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中国ネットの軍事オタク動画「4線1点」日本攻略に引っかかるな
出典:中国の軍事オタク「六軍」が創作した動画の中の「4線1点」日本攻略地図
出典:中国の軍事オタク「六軍」が創作した動画の中の「4線1点」日本攻略地図

アクセス数を増やして金稼ぎをするため、軍事オタクが制作した「4線1点」日本攻略動画が中国のネットで見受けられるが、日本の軍事ジャーナリストなどが引っかかっていることを知った。注意を喚起したい。

◆中国ネットの軍事オタクが出現する背景

中国には約10億人のネット民(ネットユーザー)がいて、2021年6月のデータによれば、30-39歳のネット民の占める割合が20.3%で、全ての年齢層の中で最も多い。逆算すれば1983年から1992年に生まれた人たちで、拙著『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』で考察した、いわゆる「80后(バーリンホウ)」が主たる構成要素を成す。彼ら彼女らは、物心ついた時から日本の動漫(アニメ=動画や漫画)に魅せられて育ったが、同時に1994年に江沢民が始めた「愛国主義教育」に染まってもおり、複雑なダブルスタンダードを持つ。

40-49歳群と20-29歳群は、それぞれ18.7%および17.4%で、「80后」以降は合計37.7%。約4億人だ。その前後の年齢層も含めれば6億人前後はいるだろうから、その中に「日本軍憎し!」というタイプの軍事オタク群が出てきても不思議ではない。

言論の自由のない中国では、政府が愛国主義を植え付けたのだから、愛国主義に基づく言動なら政府は罰することができないはずだと言わんばかりに、「日本を攻略するための動画」を制作する熱狂的軍事オタク群がネット界で大活躍している。

アクセス数が多いと、その分だけお金が入るので、若者は「できるだけ過激で、耳目を惹きつける動画」を制作しようと競っている。

◆軍事オタク「六軍韜略」が制作した「4線1点」日本攻略とは?

その中の一人に「六軍韜略」というハンドルネームを持った軍事オタク(以下、「六軍」と略記)がいて、自己紹介として自ら「認証:有名な軍事領域創作者(=有名な軍事オタク)」と書いている。

六軍は7月17日に、<「4線1点」戦略を強化し、日本の「現実の軍国主義」の傲慢な気勢を効果的に威嚇抑止しよう>という動画を公開した。概ね以下のような内容だ。

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皆さん、六軍戦略へようこそ!

今日のテーマは「現在日本で進んでいる軍国主義をやっつけるために、4つの海峡を攻略し1つの頭(東京)を打ち砕く戦略」に関して説明する。

日本ではアメリカの支援と激励により、軍国主義が横行している。日本は平和主義憲法を改正し、「普通の国」になることで、「真の軍国主義」に向けて一歩一歩進んでいる。日本は「台湾有事は日本有事」とみなしており、バイデンの手先となって台湾問題に露骨に干渉することをいとわない。中国が台湾を統一する際には、日本の軍事介入を考慮しなければならない。

この1か月ほど、中国海軍の動きが日本全国を揺るがし、日本の野心を効果的に阻止している。日本の防衛省は6月30日、「6月12日から6月29日まで、中国は055駆逐艦、052駆逐艦、および補給艦からなる編隊が日本本島を迂回した」と発表した。6月26日、中国海軍の電子偵察艦が、伊豆諸島の八丈島と溝島の間の御蔵島周辺を初めて航海したが、この場所は日本の首都である東京から400キロも離れておらず、中国の軍艦が東京のど真ん中にこれほど近づいたことはない。

中国海軍の密集行動とは、何を指しているのか?

岸田文雄が政権を掌握して以来、特に最近では、一連の反中言動が際立っており、たとえばNATO加盟、NATOのアジア版設立、日米韓の同盟関係強化などを通して、日本は中国・ロシア・北朝鮮を威嚇したり、台湾問題に介入しようとしたりしている。

したがって、もし日本が台湾海峡の戦場に軍事的に介入するような真似をした場合には、中国の反撃は首都東京を含む日本全土であることを日本に警告することを意味している。中国海軍の第一段階の行動は、日本の4つの海峡をがんじがらめにして、その後東京という頭を打ち砕くという致命的な軍事演習版だと思え。

具体的な方法は以下の通りだ。

出典:中国の軍事オタク「六軍」が示した地図

一、対馬海峡を押さえる。ここはは西海岸にいる日本の軍隊が南下する通路であり、日米海兵隊佐世保基地も近くにある。今年の前半、日本陸軍は、主に対馬海峡に沿って日本海に出て、南西の島々を強化するために全地域の軍事演習を実施した。

二、津軽海峡を絞めつけて北海道を遮断する。昨年10月には、中露海軍十数隻以上の艦隊が津軽を通過したが、日本は不安を感じているだろう。

三、本島の北端、北方領土南部からそう遠くないところにある宗谷海峡を押さえること。中露海軍と空軍が同時に宗谷海峡と津軽海峡に入ると、日本は北方4島どころか、北海道さえも失うだろう。

四、日本本島の南端に位置する大隅海峡を押さえる。ここには、日本で最大かつ最も重要な2つの米軍基地があり、横須賀と佐世保から選管が東海に出入りするのに最も便利な航路だ。それはまた、南西日本の諸島を連結する重要な航路でもある。大隅海峡の幅はわずか20〜30 kmで、水面と水中の耐航性が高く、中国海軍はこの水路に精通している。戦時中に大隅水路が封鎖された場合、第一列島線に出入りする日米の船に大きな脅威をもたらすだろう。

「頭に一発」とは、日本の首都である東京に向けられた攻撃の矢を指す。中国海軍の最新の815A電子偵察艦は八丈島の海域で偵察し、東京周辺、特に海に面した方向の電磁環境を把握するだろう。

米海軍の横須賀基地は東京湾への玄関口であり、アジア太平洋地域で唯一の米空母の母港でもある。東京を攻撃すれば、横須賀はまちがいなく根こそぎ消滅できる。 中国の潜水艦が八丈島沖で活動するか否かはわからない。しかし、インド太平洋における中国の潜水艦活動の範囲は、電子偵察船に少しも劣らない。

遠くは南太平洋オーストラリアとインド洋に至り、北はベーリング海峡とアリューシャン列島に、そして東は第一列島線までをカバーする。東京湾は中国にこんなに近いのだから、容易に想像がつくだろう。戦争になった時、中国の空母戦闘グループが日本本土を威嚇した場合、八丈島を巡航するのはなかなかに良い選択だ。

***

以上だ。

◆アメリカも騙される中国ネット軍事オタクによる対日攻略動画

2021年7月17日のコラム<「日本が台湾有事に武力介入すれば、中国は日本を核攻撃すべき」という動画がアメリカで拡散>でも、全く同じ人物の軍事オタク「六軍」が制作した動画を紹介したことがある。

これは筆者が関わっているシンクタンク中国問題グローバル研究所に所属するアメリカ側研究員のグループが「大変だ!」として筆者に知らせてきたことから考察したもので、アメリカ側の中国研究者たちは、「だから日本は核を持つべきだ」と筆者に忠告してきた。

いや、これは中国ネットに大勢いる軍事オタクが創作した動画だと知らせることによって、ようやく沙汰やみとなったが、日本では新たに六軍の創作動画に引っかかった軍事ジャーナリストがいるのを知るに至った。

◆信頼できる軍事ジャーナリストまでが引っかかる中国ネット軍事オタクの創作動画

つい先日、台湾に対する中国大陸の実弾軍事演習に関して、某テレビ局の番組にリモート収録で出演したのだが、その番組で、非常に信頼できる日本の軍事ジャーナリストが真剣な表情で、中国のネットには「4線1点」戦略という日本攻略方針が載っていると解説したのを知って驚いた。

中国のネット事情というか社会事情をご存じないのかもしれないが、このように世間から信頼されている軍事ジャーナリストが解説すると、まるでそれが中国政府の方針であるかのごとき印象を視聴者に与えてしまう危険性があるので、その影響の大きさを危惧して、ここに実態をご紹介した。

特に最も怖いのは、日本の国会議員や防衛省関係者が、この軍事ジャーナリストの解説を視聴して「本気にしてしまい」、それに対抗すべく日本の戦略を練ったりすることだ。

やがて、日本のいわゆる「チャイナ・ウォッチャー」が、これを中国軍の隠された戦術として拡散したりする可能性もあり、その前にストップをかけておく必要があるだろう。もっとも、「隠された戦術」ならネット公開したりしないので、冷静に考えれば分かることだとは思うが、念のためにご紹介した次第だ。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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