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ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartⅣ 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため
イスラエル・ウクライナ支援を呼びかけるバイデン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
イスラエル・ウクライナ支援を呼びかけるバイデン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

今回(PartⅣ)は「ウクライナ危機を生んだのは誰か?」シリーズの最終回である。初めてご覧になる方はPartⅢPartⅠPartⅡのことが書いてあるので、そちらをご参照いただきたい。このシリーズのNED(全米民主主義基金)に関するデータは、すべてNEDの年次報告書(1983年~2021年)に基づいている。

これらを分析する目的は、アメリカがNEDを遣って中国大陸や香港あるいは台湾で「人に気づかれないように」暗躍し、台湾有事を招くことによって中国を潰そうと目論んでいる証しを見つけることにあり、それによって日本が戦争に巻き込まれるのを何としても避けることにある。

◆露ウにおけるNEDの活躍(2016年~2022年)

前掲のPartⅠに1991年から2021年までの露ウに対するNEDの支援金額と推移のグラフがあるので、興味のある方は、そちらをご覧いただきたい。なぜ1991年からかというと、旧ソ連が崩壊したのが1991年12月だからだ。

それでは図表1に、PartⅣの考察対象期間である2016年から2022年までのNEDの活動を列挙する。但し2021年は金額の入った年次報告書がまだ公開されていないため、金額部分は書いていない。2022年の活動はNEDのウェブサイトから引用した。またPartⅠにも書いたように、なぜか2017年の対ウクライナの支援金額が公開されていないので、ここでは不明とした。

図表1:ロシアとウクライナにおけるNEDの活躍(2016年~2022年)

NEDの年次報告書に基づき筆者作成

NEDの年次報告書に基づき筆者作成

図表1で驚くのは、NEDがこんなにまで深くロシアに入り込んでいることである。西側諸国でロシアのニュースとしてよく出て来る「独立系メディア」を、しっかり訓練してNEDの意思に沿った報道をさせており、NEDの助成金受給者がロシアの独立系メディアを動かしていることが浮き彫りになってくる。ロシアのウクライナ侵攻後も、侵攻に抗議するデモはNEDがロシアの市民団体を教育してデモを起こさせながら、「ロシアの国民が、こんなに抗議している」と西側諸国に発信している実態が、NEDの支援金内訳を見ることによって明らかになってきた。

ウクライナに関しても同様で、2016年の最初に、NEDが「ウクライナはNEDのヨーロッパにおける最優先事項だ」と宣言していることからも、NEDがいかにウクライナに力を入れているかがわかるし、どんなことがあっても親露政権にだけは戻さないように、2017年になってもなお、かつてのヤヌコーヴィチ親露政権に抗議させた(NEDが支援し訓練した)ジャーナリストにNED民主賞を授与している。

2019年~2022年に至っても、ひたすらメディアに支援金を渡し、メディアをコントロールしてアメリカに都合のいい情報を流すことに力が注がれていることが透けて見える。

◆プーチンがウクライナを侵攻するように仕向けたバイデン

NEDの活動とともに、バイデン政権自身が、何としてもプーチンにウクライナを攻撃させるように、あらゆる軍事的支援を注いだり、NATO加盟へと誘導したりしていたことが、ウクライナにおけるアメリカとアメリカが主導するNATOの活動によって浮かび上がってくる。それはバイデンがまだ副大統領だった2009年から始まっている(その詳細はPartⅢ)。図表2に示すのは2016年から2022年2月24日、ウクライナ侵攻が始まった時点までである。

図表2:露ウ及び関連諸国の政治外交情勢の時系列(2016年~2022年2月24日)

筆者作成

図表2では、アメリカ、特にバイデンが行った対ウ軍事支援や個人の利益に基づく行動などは赤で示すよう試みた。主たるものだけを拾い上げた。またロシアにおけるNEDの支援金の活動対象の人物が特定される場合は、たとえばアレクセイ・ナワリヌイのように青で示してみた。

図表2の右端、2016年冒頭で、ハンター・バイデンが取締役を務める会社の腐敗問題を調査する検事総長をバイデン(副大統領)が解任させたことは有名な話だ。アメリカ(事実上、バイデン)の傀儡政権となっていたウクライナのポロシェンコ政権は、バイデンの「もし、この検事総長を解任しなければウクライナへの軍事支援は無くなると思え」という強迫にポロシェンコが屈服したのだと、解雇された検事総長がのちに詳細に暴露している。

このシリーズのPartⅢの中の【図表2】の、2014年の下から2番目の項目に書いたように、バイデンは「NATO加盟をウクライナの最優先事項にせよ」とウクライナ議会に要求して、ウクライナ憲法に「ウクライナの首相はNATO加盟を努力義務とする」と書き込ませたほどの内政干渉をしている。国際法違反もはなはだしいのだが、何せメディアをコントロールしているのがNEDなので、西側メディアは意図的にスルーしている。

2017年に「NATOなど要らない」と主張するドナルド・トランプが大統領になってもなお対ウ軍事支援が続いているのには別の事情がある。

トランプ大統領はゼレンスキーがウクライナの大統領に就任するとほどなく、ゼレンスキー大統領をホワイトハウスに呼びつけて、「バイデンがウクライナで行なってきた悪事の証拠を渡してほしい」と頼み「さもなくば・・・」と対ウ軍事支援打ち切りをほのめかしたという疑惑を持たれたことから、そのような事実はなかったことを証明するかのように、「バイデンに関する秘密資料を貰っていない状態でも」軍事支援をしていることを見せつけて無罪を立証しようとしたために、結果的に対ウ軍事支援は継続されている。

2021年にバイデン政権になると、満を持して対ウ軍事支援を本格化させ、バイデンはNATOに呼び掛けてロシアへの圧力を最大限に強化していった。無様な形のアフガン撤退で、アメリカはNATOの信頼を失ったので、それを回復する目的があったのも否めない。

一方、ゼレンスキーはミンスク合意の枠組み「ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツ」を破棄して、その中にアメリカが入ることを要望した。誰が考えてもバイデンがゼレンスキーにそのように要望しろと指示したのは明確だろう。

このミンスク合意というのはマイダン革命を起こして叩き潰したロシア系住民が多いウクライナ南東部(ドンバス地域)住民への人道的取り扱いに関する合意で、親米のポロシェンコ政権になってからのドンバス地域への虐待ぶり尋常ではなかった。

今年914日のコラム<中国の歌姫·王芳がウクライナ廃墟の劇場でカチューシャを歌う「なぜ?」>で書いたように、フランスの女性ジャーナリスト、アンヌ=ロール·ボネルが監督したドキュメンタリー映画『ドンバス2016』(日本語字幕付き)をご覧になると一目瞭然だ(大変申し訳ありません。914日の時点では間違いなくこのサイトに日本語字幕付きの動画がありましたが、125日昼に再確認しましたところ削除されておりました。その後、他のリンク先を見つけましたので、ここに改めてリンク先をお知らせします。それはドンバス 2016″ドキュメンタリー映画【日本語字幕付き】(“Donbass 2016” Documentary by Anne Laure Bonnel subtitles JAPANESE)>です。こちらをご覧ください。2023115日夕方加筆)。ドンバス地域のロシア系住民は、現在のガザのような日々を強いられていた。

ゼレンスキーはこのミンスク合意を破棄しただけでなく、2021年10月6日にウクライナ政府軍にドンバス地域へのドローン攻撃を行わせた(日経新聞報道読売新聞報道など多数)。ドンバス周辺では日頃から小競り合いはあったものの、ウクライナ政府軍が最初の攻撃の口火を切ったとしてプーチンが2021年11月初頭に批難している。

またバイデンが2021年2月8日に「ロシアが侵攻すれば、ノルドストリーム2を終わらせる」、「われわれにはそれが可能だ」と事前通告しているのは注目すべきで、実際、ウクライナ侵攻が始まった後の2022年9月26日、ノルドストリーム2は爆破されてしまった。これに関しては今年2月20日のコラム<中国ネットで炎上 米ジャーナリストの「ノルドストリーム爆破の犯人はバイデン大統領」>で書いた通りだ。

PartⅠからPartⅣを通してご覧いただくと、旧ソ連崩壊前に約束された「NATOは1インチたりとも東方に拡大しない」という約束は完全に破られ、ロシアは騙されたことになる。のちに関係者は「騙すつもりだった」ことを白状している。これ以上座視すれば、ウクライナの軍事力はロシアを超え、完全にNATO加盟してロシアを完全包囲するところまで行っただろう。

いまウクライナを侵攻しなければウクライナがNATO加盟してしまうとプーチンは思ったのにちがいない。戦争をしていればNATO加盟を許されないので(加盟国全体がロシアと交戦しなければならなくなるので)、プーチンは侵攻を仕掛けて、ウクライナのNATO加盟を食い止めたものと推測される。

こうしてバイデンはプーチンをウクライナ侵攻するしかないところまで追いつめながら「侵攻は絶対に許さない」と言って回りウクライナ侵攻へと導いていったのである。

◆台湾有事も同様のスケールと計画で創り出される

筆者がなぜ執拗に「ウクライナ危機を生んだのは誰か?」を追跡するかというと、アメリカは「台湾有事」も、ウクライナ危機を生ませたのと類似の手口で創り出すであろうことを懸念するからだ。

今年8月21日のコラム<遂につかんだ! ベルリンの壁崩壊もソ連崩壊も、背後にNED(全米民主主義基金)が!>では、いかにアメリカが旧ソ連を潰したかったかをデータに基づいて考察した。

今般の「ウクライナ危機を生んだのは誰か?」シリーズでも、PartⅠからPartⅣをご覧いただければ、いかにアメリカが、特にバイデンがロシアを潰すために2009年から凄まじい動きをしてきたかが、お分かりいただけるだろう。

ロシアを潰し終わったら、次に潰しにかかるのは中国である。

中国を潰すには、何としても台湾人に「独立」を叫んでもらって、中国に台湾を武力攻撃してもらうのが一番早い。

その生死を分けた闘いがいま台湾で総統選を巡って展開されている。そこで活躍しているのは2003年に設立されたNED台湾支部「台湾民主基金会」だ。これらの詳細は全て拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で述べている。特に同書のp.253からp.255にかけて掲載した【図表6‐8:「第二のCIA」NEDの活動一覧表】をご覧いただきたい。

日本が戦争に巻き込まれる事態は目前に迫っている。

日中戦争、国共内戦そして朝鮮戦争と3つの戦争を実体験した者として、どのようなことがあっても、日本が再び戦争に巻き込まれることだけは避けたい。そのためにはNEDの実態を見抜く以外にない。一人でも多くの読者の方々がこの真相に目を向けて下さることを、ひたすら祈るばかりだ。

この論考はYahooから転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。7月初旬に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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