戦後日本を占領していたGHQは、「日本人が犯した戦争の罪に対する贖罪意識」を徹底して植え込み、自虐史観を抱かせることに成功した。それも「アメリカ脳化」政策同様、日本政府とメディアを使ったので、日本人はGHQに操作されていることに気づくことなく自ら進んで意識改革をしていった。いま同じアメリカがNED(全米民主主義基金)を用いて「反中、嫌中」意識を同じくメディアを用いて日本人に植え込んでいる。だから自民党は「反中」対米隷属と自虐史観的媚中外交の二股外交を余儀なくされている。これはバランス外交などというカッコいいものではなく、全てはGHQが植え付けた「贖罪意識」の結果だ。それをまず認識したい。
◆WGIP(War Guilt Information Program)=日本人に戦争贖罪意識を植え込む戦略
8月10日のコラム<アメリカ脳からの脱却を! 戦後日本のGHQとCIAによる洗脳>に書いたように、戦後日本はGHQによって占領された。戦勝国であるアメリカは、戦勝国であるがゆえに敗戦国・日本に対してはやりたい放題。日本人の精神解体を行っただけでなく、「日本人がいかに罪深い人種であるか」を徹底して植え込み、「アメリカが原爆投下を行ったことを絶対に批判できないように」教育を浸透させていった。
それも占領下の日本(傀儡)政府やメディア、特に教育界を通して実行したので、日本人には、「日本国」自らがそう判断しているのだと思わせる手段を用いるという、「実に頭のいい(?)」戦略で動いたのである。
このWar Guiltはただ単に「戦争責任」という日本語ではなく、もっと「罪責」あるいは「罪悪感、自責」の方に近く、結果的に「贖罪をしなければならない」という認識を日本人の意識に植え込み、「原爆投下は、ありがたい罰である」と思わせるところに、このプログラムの(アメリカにとっての)真の意義がある。
日本に原爆を二つも投下したことに対する史上かつてない残虐性、非人間性を「批難してはならない」というのがWGIPの真の目的なのだから。
広島出身の岸田首相は、「だからこそ原爆には絶対に反対する」と言いながら、核兵器禁止条約には日本は絶対に参加しない。「核保有国は一国たりとも参加していないから、その橋渡しを」というのが岸田首相のいつもの弁明だが、彼もまたGHQが日本政府の精神性に埋め込んだ「贖罪意識」から逃れられないでいるのだ。
2015年に出版された『日本人を狂わせた洗脳工作 いまなお続く占領軍の心理作戦』(関野通夫著、自由社ブックレット)は見事にその証拠を突き付けている。
◆共産・中国に利したGHQのWGIP
本来、「アメリカの原爆投下も日本占領も批判してはならない。悪いのは、お前ら日本人なんだから」というGHQの目論見は、結果的に共産・中国に利している。
なんと言っても日中戦争において日本は「中国を侵略した」のだから、悪いのは日本で、「ひたすら中国に謝罪し続けなければならない」と、日本自らが積極的に思うようになった。
拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』にも書いたが、毛沢東は「私は皇軍に感謝している」と言い切っている。なぜなら日本軍が戦った相手は最大の政敵・蒋介石がトップに立つ「中華民国」だったので、蒋介石率いる国民党軍を弱体化させてくれたからだ。
結果、日本敗戦後に中国国内で始まった国共内戦で共産党軍が勝利し、共産・中国である中華人民共和国(現在の中国)を誕生させたが、日本の対中贖罪意識は、なんと、敗北して台湾に身を寄せた蒋介石の「中華民国」に向けられず、勝利した共産・中国に向けられたのである。まるで共産・中国を「日本に対する戦勝国」のように位置付け、戦勝国に対する「敗戦国」の奴隷根性を丸出しにしている。
だから1971年のキッシンジャー忍者外交に慌ててアメリカのあとを追い、共産・中国と国交を正常化することに向けて突進し、「贖罪意識」を持たなければならない「中華民国」とは国交を断絶した。
それだけではない。
1989年6月4日の天安門事件後の対中経済制裁を「中国を孤立させてはならない」としてイの一番に解除したのは日本で、1992年2月に中国の全人代常務委員会が「領海法」を議決して、日本の領土である尖閣諸島を「中国の領土領海である」と宣言したのに、いかなる抗議もせず、それどころか同年10月には中国の依頼に応じて天皇陛下訪中を実現させて、「領海法」を事実上黙認する意思表示をしてしまったのである(詳細は『習近平が狙う「米一強から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』【第五章の五、尖閣・南シナ海の領有権を定めた中国「領海法」を許した日米の罪】)。
現在の岸田内閣とて、実は変わっていない。
自民党きっての親中派議員を外相に指名したり、中国では最も親中的な政党として位置づけられている公明党から必ず国土交通大臣を選んで「尖閣問題に関して中国側に立つ」姿勢を貫いていたりなど、やっていることはGHQに埋め込まれた「贖罪意識」装置そのままだ。
その一方でアメリカの事情が変わってきた。
アメリカの原爆投下を批判させないためのWGIPは、実は原爆を持つアメリカこそが軍事力的に世界一で、世界を支配する正当性を持っているという、戦後の「米一極支配」を正当化する装置でもあった。
ところが、その「米一極支配」を脅かす存在が現れてきた。
中国だ。
◆中国を潰すために動き始めた「第二のCIA」NED
前掲のコラム<アメリカ脳からの脱却を! 戦後日本のGHQとCIAによる洗脳>に書いたように、1983年に「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)を設立し、GHQやCIAの「贖罪意識」に代わって、「ロシアや中国を潰すための論理」で動き始めた。
その柱にあるものを見抜かないと日本が戦争に巻き込まれることに警鐘を鳴らすために書いたのが前掲の『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』である。当該書の序章の最後に、本来なら「台湾有事を創り出すのはNEDだ」と書くべきだが、「NED」の知名度が低いので、「CIA」で代表させたと書いたが、実はもっと言えば、このサブタイトルをメインタイトルに持って行きたいほど、NEDの実態を知って欲しかった。
正直に言えば、筆者自身、この本を書くまでは、ここまでNEDが世界全体を動かしていることには気が付かなかった。なぜ注目するようになったかというと、中東が中国に近づいた大きな原因がNEDが起こしてきたカラー革命にあることを知ったからだ。これによりいま地殻変動が起きようとしている。従って、NEDの実態を知らない限り、中国の真相も見えてこない。
しかしNEDは、かつてのGHQやCIAと同じように、政府やメディアを動かしているだけで、直接的には日本国民に何かしらの指示を出すわけではないから、「アメリカ脳化」してしまった日本人にはNEDの動きは見えないだろう。大手メディアが言っているんだから正しいだろう程度に受け止めてしまう傾向にある。その「時流」に乗って出版される本や専門家(?)の発言がまた喜ばれるという精神的環境をNEDは作っているので、とことん中国を読み間違えてしまうのだ。
「中国は今度こそは崩壊する」と喧伝して20年以上が経っているが、一向にその兆しはない。いや、数値が示していると主張するだろうが、その数値は一側面のデータしか拾ってないので間違えるのだ。
たとえば7月28日のコラム<中国の若者の高い失業率は何を物語るのか?>に書いたように、確かに中国の失業率は目も当てられないほどひどいが、しかし一方では、当該コラムの図表5に示したように、中国は論文数においても引用された論文の数(=論文の質)においてもアメリカを抜き世界一に躍り出ている。背景にあるのは2015年に習近平政権が打ち出した「GDPは量より質」に基づくハイテク国家戦略「中国製造2025」だ。GDPの成長率などだけを見て「ほらね、中国はもうすぐ崩壊するよ」と、日本国民を喜ばせている専門家やメディアは、「量より質」がもたらす中国の脅威には目を向けようとしない。
結果、日本が取り残されていくのを筆者は怖れ、なかんずく戦争に巻き込まれていくのを怖れるのである。
日本人の精神性は、あの敗戦直後のGHQとCIAが創り出した遺伝子が填め込まれたようなもので、この「アメリカ脳化」された精神から抜け出すのは至難の業だ。
しかし、日本政府の対米奴隷化も媚中も、両方ともがWGIPが埋め込んだ贖罪意識にあるのだから、ある意味、アメリカの長期的戦略に圧倒されると言えなくもない。しかも気づかれないように動かしているのだから、「大したものだ!」、「脱帽だ!」と言ってしまいたいくらいだ。
GHQによって創り出された遺伝子的精神性のママ、日本は生き続けていっていいのだろうか?
今年の8月15日は終戦から78年が経つ。
読者とともに考えたい。
この論考はYahooから転載しました。
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