのような発想から「高市発言」も出てきたのではないだろうかと思ってしまうのである。

媚中でないことは肯定できても、周到な世界情勢の判断の下での言動ではなく、支持率向上が目的であるなら、それは日本国民に必ずしも幸せを運んでくるものとは限らない危険性を孕んでいる。

「風呂掃除、洗濯、裁縫、アイロンかけ…」から、とんでもないことが見えてきた。

それを可能ならしめたのは、中国のネットに頻出している【売惨】という漢字2文字だった。  

分析した甲斐があったのかもしれない。

 

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国長春市で中共軍による食糧封鎖に遭い家族を餓死で失う。1953年日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『G2構想 勝つのは米国か中国か』(7月2日発売予定)、『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』、『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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『G2構想 勝つのは米国か中国か』

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『台湾機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』

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by Homare Endo(Bouden House)
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