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G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か_その2:対アフリカ中国債務はわずか20%
2021年6月19日
G7首脳会談後、記者会見するバイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)
G7首脳会談後、記者会見するバイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)

世界銀行やジュビリーなどのデータによれば、対アフリカ債務の20%しか中国は占めていない。20%で開発途上国を掌握しているとすれば、G7には何ができるのか?その資金は誰が出すのか?(本稿は「その1」の続きである。)

◆G7首脳会談コミュニケで触れているアフリカ

6月13日に発表されたG7首脳会談コミュニケ冒頭には以下の文章がある(全文和訳は外務省のHP )。

 ――世界中で他国・地域との我々のパートナーシップを強化する。我々は、クリーンかつグリーンな成長のためのイニシアティブを通じたものを含め、インフラ投資への我々のアプローチの段階的な変化を通じ、世界のより良い回復のための新たなパートナーシップを発展させる。我々は、世界合計で1,000億ドルという野心に達するとの我々の目標を支えるため、最もニーズのある国に対する国際通貨基金(IMF)からの支援を増強させることを含め、アフリカとの新たなディールに向けて、我々の現在のパートナーシップを深化させることを決意する。

この文章は6月16日のコラム<G7「対中包囲網」で賛否両論、一時ネットを遮断>に書いたように「妥協の産物」なので何とも分かりにくい。そこで、これまでのバイデン大統領の発言などから「分かりやすい日本語」に翻訳すると、以下のようになる。

 ――米中の覇権争いは、民主主義国家と専制主義国家の間の闘いである。専制主義国家に打ち勝つためには民主主義国家が団結しなければならない。専制主義国家の代表である中国は、巨大経済圏「一帯一路」構想により貧困国(極貧国)を含めた発展途上国を、不透明な債務による債務漬けという手法で掌握しているので、G7諸国は一致団結して透明な(クリーンな)方法で貧困国や発展途上国が多いアフリカなどに投資して、新しいネットワークを創らなければならない(=「一帯一路」に対抗しなければならない)。そのためには、たとえばIMFなどを通して1,000億ドルほどを集めて、アフリカの貧困国や発展途上国に投資しすることを決意する(=中国に代わって民主主義諸国が掌握する=中国を追い出すことを決意する)。

といったことを言っているのだと考えると、話が呑み込みやすい。

◆アフリカにおける債務の現状

ではそのアフリカにおける債務の状況はどうなっているかを、世界銀行やジュビリー債務キャンペーン(Jubilee 2000運動の起点となったイギリスの国別組織の後身で、最貧国の債務帳消しを求めて1990年から世界的に広がった社会運動)(以下、ジュビリーと略称)などのデータから考察してみよう。

中国のデータを用いると、特に債務に関しては(私を含めた)多くの人が「信じられない」という拒否反応を持つであろうことは分かっているので、敢えて世界銀行とジュビリーのデータを用いる。

図1に示したのは、世界銀行の2019年データに基づく「2019年末サハラ以南アフリカ諸国の債務」の円グラフだ。サハラ砂漠以北への投資はあまりないので、ここは計算の対象に入っていない。

 

図1:世界銀行の2019年データに基づき筆者が独自に作図
図1:世界銀行の2019年データに基づき筆者が独自に作図

 

この分類は短期債務か長期債務かに注目した分類で、長期債務には「多国間、二国間、民間債権者、民間の非保証債務」の4種類がある。その内訳を右側に示した。

ジュビリーのデータは、中国の対アフリカ債務に関しては「最小値18%」と「最大値24%」の両方を計算して示し、最終的に中国の債務の割合は平均して「20%程度」と結論づけている。ただしジュビリーの場合は、全アフリカを網羅している。それでもサハラ以北のアフリカに関しては中国の投資もほとんどないので、微少なずれであるとジュビリー自身が説明している。

では先ず、「最小値18%」の方を、図2として示そう。

 

図2:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最小値の場合の債務分類」
図2:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最小値の場合の債務分類」

 

図2の緑色「民間」に「中国以外」と書いてあるのは、中国の場合、基本的に「民間」はないということだとジュビリーは説明している。

では同様にジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最大値の場合の債務分類」はどのようになっているのかを図3に示す。

図3:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最大値の場合の債務分類」
図3:ジュビリーのデータに基づく「対アフリカ債務における中国債務最大値の場合の債務分類」

 

図2と図3の元データに基づき、ジュビリーは中国の債務を約20%と計算している。

その一方で、アフリカ諸国が返済した利息の総額の17%が中国に充てられているとジュビリーは書いているので、「中国の利回りがほかの債務より低い」ことを示しているということが言える。

最後に同じくジュビリーが調べた、アフリカの返済リスクが最も高い15ヵ国に対する債権者の割合を見てみよう。アフリカには、投資しても戻ってこない可能性がある国がいくつかあり、その中の15ヵ国が最もリスクが高く、こういう国に投資したら返済してもらえないと考えた方がいい。

その15ヵ国は「ブルンジ、カーボベルデ、中央アフリカ共和国、チャド、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、モザンビーク、サントメ・プリンシペ、南スーダン、スーダン、ジンバブエ、ジブチ、ザンビア、カメルーン」である。

図4は、「債務リスクが最も高いアフリカ15ヵ国の債権者」の分布を示したものだ。

図4:「債務リスクが最も高いアフリカ15ヵ国の債権者」の分布(ジュビリー統計から筆者がグラフ化)
図4:「債務リスクが最も高いアフリカ15ヵ国の債権者」の分布(ジュビリー統計から筆者がグラフ化)

◆ここから何が見えるのか? 

さて、これらから何が見えるかと言うと、バイデンは「中国がアフリカの開発途上国などに膨大な資金を貸し付けて、高い利息を要求し、返済できないようにしておいて、開発途上国を債務漬けにして、中国が握りつぶそうとしている」と非難しているが、それはデータとは合致していないというが先ず見えてくる。

対アフリカ債務は、中国が20%しか占めてないとすれば、残り80%は中国と無関係な国あるいは組織が投資しているわけで、その上でアフリカの貧困国や発展途上国が債務漬けになっているとすれば、論理的には残り80%の方の責任の方が大きいということになるだろう。

また返済した利息の総額の17%しか中国が占めてないとすれば、中国の利息は残り80%の債権者に比べて低いことになり、中国が高い利息で債務漬けにしているという論理も成り立たなくなる。

おまけに返せないかもしれないという、返済リスクの最も高いアフリカ15ヶ国への債権者として、中国はわずか15%の割合しか持ってないので、債務漬けで対象国を潰すような状況になっているとすれば、残り85%の国あるいは組織が何やら悪いことをしていることになる。

実際の状況から言うと、実は「民間」による投資の割合が一番大きく、世界銀行の統計によれば、ここ10年間ほどで約200%増になっているという。民間の債権者は、対象国の政府官僚などと個人的関係になり、お金は対象国政府官僚のポケットに入って、対象国の開発には貢献していない。言うならば横領で、しかも民間の場合は利息が高いので、債権者も儲かる仕組みだ。だから200%も増えた。

まさに「腐敗の構図」なのだが、ジュビリーのデータによれば、この「民間」には「中国は入ってない」ので、中国はこの「腐敗の構図」の中には入らないことになる。

◆どうすればG7インフラ投資新構想は成功し得るのか?

もう一つ、これらのデータから見えてくるのは、「中国はわずか20%の投資で、アフリカ諸国を掌握しているということになってしまう」という事実だ。

そうだとすれば、なんとまあ、「効率が高い」ことだろう。

効率が良くなければ、アフリカ諸国が中国に付いていくわけがないので、いったい中国はどのような方法でアフリカ諸国をリードしているのかをG7首脳は研究した方がいいということにつながる(中国の方法に関しては文字数が膨大になるので、ここでは省く)。

また資金を投入するに当たり、上述したG7首脳会談コミュニケの冒頭には「IMFからの支援を増強」と書いてある。

図2、図3によればIMFは4%しか占めていないが、世界銀行のデータによればアフリカ投資の総額は6,250億ドルなので、IMFは228億ドル出し、中国は20%として計算すると1,250億ドル出していることになる。

1250億ドル(中国) – 228億ドル(IMF)=1022億ドル(=コミュニケ金額)

となることから、コミュニケの「1,000億ドル」という金額は、本稿で示したデータから算出されたものと推測される。

この金額で、ようやく中国の出資額とIMFの出資額が同等になる。

同等になったところで、コラム「その1」で書いたような中国とアフリカの長年にわたる結びつきがあるので、「黒人」を蔑視してきた白人、特にアメリカが、「中国を追い出すほどに」受け入れられるのか否かは別問題だ。アフリカ諸国が漁夫の利を得て繫栄すれば、実は中国は得をする。中国の最終目的は、アメリカ市場から締め出された時の新たな市場を創ることにあるのだから、長期的には中国に利する結果をもたらすだろう。

なお昨年3月23日のコラム<背後に千億円の対中コロナ支援:中露首脳電話会談>に書いたように、IMFの専務理事にブルガリアのクリスタリナ・ゲオルギエバを就けるために奔走したのは習近平夫妻だ。果たしてIMFが「反中」で動けるかも疑問の一つである。

◆資金は誰が出すのか?

資金は誰が出すのかに関してコーンウォールでは誰もが口をつぐんだ。質問されたドイツのメルケル首相は「まだ議論する時ではない」と逃げた。

しかしコミュニケが発布された2日後の6月15日(日本時間16日)、ブルームバーグが「日本がアメリカ国債を364億ドル購入した」とすっぱ抜いた。

アメリカは日本に「3分の1」ほどは出させるつもりだろう。記事によれば購入したのは日米首脳会談が行われる前後のようだ。周到に計算されている。

投入されるのは、私たち日本人の血税である。

こんなことになったのも、日本が中国経済を巨大化させたからであることを忘れてはならない。

鄧小平を神格化し、天安門事件後も「中国を孤立させてはならない」として日本が対中経済封鎖を破って、今日の中国の繁栄をもたらし、今日の厳しい国際情勢を招いているのである。そのことを主張したのが拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させて鄧小平への復讐』だ。

この現実を明確に自覚せずに中国分析をすることはできないし、日本の歩むべき道を客観的に把握することもできない。

7月1日は中国共産党建党100周年記念に当たる。

これを機に中国共産党とは何か、中国とは何か、そして日本は中国の強大化に向けて何をやってきたのかを認識してほしいと切望する。

ちなみに菅首相は17日の記者会見で「私は対中包囲網なんか作りませんから」と述べたと産経新聞が報じている。ポロリと本音が出たか…。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授、北京大学アジア・アフリカ研究所特約研究員、上海交通大学客員教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗 1月末出版、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文版・英文版もあり)、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Chinese Issue Global Research Institute, Professor Emeritus, Doctor of Science at the University of Tsukuba. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Chazu Chugoku Kenkoku no Zanka (Japanese Girl at the Siege of Changchun) (including Chinese and English versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chaina jajji — Motakuto ni narenakatta otoko (China Judge: The Man Who Couldn’t Become Mao Zedong),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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