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中国、コロナ感染の出口は?
中国新型コロナ感染症(写真:ロイター/アフロ)
中国新型コロナ感染症(写真:ロイター/アフロ)

感染拡大が激化している中国だが、コロナ関係の専門家はコロナ感染のピーク時期は春節(1月22日)明け前後で、3月上旬には安定した状況になるだろうと予測している。中国政府はそれに沿って政策を調整している。

◆中国外交部の発言

中国の春節は1月22日で、2月5日の元宵節までが春節休暇期間となる。中国のコロナ関係専門家らは、おおむねこの休暇期間にコロナ感染のピークが来て、3月に入ると安定していくだろうと見ている。それも地域によってピーク時期が異なるというのがおおかたの意見だ。中国政府は専門家の見解に基づいた国家衛生健康委員会の判断を、国務院聯合防疫制御メカニズムに反映させてコロナ政策を決定している。

それを大前提として、昨年12月28日に外交部が定例記者会見で外交部報道官(汪文斌)は以下のように回答している。

CCTV記者:一部の西側メディアは最近、中国のコロナ防疫制御政策の調整を信用できず、中国は疫病との戦いに失敗したと主張していますが、これについて、どのように考えていますか?

汪文斌:あなたが提起した論調は、偏見・マスコミ操作・中傷など、下心のある政治的操作に満ちています。(中略) 世界規模で見ると、今のところ中国の(コロナ感染による)重症化率と死亡率は最も低いというデータが出ています。(中略)現在、オミクロン突然変異株の病原性と毒性は著しく弱体化しており、わが国の医療、病原体の検出、ワクチン接種などの能力は向上し続けています。

中国は率先して状況に応じて防疫措置を最適化し、「20ヵ条の措置」と「新十条」の最適化措置などを連続して発行し、新しいコロナウイルス感染を「乙類甲管」から「乙類乙管」に移行させ、重点を感染予防・抑制から重症化予防・健康管理へと徐々に移しています。これは科学的かつ(ウイルスの変化と感染状況に沿った)臨機応変の対応で必要なことです。

目的は、人民の生命安全と健康を最大限に保障することにあり、コロナ感染が経済社会発展に及ぼす影響を最小限に抑えることにあります。

世界のすべての国は、防疫政策を調整する際に適応期間を経るが、中国の防疫政策の「ギア・チェンジ」も例外ではない。現在、中国のコロナ感染の進展は総体的に予期されており、制御可能です。北京は既に最初に流行のピークを過ぎ、生産と生活は徐々に正常に戻りつつあります。中国の関連部門はまた、他の省や市での流行のピークの可能性について科学的評価を行い、必要な準備を整えており、調整への移行が円滑かつ秩序正しく進行していることに十分な確信を持っています。

◆コロナ感染ピーク時期に関する中国のコロナ関係専門家の見解

中国におけるコロナ関係の専門家たちの意見は、数多く公開されているが、その中のいくつかをピックアップしてみたい。

例1:2022年12月11日の第一財経は、中国一の公衆衛生学者である鍾南山(国家衛生健康委員会専門家グループ長)チームの見解を紹介している。それによれば、以下のようになるだろうとのこと。

――鍾南山チームの1人であり、広州呼吸器衛生研究所の副所長兼国家重点研究所の副所長である楊子峰は「伝染動力学(ダイナミックス)モデルと人工知能アルゴリズムを結合したモデル観測に基づき、コロナに対する科学的警告と予測を実現させることができる」と述べた上で、「このモデルによれば、1日あたりの感染者数のピークは2023年の1月末と2月に現れる。3月初めから3月上旬にかけて比較的安定した段階に入ると考えられる」としている。

例2:2022年12月20日、「北晩オンライン」は<各地のコロナ感染ピークはいつ頃か>というタイトルで、人民日報健康客戸端(ユーザー端末)の情報を転載している。人民日報の情報はやたら縦に長いので、それを二分割して横に並べると、以下のようになる。

人民日報健康客戸端(2022-12-20)を筆者編集

それによれば、すでに12月15日にピークを迎えたところもあるが、やはり多くは2023年1月がピークで、広州での感染は2023年1月初旬にピークを迎えるとのこと。浙江省、江西省、山東省、河南省など多くの地域でも早くから1月に集中すると予測されていた。

例3:2022年12月23日には<多くの地域でコロナ感染ピークが来る>という情報が、海南省・江西省・山東省青島市・安徽省・四川省成都市など、さまざまな地方政府の関連部門によって発表された。ここには「江西省は2023年1月上旬にピークに達し、3月上旬に安定する」とか「コロナ感染率は多くの地域で80%に達するだろう」といった情報が書かれている。

◆コロナ感染ピーク時期マップ

こういった数多くの情報をつなぎながら、昨年12月15日ごろには以下のような「コロナ感染ピーク時期マップ」が作成されていった。

出典:中国のネット情報

このマップは、ネット検索頻度に基づいた予測が軸になっているので、予測時期の「揺らぎ」は一定程度想定される。たとえば、コロナ感染が拡大している時に、人々がネットで「発熱」という言葉を検索する傾向にあるが、その検索頻度が高い地域を感染拡大地域と定義するというような要素が入っている。したがって、中国政府側が政府の情報として発信したものではないが、それでも大きく信憑性を損ねるものではなく、国内移動を考える際に便利なので、中国の人々の間では、この感染ピーク時期マップが人気を博している。

◆習近平が新年の挨拶でコロナ感染に関し「夜明けは目の前にある」と

習近平は12月31日夜、恒例の新年の挨拶を発表し、中央テレビ局CCTVを通して全国に報道された。習近平はコロナ感染に関して以下のように述べている。主要部分だけを抜き出して記す。

  • 広大な幹部や民衆、特に医療従事者と社会インフラを支える従事者たちは、困難を恐れず、勇気を持って耐えてきました。たゆまぬ壮絶な努力の末、誰にとっても容易ではない未曾有の困難や試練を乗り越え勝利しました。
  • しかし現在はまた、コロナの防疫は新たな段階に入り、まだ一頑張りしなければならない時に差し掛かっています。それでも皆がどこまでも忍耐強く努力すれば、夜明けは目の前にあります。皆さん、あともう一歩、頑張りましょう。めげずに粘り強く頑張ることが勝利を導き、団結こそが勝利を導くのです。

◆それでも死者数は少なくないはず

拙著『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』【第五章 ゼロコロナ政策を解除すると死者多数】で述べたように、中国は医療資源の分布がまばらで欠如しているため、3月当時のウイルスの種類と統計に基づくシミュレーションではあるが、「3ヶ月で160万人が死亡する」というデータが出ていた。

現在は、昨年12月27日のコラム<コロナ感染者優先雇用と中国コロナ政策大転換!コロナが肺炎を起こさない?>に書いたように、主流となっているオミクロン株BF.7は、感染しても無症状&軽症が全体の98%を占めているということのようである。おまけに、症状が出たとしても「上気道」までしか侵されず、肺への炎症まで行かないのが特徴であるという。中国で現在流行しているオミクロン株の他の系列に関しても、その傾向はあまり変わらないとのこと。

だから「新型コロナウイルス肺炎」から「新型コロナウイルス感染症」へと名称を変えたほどだ(これが冒頭の外交部が言うところの「乙類乙管」である)。

それでもなお、14億人口の2%は何らかの症状があることになる。

2022年3月15日に中国政府が出したコロナ感染の「診療方案」の分類に従えば、症状ありの患者に対して「軽型(肺炎症状なし)・普通型(肺炎症状あり)・重型(血液の酸素飽和度が93%以下など)・危重型(ショック症状・ICUが必要など)」などに分けられているので、コロナが「乙類乙管」となった現在では、専門家による新たな「診療方案」分類が必要だ。

しかしその道の専門家でなくとも常識的に考えて、「2%」の中には「普通型」が相当数いるはずで、「重型・危重型」は多くはないだろうことが推測される。それでも人口が14億人であることを考えると、相当数の死亡者が出るのもまた、十分に予測できる。

だからと言って、感染力が極端に高く、重症化率が低い種類のウイルスが中国全土を覆っている現状で、厳しいゼロコロナ政策を継続するのはあり得ない話だ。

したがって「新十条」(詳細は昨年12月26日のコラム<怪文書「中国コロナ感染2.48億人」を追いかけて感染爆発の謎が解けた>を参照)を発布したわけだ。

こういう背景も研究せずに、日本では「白紙運動」に圧(お)されて習近平がゼロコロナ政策を放棄したと、「白紙運動」に対して短絡的に拍手喝采を送っているが、だとすれば今後2ヵ月間ほどで出てくる膨大な犠牲者は、白紙運動が招いたことにつながるということになる。それはどう考えるつもりなのか?

そもそも中国共産党が「白紙運動」ごときの動きで政策を転換するなどと考えるのは、あまりに中国共産党支配のイロハを知らなすぎる。

1948年に餓死体の上で野宿し(参照:『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』)、以来、中国共産党支配とは何かを追い続けてきた筆者にとって、日本のメディアや評論家あるいは「中国問題専門家」のいい加減さ、甘さは、危険とさえ映る。その危険さは、やがて日本国民の不利益として降りかかってくることを肝に銘じるべきだ。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(2022年12月中旬発売。PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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