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周庭さんもNED(全米民主主義基金)からの支援
2023年12月4日、カナダに亡命したことを明かす周庭さん(写真:ロイター/アフロ)
2023年12月4日、カナダに亡命したことを明かす周庭さん(写真:ロイター/アフロ)

香港の民主活動家だった周庭(アグネス・チョウ)さんがカナダに亡命し、二度と香港に戻らないことを表明したが、彼女もまたNED(全米民主主義基金)の支援の下でデモ活動をしていたのかと思うと、何とも複雑だ。

 

◆周庭さんは香港衆志(デモシスト)の創立者の一人

香港の政党の一つに香港衆志というのがある。2016年4月に創立されたもので、英語ではDemosistō、日本語では「デモシスト」と呼んでいる(以下、デモシスト)。デモシスト創設者の3人の名前を書くと、以下のようになっている。

 

     主席(党首):羅冠聡(Nathan Law、ネイサン・ロー)

     秘 書 長 :黄之鋒(Joshua Wong、ジョシュア・ウォン)

     副・ 秘 書 長:周庭(Agnes Chow Ting、アグネス・チョウ)

 

つまり周庭さんはれっきとしたデモシスト創設者の一人なのである。

2016年には第6回香港立法会議員選挙で党首の羅冠聡が5万票以上の票を獲得し、史上最年少での当選を果たし、1議席を獲得したが、後に議員資格を剥奪され、議席を失った。

2017年8月17日には、雨傘運動を扇動した罪で、羅冠聡、黄之鋒および周永康(アレックス・チョウ)らが禁錮刑を言い渡された。

2019年には逃亡犯条例改正案に反対する運動を行い、香港政府が撤回に追い込まれる一翼を担った。しかし2020年5月に全人大常務委員会で香港国家安全法制定方針が採択され、6月30日に中華人民共和国香港特別区安全維持法が可決・成立すると、黄之鋒や周庭らはデモシストから脱退し、デモシストは事実上解散した。

 

◆NEDはデモシストを支援し続けた

香港における民主化支援運動をNEDが始めたのは1994年で、拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の図表6⁻8に示したように、香港には2002年に、NEDの下部組織の一つである「全米民主国際研究所(NDI)」の香港事務所が設立されている。NEDは「第二のCIA」と呼ばれており、書名ではNEDと書いても日本人にはあまり馴染みがないと思って、「CIA」という単語を用いている。

香港の民主化運動は、すべてNEDかその下部組織であるNDIが組織しているので、まとめてNEDが指導組織していると断言していいだろ。

NEDはデモシスト創立前から創立すること自体を支援し、デモシスト創立後も頻繁に羅冠聡を呼んでイベントを開き、羅冠聡は毎回「黄之鋒や周庭と共にデモシストを創立した」と紹介している。NEDのウェブサイトに載っている情報の内のいくつかを以下にご紹介する。

 

1.2019年5月14日の<NEW THREATS TO CIVIL SOCIETY AND THE RULE

OF LAW IN HONG KONG>(市民社会への新たな脅威と香港における法の支配)では、デモシストの党首・羅冠聡(文中ではNathan Law)がNEDの招きによって講演をしている様子が動画でも見ることができる。

2. 2021年9月21日に開催された<CARL GERSHMAN DEMOCRACY SYMPOSIUM: THE FIGHT FOR A DEMOCRATIC FUTURE(カール・ガーシュマン 民主主義シンポジウム:民主主義的な未来への闘い)>では、カール・ガーシュマンNED会長の冒頭演説と共に、羅冠聡(文中ではNathan Law)が同じようにスピーチしている様子を観ることができる。

3. 2021年12月8日には<REBUILDING DEMOCRATIC MOMENTUM(民主化のモメンタムの再構築)>に、同じく羅冠聡(文中ではNathan Law)の名前を見い出すことができる。

4. 2021年12月14日の<FREEDOM: HOW WE LOSE IT AND HOW WE FIGHT BACK(自由:どのように失い、どのように奪い返すか)>は、NEDが、すでにロンドンに亡命した羅冠聡(文中ではNathan Law)が出版した本『Freedom: How we Lose it and How we Fight Back』の販売を支援している様子を紹介している。販売会では、亡命先での民主化活動のあり方や、中国共産党に対する世界的な弾圧に対抗する方法について対談した。(デモシストに関する列挙は以上)

 

このようにNEDはデモシストを支援し続けただけでなく、3人の創設者および若干の主要な活動人物に関しては、デモシスト解散後も亡命先で支援をし続けているのである。周庭さんは、3人の創設者の中の一人で、支援を受けているのはデモシストという活動家集団だったので、周庭さん自身も当然のことながらNEDの支援を受けていたということになろう。

少し古いが、2017年6月30日の<MARTIN LEE ON THE 20TH ANNIVERSARY OF CHINESE RULE IN HONG KONG(マーティン・リー、香港統治20周年を語る>では周庭(Agnes Chow)に関しても触れられている。そういった事例は非常に多いので、列挙はこの辺にしておく。

 

◆物心ついた時にはNEDが深く浸透

もちろん香港には、小さいころから民主の心を持って正義感に満ち溢れる少年少女たちは多かっただろうが、なにせNEDは1994年から香港入りしているので、周庭さんのように、1996年に生まれた人などは、物心つき成人したころには既にNEDが浸透しきっていて、その影響から民主化運動的な気持ちを持つに至っている要素もあるだろう。

そのための教育訓練センターや啓蒙組織などを、NEDは1990年代から立ち上げており、支援金も溢れるほど惜しみなく注いでいる。

1989年6月4日の天安門事件の後もそうだったが、主要人物はハーバード大学やオックスフォード大学などに迎え入れ、社会人となったあとにNEDの活動に協力して「再生産」をくり返している事実を、見たくはないだろうが、直視した方が良いだろう。

1940年代における国共内戦で中国共産党の食糧封鎖によって家族を餓死によって失っただけでなく餓死体の上で野宿させられた筆者としては、中国共産党の言論弾圧を受け容れることはできない。しかし、その上でなお、香港の民主化デモは、結局のところ中国共産党とNEDとの闘いであったことを見逃してはならない。

日本が戦争に巻き込まれないようにするためには、それが必要なのだ。

 

◆次のターゲットは台湾

民主化するのは悪いことではないにせよ、ウクライナのように、「ロシアを潰すために利用された例」も少なくないのだから、次のターゲットは台湾になることは目に見えているので、日本人に直接関係してくる。

その相関性に関しては、10月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartⅠ>から始まり、最終回として書いた12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartⅣ 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>などの「ウクライナ危機を生んだのは誰か?」シリーズをお目通し頂ければ、ご理解いただけるものと信じる。

台湾有事を起こすか否かは、中国共産党とアメリカのNEDとの闘いであって、来年1月の台湾総統選に、台湾人自身の民意が、どのような「判決」を下すかで、日本の運命も決まる。

そのことを考えれば、周庭さんの真相も、見たくはないだろうが、感情に流されずに冷静に直視した方がいいのではないかと思うのである。

 

この論考はYahooから転載しました。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。7月初旬に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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