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感染爆発する中国で1日の死者数「0-5人」の怪
コロナが感染拡大する中国(写真:ロイター/アフロ)
コロナが感染拡大する中国(写真:ロイター/アフロ)

総人口14億人の80%がコロナ感染しているという中国の専門家の予測がある一方、1日のコロナ感染死者数は中国政府発表で「0-5人」が続いている。あり得ない!何が起きているのか?

◆たとえば1月2日のコロナ感染死者数「3人」と中国政府発表

2022年12月25日、中国の国家衛生健康委員会は、この日からコロナ感染状況を国家衛生健康委員会ではなく中国疾病予防制御センター(Chinese Center For Disease Control and Prevention=CCDC)が発表すると告知した。そこには「参考と研究の使用に供するために」と書いてある。

そして、その日から事実、コロナ感染に関するデータは、すべてCCDCのウェブサイトに発表されている。

その中の一つ、2023年1月3日の発表を見ると、以下のように書いてある。

  • 1月2日0—24時、31の省・自治区・直轄市および新疆生産建設兵団の報告によれば、新規感染者は(全国で)4833症例。
  • 海外から入って来た症例は29で、国内発生は4804症例。
  • 新規死亡者数は3人。

3人?

1月2日には3人しか新規死亡者はいなかったということになる。

1月2日のコラム<中国、コロナ感染の出口は?>に書いたように、2022年12月23日の中国の情報<多くの地域でコロナ感染ピークが来る>には「コロナ感染率は多くの地域で80%に達するだろう」と書いてある。この80%は地域や時期により異なり、35%という数値を挙げる学者もいるが、いずれにせよ罹患者は「数億人」という単位であるはずだ。

それなのに、CCDCのデータを見ると、12月15日から順にコロナ感染による中国全土の死者数は以下のようになっている。

2022年12月14日 0人/12月15日 0人/12月16日 0人/12月17日 0人/12月18日 2人/12月19日 5人/12月20日 0人/12月21日 0人/12月22日 0人/12月23日 0人/12月24日 0人/12月25日 0人/12月26日 1人/12月27日 3人/12月28日 1人/12月29日 1人/12月30日 1人/12月31日 1人

2023年1月1日 1人/1月2日 3人/1月3日 5人

いくら何でも、あり得ないだろう!

いったい何が起きているのだろうか?

◆中国のコロナ感染者の統計の取り方

まず、昨年12月7日に公布された「新十条」では、大規模なPCR検査をしないと宣言した。この第二条には、「従来の行政区域全てで全員にPCR検査をするのをやめ、ごく一部の縮小した範囲内で行い、回数も減らす」とある。

なぜか?

これまで中国で大規模なPCR検査ができたのは、「10人分の検体を1つの試験管にまとめて検査する」方式だったからで、その中に少しでも陽性者がいれば、その10人を個別に検査するというやり方だった。これはコスト削減のための方法だったが、オミクロン株BF.7のように感染力が極端に速いと、この方法は採用できなくなる。

なぜなら大規模感染だと、たとえば30%の人が感染すると考えた場合、10人分の検体で陽性の確率は97%になってしまうので、結局全員個別に検査しなければならないという事態になるからだ。となると、まとめて検査する意味はなくなってしまう。

そこで中国政府は、PCR検査に割り当てる時間と経費と人的資源を、重症患者の救助に割り当てる方が合理的だと判断したわけだ。

PCR検査をしないのなら、誰が陽性になっているか分からない。

だから国家衛生健康委員会は、統計を取るのをやめて、CCDCに「研究と参考に供するために」統計を取らせることにした。

コロナに罹ったらしいと思う個人は、特に重い症状が出ない限りは病院に行って診断を受けるわけでなく、一般に自宅で静かに療養している。中央テレビ局CCTVでは、毎日のように「水分を十分に取って、新鮮な野菜や果物も摂取するように心掛け、のどの痛い人は漢方薬の○○を服用するのも悪くない・・・」などを繰り返している。

中には抗原検査キットを購入して自宅で検査することもあるが、抗原検査キットの正確率は微妙な上に、現状では購入は難しい。そんなわけで日本の解熱剤や風邪薬に人気が集まっているという状況もある。

いずれにせよ、病院にでも行かない限り、統計には引っかかってこないので、罹患者の数は極端に少なくなる。

おまけに罹患しても、持病があって亡くなった人は、「コロナ感染による死者」の中にはカウントしないと、国家衛生健康委員会が宣言している。病院側も死亡した人の診断書を詳細に区別して分析する時間などはなく、まだ生存している人、あるいは助かる見込みのある人の救助に力を注いでいる状況だ。それくらい感染者が多いということでもある。

1月3日の人民日報・上海チャンネルの大東江は、上海市だけに限るなら市民の70%は感染しているだろうという専門家の見解を載せている。

拙著『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』の【第五章 ゼロコロナ政策を解除すると死者多数】に書いたように、中国の医療資源には限界がある。コロナ感染者の98%が軽症か無症状者と言っても、中国は14億の人口を抱えている。第五章で詳述した「3ヵ月で160万人の死者」とまではいかないとしても、それなりの人数にはなるだろう。

統計が取れない状況があることを理由に、統計の取り方を意図的に操作するやり方は滑稽でさえある。

昨年12月半ばころだったろうか。

コロナ感染関連当局の記者会見場で、中国人記者の「昨日のコロナ感染による死者は何人でしたか?」という質問に対して、政府側の担当者が「昨日のコロナ感染による死者数は・・・」と言い始めると、会場が張りつめた。担当者が間(ま)をおいて「・・・ゼロでした」と言った瞬間、全ての記者のパソコンを打つ手や筆記している手が止まり、全員が顔を上げた。

まるで静止画面を見ているような、その凍り付いた空気の中で、侮蔑と不信に満ちた中国人記者たちの目線がマスクの上で鋭く光った。その目線をCCTVがクローズアップして画面いっぱいに映し出したのが、深く印象に残る。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(2022年12月中旬発売。PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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