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米中貿易額の激増:垣間見えるバイデン政権の本性
激増する米中貿易(写真:AP/アフロ)
激増する米中貿易(写真:AP/アフロ)

5月7日の中国税関総署発表によれば、今年に入ってからの米中貿易額は昨年同期の61.8%増を記録し他国を大きく引き離した。対中強硬姿勢を示す一方で、アメリカは大いに中国からの輸入を増やしている。

◆61.8%増に跳ね上がった米中貿易額

今年5月7日、中国の海関(税関)総署は、「2021年1月から4月までの輸出入主要国別・地域別総額(貿易額)表」を発表した。

あまりに多岐にわたり、表が見づらいので、その中から「貿易高が比較的大きな国・地域」および「同期成長率が比較的大きな国・地域」をいくつか選んで以下に図表化してみた。

図1

2021年1-4月中国対主要経済体の輸出入金額5

中国税関総署が2021年5月7日に発表した「2021年1月~4月の国地域別貿易額」より筆者作成

「オレンジ色の棒グラフ部分は、中国が相手国に輸出した金額」を表し、「青色の棒グラフは、中国が相手国から輸入した物資の金額」を表す。いずれも単位は「億ドル」で左側の縦軸に目盛りを示している。

「赤色の▲は、同時期の前年度比」だ。右側の縦軸に目盛りを示した。

赤の破線は「平均増加率」である。

このグラフでまず目立つのは、アメリカが突出して「一国」として絶対値も大きければ増加率も大きいということだ。

中国税関総署の貿易額表の下にある注記によれば、ASEANとEUの対象国は以下のようになっている。

ASEAN(10カ国):ブルネイ、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
EU(27ヵ国):ベルギー、デンマーク、ドイツ、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、オーストリア、フィンランド、スウェーデン、キプロス、ハンガリー、マルタ、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロベニア、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア

これらの国々の数を考えると、ASEANおよびEUの内の「一国」が占める割合は非常に小さく、中国にとって「アメリカ一国」だけが突出して高い貿易額を占めていることがわかる。

おまけに中国から見た時の輸入より輸出が大きいというのは、米中合意の逆を行っていることになる。

しかも増加率が尋常ではない。

これは何を意味しているのだろうか?

◆アメリカの貿易高が急増した理由

アメリカの対中貿易高だけが突出して大きくなっている理由として、一つには2020年1月15日に発表された米中貿易に関する「第一段階合意」(合意)があることは考えられる。

しかし「合意」は主としてアメリカが中国に対して「米国産の○○を購入しろ」ということを要求するものであって、決して「アメリカが中国産の●●を購入します」ということを中国に対して誓う性格のものではない。

だというのに、図1から明らかなように、中国側から見た対米輸出は、輸入よりも遥かに大きくなっている。しがたって、アメリカが突出している理由に「合意」があるとは考えにくい。アメリカは中国からの物資をより多く受け入れ、購入しているということになる。

中国にとってはなんと「喜ばしいこと」であろうか。

この増加ぶりの要因の一つに、バイデン政権に入ってからワクチン接種が進み、アメリカ経済が回復し始めたことも考えられるが、しかしそれにしてもトランプ政権であった2020年と、バイデン政権に入った2021年で、「増加率が61.8%も跳ね上がった」ことは、ワクチンが効いてきたからということだけでは説明しにくい。

もし、バイデン政権が本気で対中強硬を実施しようと思うのなら、輸入にストップを掛けることだってできたはずだ。しかし、そのようなことをした形跡は全くない。

現実は、勇ましい言葉とは裏腹なのである。行動を伴っていない。

◆インド太平洋QUAD(日米豪印)枠組みはどこに行ったのか?

モリソン首相になり、コロナ発祥の原因調査を独自で行うなどの言動により、中国とは縁を切ったような仲になってしまったと思われるオーストラリアだが、貿易額は32%も増加している。平均増加率よりは小さいので、まあ、それほど大きな貢献をしているとは思えないものの、なかなかに無視できない。

中国とは国境紛争をしているので、アメリカ寄りと思われるインドも、絶対額はそもそも小さいものの、増加率となると63.30%と、どの国よりもダントツに大きい。

アメリカと連携しながら民主主義価値観を標榜する「西側諸国」の代表であるようなイギリスやカナダも、その絶対額はEU諸国の中の一つ同様に大きくはないものの、増加率ときたら、アメリカに劣らず大きい。

では、われらが日本はどうだろうか?

何と言っても日本の最大の貿易相手国は中国だから、中国にとっての「4大貿易相手国・地域」は「ASEAN、EU、アメリカ、日本」で、「一国」としては、アメリカの次に存在感を示している。

日本から見れば対中輸出の方が多く、中国からの輸入は大きくないのは、日本経済がコロナにより打撃を受けていて輸入するゆとりがないからだろう。コロナによる打撃が大きいのは、日本政府の無為無策、右往左往による失政が招いた結果だ。

それでも半導体の需要に応じて、中国における半導体チップ製造に欠かせない半導体製造装置などを、日本はせっせと中国に輸出している。

バイデン政権は対中強硬策の中で「制裁」という手段は使わないとしているが、トランプ政権による「対中制裁」は今も生きており、それまでをも「取り消す」とは言っていないので、中国は半導体チップ製造に相当に苦労している。

しかし電気自動車製造に欠かせない28nm(ナノメータ)級の半導体はエンティティ・リストに入っていなかったので、台湾のTSMC南京工場は「制裁」に引っかかることなく稼働し、どんどん投資を増やしているような始末だ。28nmに関しては中国のSMIC(国際中芯)も製造できるようになっているので、製造過程に必要な日本の半導体製造装置は引っ張りだこなのである。

そんな訳で、日本の増加率はそこそこながら、中国の技術発展を支えており、「中国を孤立させるはず」のQUAD(クワッド)(日米豪印四ヵ国枠組み)は、一体どこに行ったやらというのが現状だ。

◆「一帯一路」もRCEPも堅実と胸を張る中国

中国の貿易状況に関して、中国政府側は「一帯一路」もRCEPも堅実に発展していると胸を張っている。

「一帯一路」に関してはASEANやEUとの貿易額および増加率が大きいことを例に挙げ、RCEPに関してはASEANと日本、韓国などとの貿易額を、その例に挙げている。

アメリカでさえこうなのだから、もともと親中の自民党&公明党が政権与党である日本はもとより、媚中外交を貫く韓国などは、ほぼ中国の言いなりと言っても過言ではなく、これでは日米韓がこぞって中国経済を盛り上げているようなものだ。

本来なら抑制できたはずのコロナ感染の拡大を自ら招いたような日本は、日本国民の命を犠牲にしながらIOCの言うことには従い、中国の経済発展には貢献しているのが現状だ。

もとよりバイデン政権には期待してないが、最新の貿易高データに接し、何とも暗澹たる思いを拭えない。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授、北京大学アジア・アフリカ研究所特約研究員、上海交通大学客員教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文版・英文版もあり)、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Chinese Issue Global Research Institute, Professor Emeritus, Doctor of Science at the University of Tsukuba. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Chazu Chugoku Kenkoku no Zanka (Japanese Girl at the Siege of Changchun) (including Chinese and English versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chaina jajji — Motakuto ni narenakatta otoko (China Judge: The Man Who Couldn’t Become Mao Zedong),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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