中国にも統一教会が潜入した時期があり、中国は邪教として公安部が動き駆逐した。しかし日米は選挙のために統一教会を利用してきたため、統一教会にビジネス帝国を築かせ、台湾問題を煽るのを許したと中国は見ている。
◆環球時報の書き出し
7月19日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は<日米などの保守的政治勢力と緊密な関係を築き、“統一教会”は多くの国の政界に密かに浸透してきた>という見出しの報道をした。それをつぶさに考察したい。
まず冒頭部分:
――安倍晋三元首相が襲撃で亡くなったことで、韓国で誕生した謎の組織、世界平和統一家庭連合が世界の注目を集めている。1950年代に設立されたこの組織は、日本だけで数十万人、世界中では数百万人、いや数千万人の信者がいるとも言われている。統一教会の創設者である文鮮明は、さまざまな国の指導者や政治家に固執することを好み、特に日米の保守的な政治勢力と緊密な関係を築いてきた。この組織は反共産主義活動に従事しており、メディアや政治家を利用して「中国本土が台湾を武力攻撃する」という噂を作り上げてきた。しかし長期にわたる 統一教会の活動は、多くの国で人々の日常生活を破壊してきたのに、日米などはそれを黙認し、中国やシンガポールなどの国では邪教(カルト集団)として厳しく取り締まってきた。(ここまで概要を引用)
以下、「環球時報」の報道の小見出しごとに概略を引用して略記する。
◆「現代的企業管理観念」を持つ邪教組織
――文鮮明は1920年に現在の北朝鮮の小さな村で生まれたと自称している。朝鮮戦争が休戦協定した翌年の1954年、文鮮明は韓国に世界キリスト教統一協会(略して「統一教会」)を設立した。
韓国では、直ちに多くの若者を魅了し、統一教会は設立から1年以内に、韓国に約30の教会活動センターを設立した。文鮮明が1960年代初頭にソウルで最初の合同結婚式を主催して以来、統一教会の規模は拡大し始めた。 2012年、統一教会のスポークスマンは、「統一教会は194の国と地域に宣教師を派遣し、世界中に300万人の信者がいる」と主張した。ロイター電によると、「世界中に数千万人の信者がいると主張する信者もいる」とのこと。
1963年、文鮮明は韓国に統一教会財団を設立し、その子会社はレジャー、建設、防衛、化学、自動車部品などのさまざまな産業で事業を展開した。
アメリカでは、統一教会の下で、保守的なメディア「ワシントンタイムズ」を創設したり、ウィンダムニューヨーカーホテルを建設したりしている。
統一教会には強力な洗脳能力があるだけでなく、「現代の企業管理概念」を持ち、宗教団体を企業として運営し、産業、金融、文化、教育、メディアなどに投資することによって政界へと浸透していった。
◆日本の自民党との緊密関係は公然の秘密
――AP通信やフィナンシャル・タイムズおよび他のメディアの報道によると、彼は反共産主義運動を実行するために右翼政治グループ「国際勝共連合」を設立しただけでなく、日米欧の政治的グループや国家の指導者と深い関係を確立しようと努めてきた。
1959年、統一教会の宣教師・崔翔翼は日本に密入国し、日本で説教をし始めて大成功を収めた。統一教会は日本に約60万人の会員を擁しており、自民党との緊密な関係は長い間日本の政治における公然の秘密だった。
自民党の極右勢力で、第二次世界大戦中の日本のA級戦犯でもある、安倍晋三の祖父・岸信介元首相は、統一教会と特別な関係を持っている。
AP通信は、日本の統一教会の本部がかつて岸信介の東京の住居の隣にあったと報道している。岸信介と文鮮明は一緒に写真を撮り、公開した。安倍元首相を殺害した山上徹也容疑者は、統一家庭連合(統一教会)を日本に持ち込んだ岸信介を恨み、安倍晋三も組織に関連しているとして恨んでいたという。
日本の弁護士で宗教事件の専門家である紀藤正樹氏は「当時の日本の指導者たちは、統一教会を日本の反共産主義的見解を促進するためのツールと見なしていた」と述べている。韓国の「漢民族日報」の最近の報告によると、岸信介は1970年代に自民党が「スパイ防止法」などの反共産主義に関する立法の過程で、財源と世論を獲得するために、日本統一教会が組織する「国際勝共連合」を積極的に利用したという。
何十年もの間、統一教会の関連組織と与党自民党議員との関係は絶えず発展し続けており、統一教会は自民党に確固たる政治的支持と票田を提供し続けてきた。
1986年、統一教会の公式新聞である「思想新聞」は、「日本の選挙で、統一教会に関係する130人が衆議院議員と参議院議員に当選した」と報じている。また日本の「週刊現代」は1999年に「多くの日本の議員が国際勝共連合の活動に参加した」ことを明らかにした。その(「週刊現代」の)報道によれば、「二十数名の議員の事務所には、少なくとも1人の統一教会のメンバーが張り付いていた」とのこと。
統一教会被害者対策弁護士会の渡辺博氏は、「調査の結果、100人以上の統一教会のメンバーが日本の国会議員の秘書を務めた経験を持ち、彼らが奉仕した議員の言動を逐一、統一教会に報告していた」と述べている。一部の秘書に至っては、国会議員からではなく、「国際勝共連合」から給与をもらっていたとのこと。
安倍元首相が二度目の政権を握った後、自民党と統一教会(統一家庭連合)の関係はさらに緊密になった。統一教会被害者対策弁護士会は、「安倍政権では統一教会関係者に重要な責任を委ね、自民党員の多くが統一教会の活動に公けに参加した」と述べた。なぜなら、統一教会は信者に特定の議員に投票するように指示するからだ。
2021年9月、統一教会の支部が仁川でイベントを開催した際、安倍元首相はビデオでスピーチし、統一教会の長と他の出席者に「敬意」を表した。いくつかの日本のメディアは、この出来事が、容疑者・山上徹也が、安倍元首相が統一教会と関係があると信じ、彼を殺害することを決意した理由の1つであると報道している。
◆アメリカ議会の議員は教主とその夫人に金の冠を与えた
1972年、文鮮明はアメリカに移住し、統一教会はアメリカで大規模な活動を開始した。ニューヨークタイムズによると、統一教会が最初に米国で発展し始めたときはカルトと見なされていたと報じている。
ところが、アメリカの政治や娯楽界の有名人を統一教会関連のイベントに招待し大量の資金を注ぎ始めてから事態は変わっていった。
AP通信などによれば、統一教会がニクソン、レーガン、ブッシュシニア、トランプなどの保守派の歴代元大統領と緊密な関係を築いてきたが、最初のきっかけはニクソン元大統領が「ウォーターゲート事件」で困窮していたときにニクソンを助けたことだったという。徹底してニクソンを支持するための大規模集会を開催し、ニクソンを窮地から救ったのだという。
そのためか、2004年3月23日、アメリカでは奇妙な出来事が起きた。なんと、 「平和賞ディナー」と呼ばれるイベントが米上院議員会館で開催され、多くの米議会議員が出席する中、イリノイ州の民主党員であるデイビス議員が白い手袋を着用し、文鮮明と彼の妻の頭に2つの金の冠を乗せたのだ。
◆安倍晋三狙撃事件が鳴らす警鐘
統一教会は、創設後まもなく、韓国文化自由財団を含む反共産主義グループの支援を開始し、アメリカの「ラジオ・フリー・アジア」に資金を提供した。
さらに統一教会は台湾問題に干渉し始めた。2009年には、台北で世界平和同盟および台湾当局との会合を共催し、台湾がより多くの国際事業に参加すべきだと訴えた。文鮮明のコントロール下にある「ワシントンタイムズ」は、中国本土が台湾を「攻撃」しようとしていると宣伝し、常に「中国の脅威」を誇張することに専念している。
「中国反邪教網」の情報によると、1978年の改革以来、統一教会は、中国に定着して拡大しようとし、投資支援、観光、訪問などの名目で中国に頻繁に浸透し、中国にも根を下ろそうとしてきた。
特に統一教会の関連組織「国際教育基金会」は、文化交流と教育協力の名の下に、たとえば、「北京、天津、広州、瀋陽、西安など」中国のいくつかの都市に浸透しようと試みた。統一教会が創立した韓国の鮮文大学も、中国の大学と協力して中国人学生を統一教会の会員にさせるべく勧誘活動をおこない、香港やマカオにまで魔の手を伸ばそうとしていた。
それに対して1997年5月、中国公安部は統一教会を邪教(カルト)に指定した。1982年にシンガポール政府も統一教会をカルトとして分類して禁止し、キルギスタンはまた、統一教会がその境界内で活動することを禁じている。 1995年の終わりに、英国内務省も文鮮明の国内滞在の禁止を発表した。
しかし最も深く政界に浸透しきっている日本は、統一教会という邪教に無防備だった。いくつかのメディアや統一教会被害者対策弁護士会が訴えても、日本社会は無頓着で、安倍元首相暗殺によって初めて統一教会という邪教の存在に目を向け始めた。
一方、断固たる取り締まりなどの様々な措置を講じてきた中国では、今になってその取り締まりの正当性が脚光を浴びている。潜在的「安倍暗殺事件」は、今後は世界中の政府がカルト活動を真剣に重要視すべきであることを示している。
以上が「環球時報」の報道の概要である。
◆安倍元首相射殺事件は「中国邪教網」の中で扱われている
中国にはかつて法輪功を取り締まる「610弁公室」というのが公安部の管轄下にあった。しかしそのトップにいた周永康(チャイナ・ナインの一人)が汚職で逮捕されると、その部下である610弁公室の主任だった李東生も腐敗で捕まり、同時に610弁公室も撤廃されて、2017年9月22日,に公安部管轄下の中国反邪教網が設立された。
現在、安倍元首相射殺事件のほとんどは、以下に示すように、このウェブサイトで報道されている。
これを掘り下げていくと、実は香港の国安法につながっていくのだが、あまりに長くなったので、またの機会に譲ろう。
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