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中国共産党建党100周年にかける習近平――狙いは鄧小平の希薄化
2021年6月21日
習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)
習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

6月18日、習近平は北京に建てた中国共産党歴史展覧館を視察し、入党の宣誓文を唱えた。キーワードは「不忘初心」。「初心」は毛沢東と父・習仲勲を指す。鄧小平の存在を希薄化し「復讐」を顕し始めた。

◆習近平の展示スペースは鄧小平の3倍

6月18日、習近平国家主席が中共中央総書記としてチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会委員7名)と王岐山国家副主席など、党と国家のリーダーを引き連れて、中国共産党歴史展覧館を視察した。

その様子を中央テレビ局CCTVの夕方のニュース「新聞聯播」が報道した。リンク先の19:02から19:08の6分間ほどをご覧いただきたい。

展覧会場は以下の4つの部分によって構成されている。

  • 第一部分:中国共産党を建立し、新民主主義革命の偉大な勝利を奪取
  • 第二部分:中華人民共和国を建国し、社会主義革命と建設を遂行
  • 第三部分:改革開放を実行し、中国の特色ある社会主義を創出発展
  • 第四部分:中国の特色ある社会主義が新時代に入ることを推進し、小康社会を全面的に建設し、社会主義現代化国家への新しい征途の全面的建設を創始する

第一部分にある「新民主主義革命」というのは毛沢東が目指していた革命で、新中国(中華人民共和国)が誕生したばかりの頃は、毛沢東はまだ「新民主主義体制」の構築を試みていた。なぜなら「中華民国」の蒋介石が、中国共産党を「野党」として政治運営に関わらせなかったので、毛沢東はそれを「非民主主義的だ」として、「民主的に野党も入れて国家運営すべきだ」と主張していた。だから建国当初は野党や無党派が数多く国家指導層に入っていた。

それが第二部分の「社会主義体制」へと転換されていったのは朝鮮戦争が起き、アメリカが中国に原子爆弾を投下する可能性が生まれたからだ。

興味深いのは第三部分だ。

改革開放に触れてはいるが、ここは「鄧小平+江沢民+胡錦涛」3人のコーナーになっていて、大雑把に全体が4分割され、その一つがさらに3分割されているとなると、鄧小平コーナーは全体の「12分の1」ということになる。

しかもCCTVの説明では第三部分に関して「経済特区」という言葉を用いて説明した。

この「経済特区」は習近平の父・習仲勲が思いついた概念だ(詳細は『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』)。

第四部分は、言うまでもなく習近平の独壇場である。

習近平コーナーは4分の1強なので、鄧小平の3倍はあることになる。

鄧小平は毛沢東が指名した後継者・華国鋒を失脚させ、その代わりに就任させた胡耀邦を失脚させ、胡耀邦の代わりに据えた趙紫陽を失脚させたが、彼らを「過渡期の指導者」と位置づけ、毛沢東時代を「革命第一世代」とすれば、その次に来るのは自分・鄧小平であり、自らを「革命第二世代」と位置付けた。

習近平は逆に、この鄧小平を「過渡期の指導者」として「鄧小平+江沢民+胡錦涛」の3人の中に押し込めてしまったのである。

習近平は父・習仲勲を破滅に追いやった鄧小平を絶対に許さないだろう。

しかし鄧小平は日本によって救われ、神格化されてしまった。

すなわち、1989年6月4日の天安門事件に対して西側諸国が断行した対中経済封鎖という制裁を、日本が解除させたことによって、民主を叫ぶ若者を武力で鎮圧したことが免罪され、その後の中国経済の発展を可能ならしめた。

結果、中国を含めた世界各国が、鄧小平の罪悪をサッサと忘れて、「人権を蹂躙してもかまわない。経済を発展させれば功労者」というイメージを広めたので、中国国内でも鄧小平を否定することはなかなかできない状況にあった。

そこで習近平はできるだけ「目立たないように」、「復讐の形」を実現していっている。

この展示コーナーの大小は、工夫に工夫を重ねた結果だとみなすことができよう。

◆「不忘初心」の「初心」が指すのは毛沢東と父・習仲勲

「中国共産党歴史展覧館」の頭には「不忘初心 牢記使命」という8文字がある。

「初心忘るべからず  使命を心に深く刻め」という意味だ。

この「初心」が指すのは、毛沢東と父・習仲勲であると解釈することができる。

なぜなら新中国建国は延安革命根拠地があったからこそ成功したのだが、延安があった陝北革命根拠地(西北革命根拠地)をゼロから築いたのは習仲勲たちだからだ。

しかし鄧小平は、習仲勲らに感謝し西北革命根拠地を重視する毛沢東の目を欺いて陰謀を重ね、習仲勲を失脚へと追い込み、1962年から1978年までの16年間の長きにわたって習仲勲に投獄・軟禁・監視という屈辱の限りを強いた。

鄧小平の陰謀によって、長征(国民党軍から逃れるために、毛沢東率いる中国共産党軍が西北を目指して1934年から1936年にかけて徒歩で1万2500kmを移動)の着地点であった延安の存在が薄められていったと同時に、長征そのものも高く評価されることが少なくなっていた。

毛沢東など、新中国誕生後にただの一度も延安を訪れることがないまま文化大革命に突入してしまい、延安を再訪しないまま生涯を閉じた。

2016年、長征成功の80周年を記念して、習近平は「長征」の存在意義を復活させ、毛沢東が歩んだ重要地点を自ら訪れて、父の故郷陝西省にある延安に戻った。

この時から中国は真っ赤に燃え始める。

習近平は自分を毛沢東に重ねて、「鄧小平を希薄化」しようとしているのである。

しかし、日本によって神格化されてしまった鄧小平をあからさまに希薄化することは、なかなかできない。

中国共産党歴史展覧館における習近平と鄧小平の展示スペースの差は、ようやく鄧小平への復讐を具現化した小さな一歩と解釈することができよう。

7月1日のパレードでは、もう一歩進んだ形での「鄧小平の希薄化」が具現化されるかもしれない。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授、北京大学アジア・アフリカ研究所特約研究員、上海交通大学客員教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗 1月末出版、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文版・英文版もあり)、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Chinese Issue Global Research Institute, Professor Emeritus, Doctor of Science at the University of Tsukuba. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Chazu Chugoku Kenkoku no Zanka (Japanese Girl at the Siege of Changchun) (including Chinese and English versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chaina jajji — Motakuto ni narenakatta otoko (China Judge: The Man Who Couldn’t Become Mao Zedong),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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