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バイデン大統領、台湾総統選の「藍白合作」に圧力か? 台湾民衆党の柯文哲が迷い始めた…
今年6月に来日したときの台湾民衆党の柯文哲氏(写真:つのだよしお/アフロ)
今年6月に来日したときの台湾民衆党の柯文哲氏(写真:つのだよしお/アフロ)

バイデン大統領は米中首脳会談の直前に台湾総統選「藍白合作」(野党連携)を知ったらしく、会談後の記者会見で、「会談で習近平国家主席と野党連携に関して話し合った」と述べている。習近平に「中国は台湾の選挙に介入するな」とも言ったらしい。

一方、「藍白合作」に合意した台湾民衆党の柯文哲(次期総統選立候補者の一人)は11月18日の正副総統候補者名簿発表寸前になって、「ちょっと時間をくれ」と言い始めた。野党連携に関して米国在台湾協会から連絡があり「中国が介入しているのではないか、説明しろ」という要求を受けたと、自らテレビで暴露している。

◆迷い始めた台湾民衆党の柯文哲候補

11月16日のコラム<「台湾有事」が消えるか? 台湾総統選で野党連携「藍白合作」が決定>に書いたように、11月18日(の午前10時)に馬英九基金が「藍白合作」野党連携において正副総統の名前を発表することになっていた(念のため、「藍」は国民党のシンボルカラーで、「白」は台湾民衆党のシンボルカラー)。

「藍白合作」決定を発表した段階では、11月7日から17日までの支持率を考慮して決定するとしていたが、実際上、台湾の国会である立法院における委員(議員)の議席数なども考慮すれば、そちらの要素の方が大きいだろう。

たとえば、2020年1月11日に行われた第十回「中華民国」立法委員選挙の結果、総議席数113に対して、「民進党61、国民党38、台湾民衆党5」と、野党では圧倒的に国民党の議席数の方が多いので、国会における発言力や決定権などに影響してくる。この視点から見たとき、国会(立法院)運営上、国民党から総統を出さないと国会が機能しなくなってしまうことも考慮されるだろう。

加えて、10月末までは柯文哲の支持率が国民党の立候補者・侯友宜の支持率よりやや上回っていたが、11月に入ってからは、僅かではあるものの侯友宜の支持率の方が高くなっている。

したがって総統候補は侯友宜で、副総統候補は柯文哲という線で馬英九基金は結果を公表しようとしていたものと推測される。

ところが、17日の深夜から18日の早朝にかけてさまざま検討され、柯文哲が「待った」を掛けたというのだ。本日早朝の「聯合早報」は、<藍白合作破局という噂が 柯文哲:私に少しだけ時間をくれ>という見出しで、柯文哲の苦しそうな心境を伝えている。このリンク先にある、柯文哲の苦しげな顔をご覧いただきたい。ここまで苦悩に満ちた柯文哲の表情は、未だ見たことがない。

11月18日の聯合早報に掲載されていた柯文哲氏の苦し気な表情

11月18日の聯合早報に掲載されていた柯文哲氏の苦し気な表情

柯文哲は「まだ破局したわけではない。もう少し時間をくれ」と言っているとのことだが、何やら世論調査のポイント数の計算の仕方で意見の一致が見られず、もめているという情報もある。関係者は全員「破局したわけではない」と言っているが、問題は支持率の微少な差の計算法にあるのではないと思う。冒頭に書いたように立法院における議席数がまるで違うことは、柯文哲自身も最初から納得していたはずだ。

◆米国在台湾協会が柯文哲に「中国の介入があるのではないか説明しろ」と連絡

では、背景には何があったのだろうか?

11月16日、柯文哲は<中共が「藍白合作」に介入しているのではないか、説明しろとAITから連絡があったと暴露>という見出しの番組で、真相を暴露している。他の多くの台湾情報も、柯文哲が「いつもAITから連絡が来るので、毎日のように報告しなければならなくて大変だ」とぼやいていると報道している。

AITとはAmerican Institute in Taiwanのことで、漢字で書けば「米国在台湾協会」だ。米国在台湾協会は1979年に「中華民国」と正式に国交を断絶したアメリカが、台北に設置した「大使館」に代わる組織である。台湾は与党であれ野党であれ、政党はすべて米国在台湾協会によって監視されているようなもので、言うならば、まるでアメリカの植民地下に置かれていると言っても過言ではない。

柯文哲も上記のテレビ番組で、「アメリカは台湾の最も強烈な同盟国のような存在だから、言うことを聞かないわけにはいかない」という趣旨のことを言っている。

重要なポイントは、この時の柯文哲の表情だ。

いつも通り、明るく早口で勢いよく喋っている。

この時は既に「藍白合作」に同意したことを発表した後なので、「藍白合作」を嫌がっているとは思いにくい。最初に書いたような理由で、侯友宜が総統候補になり、柯文哲が副総統候補になることぐらいは最初から分かっていたはずで、それを嫌がっているとは思いにくい。

ならば、なぜここまで苦しい表情に変化してしまったのだろうか?

◆バイデンは米中首脳会談の直前に「藍白合作」決定を知った

11月16日のアメリカのRFA(Radio Free Asia)は<バイデンは、中国が台湾の選挙に介入することを懸念している 台湾の「藍白合作」は誰に有利なのか?>というタイトルで、バイデンがサンフランシスコにおける米中首脳会談の直前に、台湾野党の「藍白合作」決定が発表されたのを知ったことをつぶさに報道している。

それによれば、バイデンは米中首脳会談後に記者会見を開き、ブルームバーグの記者の「バイデン大統領は中国に対して台湾の選挙に干渉しないよう警告しているようですが、中国が介入した場合、どのような結果になるのでしょうか」という質問に対して、バイデンは「台湾総統選への中国による介入はないだろうと思うよ。会談の退席時に、私はちゃんと(習近平に)釘を刺しておいたから」と述べたという。

これは何を意味しているのだろうか?

米中首脳会談が終わると、ホワイトハウスは米国在台湾協会に「きちんとやれ」という指示をさらに出してきているということだろうか?その結果、新たに激しく柯文哲に連絡してきて、「藍白合作」をやめろと威嚇してきたことを示唆するのかもしれない。「もう中国は介入できない」とバイデンが思わず言ったのだから、そういうことなのではないかと解釈される。

あれだけ習近平との会談を望み、会談ではニコニコとお愛想を振りまいても、会談後の記者会見でバイデンは「習近平は独裁者だ」と平気で言ってブリンケン国務長官をヤキモキさせたくらいだ。特定のことを暗示できるような言葉を軽口で喋ってしまうのがバイデンである。「もう中国は介入できない」ということは、米国在台湾協会がしっかり柯文哲に言って聞かせたから大丈夫と言う意味だと解釈してもいいだろう。

そのため、「藍白合作」発表直後に出演したテレビでは、あんなに勢いよく、いつもの柯文哲らしい早口で明るく喋っていたのに、18日朝には「聯合早報」に掲載されている表情のようになったのではないかと思われるのである。

柯文哲が米国在台湾協会から何度も連絡を受け、時々刻々の変化を報告しているという事実は他の多くの台湾情報にもある。このようにアメリカは台湾の選挙に介入するどころか、選挙を直接コントロールしている。

拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』に多くのデータを掲載したように、アメリカは「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)を遣って世界中のありとあらゆる「アメリカに従属的でない国」の選挙に介入しては、他国の政府を転覆させてきた。その結果、間断なく戦争を煽っている。その一覧表も拙著に数多く載せている。

最後には台湾を通してアメリカのその爪牙(そうが)が日本に向けられるのではないかと憂う。

なお、「藍白合作」のゆくえはどうなるのかは、届け出最終日である11月24日まで待とう。国民党の長老、王金平氏は、無党派の郭台銘候補に対して「国民党に戻っておいでよ」と呼びかけることにしているらしい。成り行きを見極めたい。

この論考はYahooから転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。2024年6月初旬に『嗤(わら)う習近平の白い牙』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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