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トランプが「中国を倒すのではなく協力することでアメリカは強くなる」と発言! これで戦争が避けられる!
ドナルド・トランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

トランプ大統領は10月30日に韓国で習近平国家主席と会談した前後に「米中G2」をTruthに投稿していたが、米東部時間31日には米メディアCBSの60分間に及ぶ取材を受け「中国を倒すのではなく協力することでアメリカは強くなる」と発言している。それをホワイトハウスが短縮して報道しているので、ご紹介したい。

米中競争の決着はどこかで付くわけで、いずれは中国が米国を凌駕することになり、その時には戦争が起きるかもしれないという危惧がある。その凌駕の瞬間を平和裏に対処し、しかも米国が強い状況で米中が共存できるなどという離れ業をできる人物が出てくるとすれば、人類にとって奇跡的なことだ。トランプの政策にはさまざま問題はあろうが、この姿勢で米中競争に向き合うことができる姿勢を取れるのはドナルド・トランプをおいて他にない。

ホワイトハウスはまた、ホワイトハウスだけが持っている米中首脳会談中の内部の光景を米東部時間10月30日16時27分に公開したが、そこには習近平が破顔一笑し中国側代表も全員が笑っている写真がある。公開された42枚の写真から4枚を選んでお見せしたい。

習近平は11月1日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と会談している。その時も自虐ジョークを飛ばし、李在明の大笑いとともに笑っている。

一方、わが国の高市総理は習近平と会う前後に台湾の林信義元副首相と会い、そのツーショットを会談後にⅩに投稿したことにより、中国外交部から激しい抗議を受けている。

日米韓3ヵ国の対中姿勢の足並みが必ずしも揃わず、米韓が「対中笑顔外交」を始めた中、日本の対中外交には前途多難な影が潜んでいるかもしれない。

◆「米中G2」時代を表明して、習近平を持ち上げるトランプ

トランプと習近平が顔を合わす米中首脳会談は、10月30日11時13分から始まったが、トランプはそれに先立つ同日10時08分に、自らのSNSであるTruthに <G2会議がまもなく始まるよ―!>と投稿した。

米中首脳会談を終え帰国した後の日本時間11月2日5時11分に、トランプはTruthに投稿し、再び<G2に言及した>。そこには「中国の習主席との、私のG2会談は、両国にとって素晴らしいものだった。この会談は永遠の平和と成功につながる。中国と米国の両国に神のご加護がありますように!」と書いてある。

かつて習近平がまだ国家副主席だった2012年2月13日にワシントン・ポストの取材を受け、「広大な太平洋の両岸には、中国と米国という二大大国を受け入れるのに十分な空間がある」と指摘している。その後も何回かこの言葉をくり返し、たとえば2014年11月12日に訪中したオバマ大統領と会談し、同じ言葉を述べている。これは実際上G2を意味しており、中国語では「新型大国関係」と称されている。これに対してオバマ政権では、やや冷笑的な対応があったため、習近平はその後二度とこの言葉を使わないようになった。

ところがこのたび、米国側から“G2”という言葉が出たのだ。これは実にエポックメーキングな話で、トランプだからこその展開だとみなしていいだろう。

バイデン(元大統領)だったら、絶対に言わない。バイデンはひたすら対中包囲網を同盟国や友好国に呼びかけて、何としても中国を潰そうとしていた。日本の精神は、まだバイデン政権の影響の下に留まっているのかもしれない。

◆トランプ:中国を倒すのではなく協力することでアメリカは強くなる

11月2日午後、CBSニュースは<トランプ大統領へのインタビューの全文はこちらからお読みください>という見出しで、60分間にわたる取材内容を文字で伝えている。

するとホワイトハウスが11月3日、<トランプ大統領の60分間:「大統領職史上最高の9カ月」>という見出しで、短くまとめた取材内容を発表した。その「中国について」の項目には、以下のように書いてある。

――他の人たちと同じように、私たちもまた彼らにとって脅威だと思う…。中国と米国となると、とりわけ激しい競争の世界がそこにはある。私たちは常に彼らをウォッチしているし、彼らも常に私たちをウォッチしている。そうこうしている内に、私たちはすっかり仲良くなってしまっているし、まさに彼らをノックアウトしてしまうのではなく、むしろ逆に彼らと協力することによって、私たち(米国)は、より大きく、より良く、そしてより強くなれると私は思う。(ホワイトハウスからの引用はここまで)

かつて、これを言えた米大統領はいただろうか。その意義は冒頭に書いた通りだ。

◆習近平、トランプらと破顔一笑

ホワイトハウスは、10月30日の米中首脳会談における、記者には公開していない内部での会談時の写真も含めて、計42枚も公開している。このうち29番目から32番目までの4枚の写真を選んで図表1~4に示したい。

図表1:「さあ、これ見て」とばかりにトランプがハガキ大のメモを見せている

ホワイトハウスのウェブサイトから転載

何が「書いて」あるのか、あるいは「描いて」あるのかはわからないが、すでにこの時点で中国側が全員、嬉しそうな顔をしている。

図表2:「ほら、これだよ」と写真を突き出すトランプと笑う習近平

ホワイトハウスのウェブサイトから転載

図表2では、習近平が嬉しそうに笑いながら写真に見入っている。トランプが何か説明しているのだろう。

図表3:「えー、見せて!」とばかりにメモに手を伸ばす習近平

ホワイトハウスのウェブサイトから転載

写真だけなので、何が書いてあり、何を喋っているかはわからないが、あたかも習近平が「えー、なに?それ!見せてくださいよ―!」と言いながら手を伸ばしているように見える。他の中国側代表も興味津々で嬉しそうだ。

図表4:習近平、破顔一笑! 全員が大笑い!

ホワイトハウスのウェブサイトから転載

図表4では、習近平がたまらず大笑いをしている様子がうかがえる。笑い過ぎて目が潰れてしまっている。

何を見せたのだろうか。知りたくてならないが、これに関する情報は今のところない。

いずれにしても、このような和やかな米中首脳会談など、米中国交正常化以来、一度もなかったと思われる。米大統領がドナルド・トランプであったからこそ現われた、史上初の場面だと言えよう。

念のため、トランプがどのようにこの首脳会談を位置付けているかが垣間見える20秒間ほどのホワイハウスが出している動画もご紹介しておきたい。

◆習近平、韓国大統領とも自虐ジョークと笑い

11月1日、習近平は韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領と会談した際に2台の携帯電話を李在明に贈呈した。両首脳が記者団のカメラの前で贈り物を紹介するとき、中国側通訳が「これらの携帯電話は中国企業の小米科技(シャオミ)製で、韓国製のディスプレイを搭載している」と説明した。

李在明は未開封の携帯電話の1台を手に取り、つらつら眺めながら、「この携帯電話のセキュリティはどの程度ですか?」と尋ねた。すると習近平が笑いながら「バックドアがないか確認できますよ」と答えたのだ。それを聞いた李在明は拍手のしぐさのように手を叩きながら大笑いをしたものだから、習近平も愉快そうに笑った様子がカメラに収められている。たとえばニューヨーク・タイムズ中文網のタイトル画像には図表5のような瞬間の写真がある。上海メディアグループ傘下のチャンネルShanghaiEye でも動画があるので、同じ瞬間の写真を切り取ることができる。

図表5:習近平が飛ばした「バックドア」ジョークに爆笑する中韓首脳

ニューヨーク・タイムズ中文網より転載

習近平が咄嗟に「バックドアがないか確認できますよ」などという自虐ジョークを言うなどということは滅多にない。きっとトランプに仕掛けられた「笑いの波」が韓国大統領との関係にまで及んだのではないかと推測する。

しかし、日本だけはその波から取り残され、高市総理は日中首脳会談後に習近平の神経を逆なでする行動に出ている。

◆中国外交部が激怒:高市総理が台湾代表とのツーショットをXに投稿

高市総理は日中首脳会談で習近平と正式に会う前の10月31日10時前に控室で待機していた韓国で開催されたAPEC首脳会議に参加する多くの代表に挨拶をした。その中に習近平や台湾の代表である林信義・元副首相もいる。

習近平との挨拶のツーショットは31日15時15分にXに投稿しているが、台湾の林信義とのツーショットは、習近平と会談したあとの20時1分にX投稿している。そこには林信義の肩書を「総統府資政」と書いている文字がある。資政は最高顧問という意味で、現役の総統府最高顧問という敬称を用いたことになる。

習近平は高市早苗と首脳会談をしているときには、そのことを知らない。これだけでも十分に「習近平の顔に泥を塗った」ことになる。

ところが加えて、高市早苗は、APEC首脳会議が終わった後の11月1日18時26分に、台湾の林信義とのツーショットを再びXに投稿し、林信義と会談したことを発表した。

この時点で中国側の堪忍袋の緒が切れた。中国外交部は高市早苗のX投稿に対して「ネット上で注目を集める誇大宣伝を行うことは、一つの中国原則に反する!」として激しく抗議している

ちなみに、石破元総理の場合も、1年前のAPEC首脳会議で林と挨拶を交わしているが、X投稿はしていないので、中国側からの抗議はない。控室で各国地域代表と出くわせば、挨拶くらいはするだろうという位置づけをしていると考えられる。

11月4日、茂木外相は<「政府の立場変更ない」 中国側に反論 高市総理と台湾代表との会談めぐり>と書いておられるが、キーポイントを外しているのではないだろうか。

図表6に示した、ここ10年程の歴代総理のAPEC首脳会議における「台湾代表との会談の有無」、「X(ツイッター)投稿などの有無」および「中国からの抗議の有無」をじっくりご覧いただきたい。

図表6:APECにおける日・台代表との会談と中国からの抗議の有無

台湾歴年の発表・報道、各首相のX(ツイッター)、中国外交部サイトの情報に基づいて筆者作成

図表6をご覧いただければ一目瞭然。

これまで歴代の日本総理はAPECで台湾代表と会談しているが、誰一人、それをXあるいはツイッターなどでネット公開したことはない。そこには一定の抑制があった

ところが高市総理だけは、その抑制を効かせていない。これまでの総理が踏襲してきた「デッドライン」を超えたのだ。

そうでなくとも11月1日の論考<日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑>に書いたように、中国は公明党が連立離脱しただけでも既に怒っており、習近平は高市総理には就任祝電を送っていない。これも例年と違う初めての対応だ。

それでも日本側が「何としても日中首脳会談を開催してほしい」と強く希望したので、習近平としては最大限の譲歩をして「開催してあげた」つもりだろう。

その習近平に対して、歴代の日本総理がやったことのないネット公開をした

ここが違うことを茂木外相は認識していないのだろうか。熟練にしては、お粗末だ。認識が浅すぎる。外相として、中国関係に関しては失格と言わざるを得ない。これでは高市総理を守ることができない。

なお、10月23日には論考<高市総理に「日米首脳会談」までに認識してほしい、トランプ大統領の対中姿勢(対習近平愛?)>を書いて注意を喚起した。筆者としては高市総理の周辺が留意して高市総理を守ることができるようにして欲しいという善意から書いたのだった。しかし残念ながら、それも活かされていなかったことがわかった。

毅然としているのは良いことだ。しかし歴代総理が日本国を守るために抑制してきたデッドラインを超えたり、日米韓の足並みを乱すようなことは好ましいことではない。何かしらの「知恵」というか「老獪(ろうかい)さ」のようなものが、あっても良かったかもしれないと思う次第だ。それでも高市総理には期待していることを最後に付言する。

追記:なお、10月30日の論考<米中首脳会談 予測通り障壁は「50%ルール変更」だった!>に書いたように、米中首脳会談では「台湾問題は議題に上らなかった」とトランプが取材に回答している。

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権時代)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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