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中国CCTVが「中東駐留米軍は撤退すべき」という米大統領選候補者ロバート・ケネディJrの発言に注目
無党派で米大統領選2024に立候補するロバート・ケネディJr(写真:ロイター/アフロ)
無党派で米大統領選2024に立候補するロバート・ケネディJr(写真:ロイター/アフロ)

バイデン大統領が「責任能力の低下と記憶力薄弱」を理由に訴追を免れたという衝撃的なニュースは、世界を嘲笑的に駆け巡り、これで大統領職が務まるのかという懐疑を抱かせている。中国のネットでは「スリーピー・ジョー」(バイデン)という言葉がもてはやされているが、中国共産党管轄下にある中央テレビ局CCTVは、民主党を脱退したロバート・ケネディJr(以下、ケネディJr)の「中東に駐留する米軍は撤退すべきだ」という主張に焦点を当てて報道しているのは注目に値する。

◆ケネディJrの「中東に駐留する米軍は撤退すべきだ」という主張

今年2月3日のCCTVクライアントは<米大統領候補ケネディJr:アメリカは中東の駐留米軍を撤退させなければならない>という見出しの報道をした。

図表1:CCTVが報道したケネディJrのX投稿文

出典:CCTV

出典:CCTV


報道では、まずこのようなケネディJrのX投稿文を画像として貼り付けて、以下のように解説している。

 ――イラクとシリア国内の標的に対する米国の空爆に関して、米国大統領候補のケネディJrは2月2日、「中東における米軍の駐留は歓迎されておらず、不必要である」との文章を発表した。イラクとシリアの両政府は、かねてより米軍の撤退を求めてきたが、米政府は制裁や脅迫を通して米軍の駐留を維持している。彼(ケネディJr)は、米国は中東に駐留するこれらの軍隊を撤退させなければならないと主張している。(解説文、ここまで)

次に以下のような画像を貼り付けている。

図表2:CCTVが掲載したケネディJrのX投稿文の続き

 

出典:CCTV

出典:CCTV

 

その下には以下のような解説文がある。

 ――昨年10月7日にパレスチナ・イスラエル紛争の新たな段階の衝突が勃発して以来、イラク民兵武装部隊はイラクとシリアに駐留する米軍を繰り返し攻撃している。米国は一連の空爆に対して報復攻撃をした。ケネディJrはケネディ家の出身で、故元米国司法長官兼上院議員ロバート・フランシス・ケネディの息子であり、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ元米国大統領の甥にあたる。(解説文、ここまで)

中国政府自身が米大統領選に関して見解を述べるようなことは内政干渉として絶対にしないが、しかし「世界各国における駐留米軍の撤退」は、中国の「期待」でもあることから、ケネディJrの主張を取り上げたものと位置付けることができる。

◆環球時報も昨年ケネディJrのウクライナ戦争に関する見解を報道

昨年5月4日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」電子版は<米大統領選候補者ケネディ:米政府はロシアのレッドラインを無視して、NATO東方拡大に関する約束を破った>という見出しで、ケネディJrがイギリスのオンライン雑誌≪UnHerd≫のインタビューを受けた時の談話を、以下のように紹介している。

――米国は当初(ソ連崩壊の際に)、ロシアに対してNATOは東方に拡大しないと約束していたが、米国はロシア指導者らの警告を無視し、越えてはならない一線を破り、NATOの東方拡大を進めてきた。米国は嘘をつき、2014年のウクライナ危機(マイダン革命)を起こさせ、米国を支持しロシアを敵対視する政権を誕生させるためのクーデターに成功した。

彼(ケネディJr)は、「現在起きているウクライナ危機は米国とロシアの間の戦争であると主張しており、(米国の)ネオコンの地政学的野望を実現するために、ウクライナの若者たちが死と破壊に満ちた屠場に次から次へと送り込まれている」と述べている。

解決策に関して問われたケネディJrは、「私はミンスク合意のような方案を支持する。ウクライナをNATOから排除し、ロシア国境から核兵器とミサイル発射装置を撤去することだ」と述べた。(以上、環球時報より)

◆ケネディJrの≪UnHerd≫における回答は筆者の主張と一致

昨年5月3日、ケネディJrはオンライン雑誌≪UnHerd≫のFreddie Sayers氏の質問に対して以下のように回答している

 ――私たちは何年にも及んでプーチンの言うことに耳を傾けるべきだった。私たちはロシアに対して、特にゴルバチョフに対して、NATOを1インチたりとも東に拡大させないと約束した。しかしその後、私たちはその領域に侵入して、そして嘘をついてきた(約束を破ってきた)。私たちはNATO諸国13カ国に進出し、核能力を備えたミサイルシステムを導入した。私たちはウクライナやNATOのために他の国々と共同演習を行った。(中略)

米国は、ウクライナ国民が民主的手段で選出した大統領とその政府を、2014年にクーデターという手段で転覆させた。ホワイト・ハウスのネオコンの一人、ヴィクトリア・ヌーランドが、ソ連に敵対的な新内閣を手作業で選んだ際の通話記録がある。(中略)その後、(親米的な)ウクライナ政府はドンバスで1万4,000人のロシア人を殺害した。もし米国が、たとえばメキシコにこんなことをやられたら、私たちは一瞬でメキシコを侵略するだろう。ウラジーミル・プーチンがギャングではないと言っているのではない。(中略)私たちは越えてはならない一線を越えているのだ。(≪UnHerd≫からの一部引用はここまで)

これは筆者が拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』や、2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartⅣ 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>を最終回として書いてきたシリーズにおける分析と重なっている。このことを、今般のバイデン大統領の訴追免除の理由を知ったのちに発見したのは筆者の怠慢だったが、米国の次期大統領候補者の中に、このような卓越した視点を持っている政治家がいるのは、驚嘆に値する。

◆「スリーピー・ジョー」が大統領選から降りることはあり得るのか?

冒頭に書いたように、中国のネットではバイデンのことを「スリーピー・ジョー」と揶揄したトランプ前大統領の言葉の才能に拍手喝采を送っている。ネット民が好む「スリーピー・ジョー」の写真は数多くあるが、中でも思わず笑ってしまったのは以下の写真だ。

傑出した「スリーピー・ジョー」の写真

出典:MATT SLOCUM/ASSOCIATED PRESS

出典:MATT SLOCUM/ASSOCIATED PRESS


正直なところ、気の毒にもなってきた。自分の指で無理やり目を見開かせていないと、「まぶたが自然に閉じてしまう」というのであれば、何かしらの病を抱えているのかもしれない。

かてて加えて2月8日に特別検察官から「責任能力の低下と記憶力薄弱」により刑事訴追さえできないと宣告された者が、大統領を継続することなどできるはずがないだろう。それを無理矢理に継続させるとすれば、「民主党には他に人材がいない」というだけでなく、「米国は病んでいる」としか言いようがなくなる。

共和党のトランプ候補も、大統領選に出馬する資格があるか否かの審議を受けている最中で、共和党には二番手三番手の候補が控えているだろうが、民主党は、民主党から離脱した最有力候補ケネディJr以外に、これといった候補者さえいない状態だ。

ネオコンが主導するNED(全米民主主義基金)が戦争ビジネスで世界各地に戦争を引き起こし、「民主の衣」を着て「武器を売る」時代は終わりを告げつつあるのではないだろうか。ケネディJrの主張は、ネオコンではないトランプの主張に一脈通じるところがある。

国家戦略を持たず、自分が当選できるか否かだけにしか興味がないために「裏金工作」に熱心な日本の自民党議員は、ひたすら対米従属を続けることしか手段がないようだが、梯子を外されるのは目前に迫っている。中国がもう崩壊すると囃し立てている場合ではないだろう。

この論考はYahooから転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。7月初旬に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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