23日正午、一中全会が終わり、新チャイナ・セブンが発表された。習近平以外のメンバーを通して、習近平三期目の指導部の構成と、習近平政権とは何ぞやに関して考察したい。
◆新チャイナ・セブンのメンバー
第20回党大会は10月22日に中共中央委員会委員205人を選んで閉幕した。
その中央委員会の委員が23日午前に一中全会(第一回中央委員会全体会議)を開催して、中共中央政治局委員25人と中共中央政治局常務委員7人を選出し、北京時間の12時5分に記者会見場に現れて、メンバーのお披露目を行った。
習近平以外に選ばれたのは「李強(り・きょう)、趙楽際(ちょう・らくさい)、王滬寧(おう・こねい)、蔡奇(さい・き)、丁薛祥(てい・せつしょう)、李希(り・き)」の6人だ。
筆者は胡錦涛政権時代の政治局常務委員が9人だったので、それを「チャイナ・ナイン」と名付け、習近平政権になってからは「9人」が「7人」になったので、改めて「チャイナ・セブン」と名付けた。
今般、その「7」が「5」になるか否か分からなかったが、減らさずに今まで通り「7」であったことは、せめてもの幸いだ。これが「5」になっていたら、独裁性がそれだけ高まるので、そこだけでも踏みとどまってくれたと、いくらかは安堵している。
しかし、新チャイナ・セブンの「顔」を見ると、安堵もしてはいられない。
王滬寧以外はみな、習近平か、習近平の父・習仲勲と何らかの関係を持った人ばかりなので、いざという時の歯止めが利きにくいという欠点を持つ。
◆新チャイナ・セブンの分業
では、まずは、新チャイナ・セブンが今後、党あるいは政権内でどのような役割を果たすかを、党内序列順に考察してみよう。この「役割」に関しては中国語では「分工」と称するので、ここでは「分業」という言葉を使うこととしよう。
表1:新チャイナ・セブンの分業予測
なぜ、表1のように推測できるかと言うと、まず序列2番目は、李克強総理がそうであったように、国務院総理になる可能性が高い。胡錦涛政権では、江沢民が刺客をチャイナ・ナインに送り込んだので、国務院総理の温家宝は党内序列3位でしかなかった。
こういうケースもなくはないが、新チャイナ・セブンで、そのような「刺客」めいた状況はなく、全員が習近平の「手下」のようなものなので、素直に党内序列2位の李強が国務院総理だろうと推測できるのである。
次にランクが上なのは全人代(全国人民代表大会)常務委員会の委員長で、これは党内序列3位か4位の者が担う。素直に考えて3位が趙楽際なので、彼が全人代の委員長で、政治協商会議の位置づけは全人代より下なので、党内序列4位の王滬寧が政治協商会議の主席になるだろうことが予測できる。
特に王滬寧はこれまで中央書記処書記という「党務」を務めてきたが、党務では、非共産党員である八大民主党派との交渉にも当たる。政治協商会議には非共産党員が多いので、役割としては適している。
問題は、党内序列5位と6位の蔡奇と丁薛祥の分業だ。
ここは判断が難しいが、蔡奇という人は、習近平に近いというだけで、少なからぬ党員、特に北京の党員は、「蔡奇は無能だ」という印象を持っている。
党内序列7位の李希は中央紀律検査委員会書記と決まっているので、残るは「党務と(常務/第一)副総理」のポジションである。「副総理」となると、韓正や孫春蘭あるいは劉鶴など他のこれまでの副総理はみな引退しているので、よほどしっかりした人物でないと国務院(中国中央政府)の方が持たない。李強を補強できる人物でなければならないので、蔡奇は外した方が良い。
このように消去法で行くと、蔡奇が党務で、丁薛祥が副総理となると考えていいだろうか?
いずれも、来年3月の全人代が閉幕する時の投票まで待たないとならないので、すべて「?」マークを付けておいた。
◆新チャイナ・セブンと習近平との近さ
筆者は10月16日のBSテレ朝「日曜スクープ」【習近平主席が3期目へ“共産党大会が開幕”権力掌握の動機と背景】で(10月30日まで視聴可能)、第20回党大会の注目点に関して「要は習近平が三期目を迎えるということが最重要事項で、誰がチャイナ・セブンになるかといったことは、小さなことだ」と言ったが、新チャイナ・セブンの顔ぶれを見ると、まさに「誰がなろうと、あまり関係ない」という思いを深くした。
王滬寧以外はほとんど「小物」で、王滬寧は江沢民政権・胡錦涛政権・習近平政権と三大政権に仕えてきたブレインだが、他は習近平にかつて仕えたことのある人たちばかりだ。中には習近平の父・習仲勲がかつて活躍した場所で生まれ、そこで仕事をしていたという人もいる。いつごろ、どんな感じで関係があったのかなどを、一覧表にしてまとめてみた。
表2:新チャイナ・セブンと習近平との関係
党内序列「2、5、6」は、習近平とともに(主に部下として)仕事をしているが、「3、7」は、習近平の父・習仲勲と関係していた場所で生まれたとか、そこでずっと仕事をしていたなど、「父との関係」を「愛しむ」ことにより結ばれている人もいる。
特に趙楽際は父親と同じ陝西省の訛りが直らなかった人で、それゆえに北京では言葉が聞き取りにくいことから、これまでは中央での仕事に声が掛からなかったのに、習近平は逆に、その「陝西訛り」が気に入って重用したのだから、父への思いがどれほど深いか、想像がつくだろう。
序列7位の李希に至っては、習仲勲が生まれて初めて(革命のための国民党に対する)クーデターを起こした「両当」という、珍しい名前の土地の生まれであり、そこで活躍し続けていた人だということで、習近平はすっかり李希のことを気に入ってしまったのだから、習近平が三期目を狙った理由が、「父の仇を討つ!」という思いであったことが鮮明となる。
父・習仲勲が鄧小平の陰謀により失脚し、16年間も投獄・軟禁・監視され、1978年に政治復帰した後もなお、1990年に鄧小平の一声で再び失脚させられたことは、拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』に詳述した。
党内序列7位の李希がいた「両当」に関しては、この本のP.27~P.28に書いてある。
新チャイナ・セブンは、拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の縮図のようなものだ。
逆に言えば、鄧小平によって失脚させられた父への思いを知らない限り、習近平の政治を理解することは不可能だとも言える。
なお、10月7日のコラム<習近平は最初から三期目を考えていた 国家副主席の位置づけから>に書いた「国家副主席」に来年3月の全人代でなるであろう人は新チャイナ・セブンの中にいないので、何もなければ習近平四期目はあると考えていいだろう。