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高市総理に「その汚い首は斬ってやる」と投稿した中国の大阪総領事は国外追放に値するレベル
薛剣大阪総領事 大阪領事館ウェブサイトから転載

11月10日、産経新聞が<中国の大阪総領事「その汚い首は斬ってやるしかない」 高市首相の台湾有事巡る答弁に投稿>と報道した。続けて毎日新聞も10日、<中国総領事「汚い首斬ってやる」 台湾有事答弁巡り 日本政府は抗議>と報道している。

筆者自身も中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事からは常日頃から名指しで罵倒を受けている。それに反応して浅い親中連中が「そうだ!そうだ!」と連鎖反応を見せていることに違和感を覚えていた。

外交官として日本にいながら、今般の高市総理に関するX投稿は「常識を逸脱する」というレベルを超えて、国外追放に値するのではないだろうか。

まるで暴力団の恫喝のような品性のない発言は、在日外国人のあり方が問題視されている今、日本にいる中国人に対してもマイナスの影響を与えるのみで、中国という国家自身にもまったくプラスにならない。日本人が中国を嫌いになる傾向を増強させるだけだ。

日本政府が強く抗議したと木原官房長官も述べているようだが、その抗議内容は明確でないものの、もっと厳しく対処すべきではないだろうか。

◆薛剣駐大阪総領事が高市総理に関してXに投稿した文面

産経新聞によれば、薛剣は11月8日、図表1のような投稿をXにしたとのこと。すなわち、朝日新聞デジタル速報席がXに投稿した記事「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 認定なら武力行使も」を引用し、自身のXアカウントに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と書き込んだそうだ。

すでに削除されているようなので、オリジナル画面をここに掲載することができない。大変申し訳ないと思うが、産経新聞が掲載している画面を使わせていただく。

図表1:薛剣大阪総領事が11月8日にXに投稿した画面

産経新聞の報道から転載

◆薛剣は11月9日にも日本の政治屋を「死の道」と投稿

薛剣氏は11月9日にもXに以下のように投稿している

――全く仰る通り、「台湾有事は日本有事」は日本の一部の頭の悪い政治屋が選ぼうとする死の道だ。 日本国憲法どうのこうのはともかく、それ以前に中日平和友好条約の法的義務に違反し、第二次世界大戦勝利の成果の一つである台湾の中国復帰を無視し、敗戦国として果たすべき承服義務を反故にし、国連憲章の旧敵国条項を完全忘却した余りにも無謀過ぎる試みだ。くれぐれも最低限の理性と遵法精神を取り戻して理性的に台湾問題を考え、敗戦のような民族的潰滅を喰らうことが二度とないようにしてほしい。(引用以上)

このXの画面キャプチャーを図表2に示す。

図表2:薛剣の11月9日におけるX投稿

薛剣のXの画面キャプチャー

日本を侮辱できる限りの口汚い言葉を羅列しているが、出現した言葉の順番に分析を試みる。

◆「死の道」を多用する薛剣と中国外交部

まず「死の道」という言葉を考察する。

たとえば、2023年8月9日、薛剣は<台湾について妄言を吐いた麻生太郎氏>と題して以下のようにXに投稿している。

――#台湾について妄言を吐いた麻生太郎氏 中国外交部報道官:私たちは台湾当局にも厳しく警告する。「台湾独立」は完全に死の道であり、日本に媚びて台湾を売ることは台湾の民衆に災いをもたらすだけで、外部勢力を巻き込んだいかなる「独立」の企みや挑発も、必ず失敗に終わることになる。(引用以上)

この「死の道」中国外交部が2023年8月9日の定例記者会見で、自民党の麻生太郎氏が台湾訪問をしたことに関して使った言葉に準拠しているものとみなすことができる。外交部は記者会見で以下のように言っている。

――われわれは台湾当局に対し、「台湾独立」は死の道があるのみで、日本に媚びて台湾を売り渡すことは台湾人民に損害を与えるだけで、外部勢力と結託して「独立」を唱え、他者を挑発しようとするいかなる試みも必ず失敗すると警告している。(引用以上)

ここに出てくる「死の道」は中国語では「死路一条」と書き、「お前はもう終わってる」的な意味だが、薛剣は好んでこの「死の道」を使う。

それでは、図表2に現れた次の言葉に関して考察する。

◆「敗戦国として果たすべき承服義務」は「中華民国」に対してのみ

できるだけ口汚く、そしてできるだけ日本を侮辱できる形の言葉選びをする薛剣は図表2のポストにあるように「第二次世界大戦勝利の成果の一つである台湾の中国復帰を無視し、敗戦国として果たすべき承服義務を反故にし、国連憲章の旧敵国条項を完全忘却した余りにも無謀過ぎる試みだ」と書いている。

まず「第二次世界大戦勝利の成果の一つである台湾の中国復帰」だが、「第二次世界大戦勝利の成果」というのであれば、日本は「大日本帝国」と戦った「中華民国」に台湾を返還したのであって、そのときまだこの世に存在していない「中華人民共和国」には返還していない。国連憲章を持ち出すのなら、薛剣こそ、国連憲章の旧敵国状況をしっかり読むべきだろう。

現在の中国、「中華人民共和国」は「日本に勝利した中華民国を倒して誕生した国」だ。1945年にはこの世に存在していない。

その「中華民国」と「中華人民共和国」が両者の「国家」をどのように区分するかは、両者の問題であって、台湾問題は確かに「中国」の内政である。

1971年10月25日、中華人民共和国が「一つの中国」原則を掲げて国連に加盟し、中華民国を国連から追い出す結果を招いたが、このときに「中華民国が第二次世界大戦で勝利国として獲得した権限を、すべて中華人民共和国に譲り渡す」というような誓いは、誰もしていない!

このことを「戦後4年後に誕生した共産中国」は心得るべきである。

おまけに、拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いたように、毛沢東は1939年にスパイ藩漢年を日本外務省所轄の岩井公館に潜らせて「日本軍との停戦」を密かに持ち掛けている。

日中戦争時代の国共合作を、毛沢東は「721方針」に基づいて、「軍力の70%を共産党軍の発展のために使い、20%を国民党軍との妥協のために、10%だけを抗日戦争のために使う」を実行している。

それは9月1日の<台湾で機密解除 抗日戦争戦場での手書き極秘報告集が暴く「中共軍と日本軍の生々しい共謀」記録発見>や、9月3日の<抗日戦争中、中共軍は日本軍と水面下で「不可侵条約」を結んでいた 解除された台湾の機密軍事情報が暴露>で証明済みだ。

それでも信じないなら、薛剣氏にはぜひとも中共中央文献研究室が編集している『毛沢東年譜』の「上中下巻」+「第一巻から第六巻」の計9巻(最近では第一巻から第九巻に統一)を読破することをお勧めしたい。筆者は約7000頁をすべてチェックした。

薛剣氏に問う:

  • 毛沢東は一度でも「抗日戦争勝利記念日」を祝ったことがあるか?
  • 毛沢東は「南京大虐殺」があった1937年12月13日以外に、生涯にわたってこの日に触れたことがあるか?

答えは「ない!」だ。

1937年12月13日に「南京失陥」(南京陥落)の4文字があるだけで、死ぬまで一度も「南京大虐殺」に触れたことがない。「抗日戦争勝利」は蒋介石が勝ち取ったものなので、それを祝賀することは「蒋介石を讃えることになる」として、死ぬまで一度も「勝利祝賀大会」を開催したことがない。

したがってあなたには「敗戦のような民族的潰滅を喰らう」などという「居丈高な口」をたたく資格はない。

◆日本政府はもっと厳しい措置を

令和7年11月10日(月)午前 | 官房長官記者会見 | 首相官邸ホームページにあるように、木原官房長官は「中国の在外公館の長の言論として極めて不適切と言わざるを得ません。外務省および在中国大使館から中国に対してその旨の申し入れを行い、強く抗議するとともに関連の投稿の速やかな削除を求めました」と述べている(動画の5:10頃からの発言)。

この「強く抗議」の具体的な内容がわからないので何とも言えないが、このたびの件はペルソナ・ノン・グラータ(好ましからぬ人物)として、国外退去を求めるべき事案ではないだろうか。

それくらいやらないと、「死の道」の例でもわかる通り、薛剣は中国外交部の言葉に従っている一面もある。となれば今後もくり返す危険性があり、日本国全体として舐められ続けることになるだろう。これは誰のためにもならない。

日本政府にはもっと厳しい措置を求めたいと思う次第だ。

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権時代)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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