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習近平国賓来日は延期でなく中止すべき
習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)
習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

政府は習近平の国賓招聘を再延期するようだが、延期ではなく中止すべきだ。全世界をコロナ禍で苦しめている事実だけでなく、尖閣諸島領海侵犯、海警法制定などを容認したことになり、中国への応援につながるからだ。

◆コロナ禍をもたらした中国の情報隠蔽体質

2020年1月27日のコラム<「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック>や2020年1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>で書いたように、習近平国家主席はWHOテドロス事務局長とタイアップして全世界に対して緊急事態宣言を出すのを遅らせようと工夫した。それは中国の体面を保つための偽装工作であり、情報隠蔽でもあった。

なぜ隠蔽工作をするのかと言えば、それはひとえに一党支配体制を維持するためであり、この精神は中国全土の地方政府にも染みわたっている。

2020年1月24日のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>に書いたように、武漢市や湖北省の高官たちは、全人代(全国人民代表大会)の地方版である(湖北省)人民代表大会を「何事もなかったような顔をして」無事に済ませたかったため、武漢で新型コロナウイルスによる肺炎患者が発生していることを知らせようとする現地の医者たちに圧力をかけて情報を隠蔽した。

今年も間もなく全人代が始まるが、開幕式の翌日に習近平や李克強など政府の指導層が手分けして各省の審議会に参加する。そのため地方政府の人民代表会議は彼らにとって「神聖」なのだ。取り敢えず北京に良い顔をしていくことを優先する。

この隠蔽体質は何十年にも及ぶ中国共産党による一党支配体制に毒されて、隠蔽をするのが当然といった精神性を持つに至っている。

その結果、人類はいま未曽有のコロナ禍の中で苦しんでいる。現時点で1億1千400万人の人が感染し、253万人の患者が死亡しているという。

その元凶である習近平を国賓として日本に招聘するなどということは、あってはならないことだ。国賓として来日すれば、天皇陛下に拝謁することになる。これにより習近平に免罪符を渡すことになるのだ。どんなことがあっても習近平の国賓来日を中止させなければならない。

◆尖閣諸島領海侵入と海警法

特に日本の場合は尖閣諸島周辺への中国の公船による領海侵入をくり返し受けている。そのことに対して日本は「遺憾である」といった、言っても言わなくても同じ効果しか持たない「呪文」のような言葉を口にするだけで、言動が一致していない。本気で「遺憾」と思っているのならば、そのような国の国家主席は日本の国土に一歩たりとも踏み入れさせてはならず、日本国に入国したいのならば尖閣の領海侵入を完全に中止してからにせよと、毅然として入国を断らなければならないのである。

3月1日、中国の国防部は「中国公船が自国の領海で法執行活動を行うのは正当であり、合法だ」という趣旨の方針を発表し、この状態を「常態化」していくと宣言した。

これは1992年2月に、全人代常務委員会が「領海法(領海と接続水域法)」を制定して、その中で「尖閣諸島とその領海および接続水域」を「中国の領土・領海である」と定めたからだ。

日本はこのとき何をしたのか。

国家運命を賭けてでも絶対に反対し、国交断絶をするくらい激しく怒らなければならないのに、反論をしないどころか、なんと、その同じ年の1992年10月に、こともあろうに天皇陛下訪中を実現させてしまったのである。

これではまるで日本国が「中国の仰る通り、尖閣諸島およびその領海も接続水域もすべて中国のものです」と認めたに等しい。

だから中国の国防部は尖閣諸島領海侵入を「常態化させる」と断言したのである。

中国からすれば「法に基づき、法を執行している」という言い分になる。

2月1日から施行された中国の海警法にしてもそうだ。

これは明らかな国際法違反であるにもかかわらず、菅首相は「強い懸念を(中国に)伝えておきたい」と、まるで他人事だ。茂木外相などは「この法律(海警法)が国際法に反する形で適用されるようなことがあってはならない」などと言っているが、海警法自体が国際法違反なのだ。遺憾の意を表すのなら行動で示すべきだが、日本の対中政策は口先だけだ。

◆日本が中国を経済強国にした

1989年6月4日に起きた天安門事件により、アメリカを中心とした西側諸国は厳しい対中経済封鎖を行おうとした。しかし封鎖を緩いものとさせ、さらにそれさえをも最初に解除したのは日本だった。経済封鎖を受けた中国はただちに日本の政財界に働きかけて日中友好の重要性を説き、微笑みかけてきた。すると、同年(1989年)7月に開催された先進国首脳会議(アルシュ・サミット)で日本の当時の宇野(宗佑)首相は「中国を孤立させるべきではない」と主張し、1991年には海部(俊樹)首相のときに円借款を再開し、西側諸国から背信行為として非難された。

2020年12月23日に極秘指定を解除された当時の外交文書によると(時事通信社が開示請求)、日本は「中国を孤立させてはならない」として人権や民主よりも経済交流を重んじ、そもそも制裁にさえ反対していた日本の姿が浮かび上がってくる。

当時の中国の銭其琛外交部長は回顧録で、天皇訪中を「対中制裁を打破する上で積極的な作用を発揮した」と振り返っているし、また「日本は最も結束が弱く、天皇訪中は西側諸国の対中制裁の突破口となった」とも言っている。

こうして日本は中国を経済大国に押し上げていくことに限りない貢献をした。

その証拠を以下の図「対中投資新規企業数と外資実行額の変遷」にお示ししたい。

対中投資新規企業数と外資実行額の変遷(1982-2020)

これは中国商務部が出した『中国外資統計公報2020』と2021年2月に商務部が個別に発表したデータを拾い上げて筆者が独自に作成したもので、改革開放以来の「中国に新規参入した外国企業の数」(折れ線)と「外資の実行額」(棒線)を示した(この図表は3月22日に出版予定の拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の第七章四「中国共産党とは──建党百年と日本」から引用したものである)。

図表から明らかなように、1992年、93年に特異点のようなピークがある。これこそは日本が1992年10月に天皇陛下訪中まで実現させたためにもたらした効果で、1990年辺りから日本が規制を緩めているために徐々に増加していることが見て取れる。天皇陛下訪中は決定的で、日本がそこまで力を入れるのなら、アメリカもただちに対中経済封鎖を解除して、西側諸国はわれ先にと中国への投資を競うようになるのである。

事実、無限の市場である中国から利益を頂かないと損だという西側諸国が一気に湧いてきた。こうして「対中投資ラッシュ」を招いた。

折れ線や棒線データの詳細な分析は拙著の第七章に譲るが、少なくとも日本が天安門事件後の対中経済封鎖を解除してからというもの、中国の経済が「もう後戻りできないほどに」成長してしまったことは確かだ。2010年にはGDP規模において日本を抜き、2028年にはアメリカを抜くと予測されている。

習近平が国賓として来日すれば、天皇陛下に拝謁するだけでなく、中国は必ず天皇陛下の訪中を強引に取り付けようとする。日本にそれを断る勇気があるのか?断れば経済制裁が待っており、手の付けようがない地獄へのスパイラルが待っている。

日本は中国共産党による言論弾圧や一党支配体制がもたらす「精神性」、「価値観」の中に組み込まれて行っていいのか?

すでに自民党の二階幹事長を始めとした一部の政界人が、中国のシャープパワーに毒されてしまい、日本の政界で隠然たる力を発揮し続けている。中国はこのような影響力を持つ各国政財界の有力者にターゲットを絞って洗脳していくことに余念がない。そのツケを払わされるのは日本国民だ。

新疆ウイグル自治区におけるジェノサイド問題や台湾問題あるいは香港問題など、中国に突き付けなければならない問題点は数多くあるが、日本自身の問題として、日本の一人でも多くの方々が、この現実に目を向けていただきたいと切に望む。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授、北京大学アジア・アフリカ研究所特約研究員、上海交通大学客員教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文版・英文版もあり)、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Chinese Issue Global Research Institute, Professor Emeritus, Doctor of Science at the University of Tsukuba. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Chazu Chugoku Kenkoku no Zanka (Japanese Girl at the Siege of Changchun) (including Chinese and English versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chaina jajji — Motakuto ni narenakatta otoko (China Judge: The Man Who Couldn’t Become Mao Zedong),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.