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コロナ感染者優先雇用と中国コロナ政策大転換!コロナが肺炎を起こさない?
筆者作成
筆者作成

中国にコロナ感染者優先雇用求人広告が現れたので、その真相を追いかけていたところ、突然、中国政府が「現在のコロナウイルスでは肺炎を起こさないので、正式病名から【肺炎】を削除する」と言っているという情報にぶつかった。

◆コロナ感染(経験)者を優先雇用します!

12月21日の杭州網というウェブサイトは、<「陽過(コロナが陽性になったことがある人)を優先的に採用します」という求人広告を出す企業が>という趣旨のタイトルで、これまでコロナ感染経験者を嫌う求人とは逆行する現象が出てきたことを報道している。

「陽過」は中国語で[yang-guo](ヤン・グォ)と発音するが、これは「陽性になったことがある人」という意味で、「コロナ感染をした人」ということを指す。中国語では「陽性になった」を「陽了」(ヤン・ラ)と表現することが多い。

この報道は、以下のような求人広告の例を挙げて、現状を説明している。

●河北省石家庄のホテルのフロントの求人広告

「基本的なパソコン操作ができること」や「陽過は優先的に採用」などの条件が書かれている。ホテルのスタッフは、「私たちの多くはすでに“陽了”なので、応募者が“陽過”でないのなら、感染した時は仕事を休まなければならなくなりますから、“陽過”の人でないと採用したくないのです」と言っている。

●北京のケータリング会社の求人広告

同社のチェーン店は、合計で300人ほどのスタッフを募集しているが、「コロナ感染回復者を優先的に雇用する」という広告を出している。同社は、これ以前にも「オミクロン感染回復者を優先的に採用する」という求人広告を出したこともある。

●甘粛省蘭州市にあるレストランのシェフの求人広告

応募条件に「陽過」または「現在陽性」を優先すると書いている。スタッフは「もちろん応募者が健康であるか否かとか、実務経験があるか否かなどをチェックします」と言っている。にもかかわらず、「陽過」優先などの採用条件は、SNSサイトで頻繁に見い出すことができる。

杭州網のこの報道では、ほかにも人権問題に関して触れ、コロナに感染しているか否かで差別するのは雇用法上、あってはならないことだという、法治側からの意見も掲載している。本稿では人権問題に関しては触れない。

◆現在陽性を含むコロナ感染経験者を優先的に採用する求人広告の画像

以下に示すのは、中国のネットから集めてみた「コロナ感染経験者優先」や「現在コロナ陽性を優先」などが書いてある求人広告の画像である。

筆者作成

画像をご覧いただくと、信憑性がいくらか増すのではないかと思う。

この背景には、コロナがここまで拡散しているので、「罹ってしまった方が得」とでも言っていいほどの、これまでの規制下では考えられないような現象が起きているということがある。

もう一つは採用してから感染されたら、そのために欠勤することになるので、店が回らなくなっていくから困るという雇用者側の都合もあるようだ。

そのほか、「人手不足」という問題が横たわっているが、それ以上に中国で流行中のコロナウイルスが肺炎を引き起こさず、軽症であることも影響しているのだろう。

この考えられないような「コロナ感染者優先」という求人広告を追いかけていた昨夜、夜半、中国が遂にコロナの名称を変えるというニュースがスマホに飛び込んできた。

ビッグニュースだ!

その前に、人手不足による年末年始や春節期間の優遇策に関してご紹介したい。

◆人手不足から「コロナでも軽症なら出勤せよ」

12月25日の新華社上海は、<上海は、宅配業者やデリバリーサービスのスタッフに雇用補助金を段階的に支給する>というタイトルで、上海が2022年12月25日から2023年1月27日までの間に、関係業種のスタッフに補助金を支給する政策を発表したと書いている。年末年始の休暇(2022年12月31日至2023年1月2日)や来年の春節の休暇期間(2023年1月21日至1月27日)中にも働いてもらうために、その間は1人1日150元(2864日本円)を特別に給付するとも通知している。背景にあるのは「人手不足」だ。

同じくこの人手不足が原因で、コロナに感染していても軽症か無症状なら、そのまま出勤せよと奨励する地方政府もある。

たとえば重慶市の場合、12月18日に<重慶市は防疫の最適化を一歩深め、(コロナ感染していても)無症状あるいは軽症の者は通常通り出勤せよ>という旨の通知を出している。重慶市以外にも、浙江省や安徽省蕪湖市などもつぎつぎと同様の指示を出している。

こんなことをして大丈夫なのかと思うが、中国ではオミクロン株のBF.7は軽症か無症状者が多いと言われている。

◆中国の医学者が「オミクロン株のBF.7は軽症か無症状が98%」

12月12日、中国中央テレビ局CCTVの解説を元にした<オミクロン株のウイルスの強さ(毒性)と感染力>を考察した中国の専門家の記事が、文字起こしした形で報道された。関心を持っている事実にのみフォーカスして現象論的に言うならば、「現在、北京などで主流となっているBF.7は、感染しても無症状&軽症が全体の98%を占めている」ということのようである。

おまけに、症状が出たとしても「上気道」までしか侵されず、肺への炎症まで行かないのが特徴であるという。中国で現在流行しているオミクロン株の他の系列に関しても、その傾向はあまり変わらないとのこと。

解説した専門家は、北京市呼吸疾病研究所の童朝暉(どう・ちょうき)所長だ。

◆中国政府がコロナの病名変更――病名から「肺炎」を削除する!

もう、何が何だか分からなくなり、論理の整合性を求めて悪戦苦闘していた私のスマホに、26日から27日にかけての夜半に、「中国政府がコロナの病名を変更することが決まった。2023年1月8日から、肺炎の二文字を削除する!」というウェイボー(weibo)の知らせが入ってきた。

なに―――?!

待ってくれ……

あわててパソコンでネット検索すると、なんと、中華人民共和国国家衛生健康委員会のウェブサイトに「発布時間: 2022-12-26」で、「2022年第7号」公告が発布されているのを発見したのである。そこには以下のようなことが書いてある。

一、新型コロナウイルス肺炎を新型コロナウイルス感染症に改名する。

二、国務院の批准を得て、2023 年 1 月 8 日から、「中華人民共和国伝染病防治法」で規定されている甲類伝染病予防措置を解除するとともに、新型コロナウイルス感染は「中華人民共和国国境衛生疫法」が規定する検疫伝染病管理の範疇からも除外するものとする。

以上だ。

筆者が分析できるのは、社会的現象だけである。それ以外の専門的な分析に関しては、是非とも日本のウイルス学者や感染症学者たちが、専門的見地から分析を進めて頂きたいと強く期待する。

日本と中国では、コロナに関して異なる規制や条件の下で時間が経緯していったので、きっと中国では大丈夫でも日本では通用しないような要素もあるかもしれない。その辺も含めて分析していただけると、非常にありがたい。楽しみに期待している。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。7月初旬に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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