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中国も驚く岸田首相の不支持率79%! 70年来の最高記録
政治資金問題などを説明する岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
政治資金問題などを説明する岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

岸田首相の不支持率が79%に達したことは、日本人でも「それでもこの内閣を存続させるのか」と思ってしまうが、中国でも驚きを以て報道され、中央テレビ局CCTVや新華社が報じたので、中国のネット空間はそれが次から次へと転載されて騒然としている。

中国の腐敗文化は数千年の歴史を持ち、江沢民政権はそれを助長し、胡錦涛政権では江沢民勢力により是正できなかったが、習近平政権になってからは反腐敗運動を展開して、ようやくいくらか下火になってきた。

ただ日本と異なるのは、中国は腐敗全盛時代に中国経済が急成長し、習近平政権で反腐敗運動を徹底したのはハイテク国家戦略を推進して軍の近代化を図るのが目的だった。

日本の場合は、国家戦略のために裏金が動いているのではなく、自民党内の派閥競争と、「選挙に勝つための裏金作り」という何とも内向きで「自己本位」の目的しかなく、この段階ですでに「共通した国家戦略」などは眼中にないと言える。

習近平政権を「権力闘争」と非難し、「さあ、もう滅びるぞ」と嘲嗤(あざわら)っている場合ではないだろう。

 

◆中央テレビ局CCTVと中国政府通信社・新華社の報道

2023年12月18日、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVは<日本:世論調査で岸田内閣不支持率が70数年来の最高記録を示す>というタイトルで、驚きを以て日本政治の裏金問題を報じている。

それを文字化したものが中国政府の通信社である新華社通信で<“闇金”スキャンダルはくすぶり続け、岸田内閣の不支持率は過去70年間で最高記録を更新>とう見出しで報道されている。そこで、その概要を以下に列挙する。

 ●日本の「毎日新聞」が16日と17日に行った世論調査の結果、岸田内閣の支持率は11月中旬からさらに5%低下して16%となり、「危険水域」から「下野水域」に転落した。不支持率は5%上昇して79%に達し、1947年の調査開始以来、最高を記録した。日本の政界では、内閣支持率が30%より低くなると「危険水域」に突入したとみなされるようになっているが、20%を下回った場合は、すでに「下野を余儀なくされる水域」であるとみなされる領域に入る。

 ●日本の「共同通信社」が17日に発表した世論調査によると、岸田内閣の支持率は同社がこれまで調査してきた支持率をさらに6%下回って22.3%に至り、不支持率は8.7%上がって、65.4%に達し、最高を記録しているとのこと。執政党である自民党の支持率も同様に下落の一途を辿っている。

 ●「毎日新聞」の世論調査の中で、自民党支持率は前回調査に比べて7%下落し、17%にまで滑り落ちた。共同通信社の調査では自民党支持率は34.1%から26%にまで下落。これらの結果は自民党が2012年年末に再復権して以来の最低を記録している。

 ●最新の世論調査を行っている最中にも、自民党派閥の“闇金”スキャンダルが次々に発効して新しいスキャンダルが出て来ているので世論調査が追いつかないくらいだが、おおむね80%の調査対象者が、秘密政治資金スキャンダルは日本政界における重大な事件で、岸田(首相)には、この種の事件を処理する指導力に欠けているとみなしている。そして約77%の人が、自民党は自らこの過ちを糺す自浄能力に欠けていると見ており、70%の人が自民党は党内の派閥を解散するしかないだろうとみなしていることがわかった。(報道内容の要約は以上)

 

◆中国のネットは岸田内閣の不支持率の高さと派閥裏金で大賑わい

CCTVと新華社が上記のような報道をしたので、中国のネットは大手の全国型ウェブサイトから地方あるいは個人のウェブサイトに至るまで、大喜びで日本の政治スキャンダル記事を転載し、思い思いの視点から批判を浴びせている。

12月11日の中国共産党機関紙「人民日報」姉妹版の「環球時報」の<“パーティ券”スキャンダルが岸田内閣に衝撃を与える>や、同じく12月15日の<パーティ券スキャンダルはますます大きくなり、多くの政府高官が辞任し、日本の政界を揺るがしている>をはじめ、数多くの論評があるが、あまりに多いので一つ一つリンク先を張らないが、中には「これはロッキード事件やリクルート事件に匹敵するもので、内閣改造などを行ってみたところで根本問題は解決しないはずだ。それで政権が浮上するなら、民主主義って何なんだ」というものなどが見受けられる。

日本は中国共産党を一党独裁と酷評しているが(独裁であることは確かだが)、これだけの不正資金が動いていても政権が沈没しないのなら、日本の政党もまた、自民党が実質上、一党独裁を続けているのに等しいのではないだろうかという一般ネット民の声もある。

そこには、まだほのかに残っている「民主主義への憧れ」と「巨大なる絶望」がない交ぜになっているものも見受けられ、複雑だ。

 

◆中国の腐敗と日本の政治資金裏金の違い

中国の腐敗文化には数千年の歴史があり、それが大地に染みこんでいるとさえ言えるが、少なくとも習近平政権になってからの反腐敗運動を考えた時に、改革開放以来の中国の腐敗と反腐敗運動には、大きな特徴と目標がある。

毛沢東時代は、ほんのわずかでも金儲けをしようとする者は「走資派(資本主義に走る者)」として非難の対象となり逮捕されさえしたが、改革開放後は抑えられていた中華民族特有の「商売心」、「金儲けへの魅惑」が堰を切ったように満開となり、特に天安門事件後に鄧小平の一存でトップに立った江沢民時代に入ると腐敗はピークを迎えた。胡錦涛時代にはリーマンショックなどを乗り越えるために不動産バブルで中国は金城国家になったので、胡錦涛時代の2010年には中国のGDPは日本を抜き、中国は世界第二位の経済大国に成長した。

その陰では世界の工場を支えた農民工問題が全中国に蔓延し、腐敗は軍部に深く根差して、軍部のハイテク化を阻害した。そこで習近平は反腐敗運動を展開してハイテク国家戦略「中国製造2025」を基に軍のハイテク化をも進めていった。

それを見抜けない日本の中国研究者やメディアは、習近平の反腐敗運動を「権力闘争」と位置付けて、NHKまでが「反腐敗の形を借りた権力闘争により、ようやく権力基盤を固めた習近平政権は」と、習近平政権の枕詞のように「反腐敗運動」を「権力闘争」と位置付けて喜んでいたが、その間に日本はアッという間に中国に追い抜かれてしまった。

ところが、自国、日本に目を向けてみよう。

日本の「自民党内の派閥」を考えると、「中国の権力闘争」どころではなく、日本は「自分個人が選挙に勝つために派閥に属し」、「その派閥が他の派閥を凌駕して、より多くの閣僚を自分の派閥から出すために政治資金のキックバックを利用している」。結局のところは、「自分個人が選挙で当選するため」であり、「その派閥が自民党内で力を持つために」、日夜パーティ券を売りまくることに専念しているにすぎない。

そこには「日本国家の戦略」とか「日本国民の幸せ」さえ眼中にない「自己本位」の「自分のための政治活動」しか存在していないのである。日本には、大局的な目的があって内閣がリーダーシップを執っているのではなく、選挙に勝つために派閥の政治資金の不正還流に血眼になっているだけだ。

野党が頑張ってくれればいいが、その野党がまた小さなテーマで違いを作っては四分五裂しているので、二大政党を形成して国政を論じるゆとりなどどこにもない。

結果、無党派層が多いのだが、この無党派層を惹きつけ牽引する人物も政党も現れないのだから、民主主義が泣く。

岸田首相よ、小手先の内閣改造などで逃げるな。

派閥など解体して、日本国民のための政治を行ってほしい。口先で「国民のために」などと言っても空々しいだけだ。大局を見る目を持て。

そういう傑物は現れてこないのだろうか。暗澹たる思いだ。

 

この論考はYahooから転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。2024年6月初旬に『嗤(わら)う習近平の白い牙』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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