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中国はなぜ台湾包囲実弾軍事演習を延長したのか?中国政府元高官を単独取材
台湾軍、台湾南部で軍事演習。8月9日、中国軍の上陸を想定して。(写真:ロイター/アフロ)
台湾軍、台湾南部で軍事演習。8月9日、中国軍の上陸を想定して。(写真:ロイター/アフロ)

本来8月3日から7日までとした台湾包囲実弾軍事演習を、中国軍は8月9日まで継続して行った。なぜ延長したのかを中国政府元高官に単独取材して、中国の本音を引き出した。

◆8月10日に東部戦区連合軍事演習完了を宣言

8月10日、中国人民解放軍東部戦区のスポークスマンである施毅陸軍上級大佐は<東部戦区が台湾島周辺海空域で組織した連合軍事行動は、成功裡に各任務を完了した>と宣言した。

施毅は「最近、台湾島周辺海空域で行ったさまざまな種類の部隊が系列的に連合した軍事行動は、成功裡に各項目にわたる任務を完了し、部隊が一体化して連合同時作戦を断行する能力を、非常に効果的に検証することができた。今後、東部戦区部隊は、台湾海峡情勢の変化を常に緊張して注視し、引き続き軍事訓練と戦闘準備を展開し、台湾海峡の戦闘準備警巡(警戒パトロール)を常態化させ、国家の主権と領土保全を断固として守る」と語った。

◆なぜ延長したか:中国政府元高官を単独取材

10日に軍事行動完了の宣言をしたのだから、8日と9日の二日間、本来の実弾軍事演習の日程終了を延長して継続的に軍事演習を行なったことになる。

実弾軍事演習を実行している限り、その海空域への立ち入りが禁止されるのだから、台湾だけでなく、台湾と交易を行う他の関係国への被害は甚大だ。

特に今回の包囲網の一部は日本のEEZ(排他的経済水域)をも含んでいるので、日本の漁業関係者にとっては、とんでもない損害を与えられる結果を招いた。

この2日間の延長に関して、中国政府は理由を公表していない。

そこで中国政府元高官を単独取材して聞き出した。以下、Qは筆者、Aは中国政府元高官である。

Q:なぜ、初期の予定を変更して延長したのですか?

A:そりゃ、当然だ。中国が軍事演習を始めた3日の後になって、アメリカの国家安全保障会議の(戦略通信コーディネーターである)ジョン・カービーというヤツが4日、「ワシントンは今後数週間で台湾海峡を通過する標準的な空と海の横断作戦も実施する」と言っただろう?

Q:そうですね。たしかにそう言っていました。彼は当時、国防長官のオースティンがレーガン号とその攻撃グループの軍艦に「状況を監視する」ために近くに留まるよう指示したと述べていますね。

A:ほら、そうだろう?アメリカの国防総省は、8日、「米軍は今後数週間で台湾海峡を通過する」と主張しただけでなく、「同盟国とパートナーへの支援」を示すために他の地域でも「航行の自由作戦」を実施すると発表してるんだよ。アメリカは1972年の時点では、自国の都合から「一つの中国」を認めて、いわゆる「中華民国」と国交断絶をしながら、今になって中国がアメリカを超えるほど強くなるのを恐れて、中国に対して内政干渉をしてくる。

Q:たしかに積極的に毛沢東の中国に接近してきたのはアメリカですから、あのときアメリカこそが自然な流れの国際秩序を乱したと私は思っています。

A:おまけにだね、あの生意気なコリン・カール国防次官は8日、「アメリカ政府は中国が台湾を軍事的に占領する可能性に関する見通しを変えていない」と言いながら、「中国が向こう2年以内に台湾占領を試みることはない」という見解を示している。それでいながら「米軍が向こう数週間以内に台湾海峡通過を実施する」と言ってるだろ?それを阻止しないわけにはいかないのさ。

Q:だから軍事演習を延長したのですか?

A:そうだ。それが最も大きな原因だ。

Q:では、アメリカの空母レーガン号が台湾海峡を通過することに対抗するためということになりますか?

A:対抗ではない!阻止だ!アメリカの他国への内政干渉を阻止するためだ。そもそも台湾海峡の「中間線」など中国は認めていない。そんなものは存在しない。台湾は「一つの中国」の中の領土の一つで、アメリカは「中国を代表する国としては唯一、中華人民共和国しかない」と認めて「中華民国」と国交断絶しておきながら、中国の領土主権を脅かす行為など、絶対に中国人民は許さない!

◆ペロシ訪台により中国人民の愛国心は一つになり、習近平の求心力は高まった

Q:14億の中国人民は許さない」という言葉は、習近平がバイデンとの電話会談の時にも使った言葉ですが、このたびのペロシ下院議長の訪台によって、中国人民は結束を強めたと思いますか?

A:もちろんだ!国内における、どんなスローガンよりも中国人民の心を一つにさせて、熱く燃え上がらせた。台湾島における軍事演習の模様は、多くの中国人民の眼球を惹きつけ、仕事にならないほどレーガン号の航路を追い続けて、それは凄かった。誰もが自然に「中国軍、頑張れ!」という気持ちになる。

Q:では、習近平の求心力は高まったということになりますか?

A:もちろんだ!一気に高まった。習近平のもとで心を一つにしていないと中国はアメリカにやられるという気持ちが高まって、軍の最高指導者としての習近平への声援が高まるのは当然だろう。

◆台湾国軍の反上陸射撃訓練と中国人民解放軍の上陸軍事演習

Q:中国人民は台湾が嫌いですか?

A:嫌いなわけがないだろう。台湾人は我が同胞だ。しかし蔡英文がいけない。彼女はアメリカに追随して、台湾人民の経済を圧迫するだけでなく、危険にさらしている。現に、台湾の国軍は9日から中国人民解放軍に対する「反上陸射撃訓練」を始めている。

Q:だから山東省の連雲港や大連などで、浜辺に近いところで上陸実弾軍事演習をしたと考えていいですか?

A:そう解釈しても構わない。

Q:実は私は日本語のコラムで、あれは台湾包囲実弾軍事演習の「上陸部分」を補うための軍事演習だと書いたのですが、それで正しかったかしら?(参照:8月9日のコラム<中国軍は台湾包囲実弾軍事演習と同時に「上陸演習」も実施していた>

A:ほう、それは珍しい。外国人で、それを読み解いている人はいないんじゃないかな?

Q:まちがってはいなかったようで、安心しました。

中国政府元高官との話は延々と続き、このあとは、台湾の半導体の問題とアメリカの半導体同盟形成や台湾政策など、種々のテーマに関して、中国側の考えを引き出した。それらに関しては、追って一つずつご紹介したいと思っている。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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