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「中露朝韓」急接近!――ラブロフ外相訪中「モスクワ便り」
2021年3月25日
中露外相会談(写真:AP/アフロ)
中露外相会談(写真:AP/アフロ)

ロシアのラブロフ外相が中国・韓国を訪問し、中朝首脳が親書を交換した。そして北のミサイル発射。何が起きようとしているのか。プーチン側近とも接触のある「モスクワの友人」からの便りを交えながら考察する。

◆ラブロフ外相訪中、桂林漓江の川面から発信

アラスカから中国に戻ってきた王毅外相は、3月22日、中国の南方にある広西チワン族自治区桂林で、モスクワからやってきたロシアのラブロフ外相を迎えた。

中国外交部のウェブサイトから始まって、中国共産党および中国政府系の多くの報道機関で大々的に報道されたが、今回興味を惹かれたのは、ラブロフがTikTokも駆使しながら桂林にある漓江の船上から自らの姿を動画発信していることである。それも数多くのサイトがあるが、こちらの動画が、情報量が多いかもしれない。

極寒のアラスカとの対比を成すかのように、温暖な南方の風水に恵まれた桂林を選んだのにも、アメリカへの当てつけのようにさえ見える。

3月22日付のコラム<米中アラスカ会談――露わになった習近平の対米戦略>に書いた米中外交トップ会談では、王毅が記者に「何を食べましたか?」と聞かれて「カップ麺だ」と答える一場面があったのだが、宿泊したホテルでアメリカ側は食事を提供しなかったのか、楊潔チも王毅もカップ麺を食べてから会談に臨んだことが中国のネットでは話題になっており、それとの違いを強調するかのように、川面での優雅な「おもてなし」の写真がネットで数多く飛び交った。

以下に、その写真の一つを転載する。

2021-03-23 ラブロフと王毅_桂林の川面で

2021-03-23 ラブロフと王毅_桂林の川面で

この光景に目が奪われたが、話し合われた内容はもちろん「中露関係の緊密化」であり、「アメリカの理不尽な内政干渉と自国の価値観で他国を批判することに抗議する」という共闘目標を掲げることであった。中露ともに「国際問題を解決するのは国連であり、判断基準は国連憲章にある」と強調し、アメリカが小さな数ヵ国のグループを国際社会における価値基準とすることを強く非難している。

中露がここまで「アツアツ」になったのは、かつてなかっただろうという印象を持った。

そこで、プーチン大統領側近やロシア政府などとも接触のある「モスクワの友人」を取材した。

◆「モスクワの友人」からの便り――かつてない中露蜜月

以下、「モスクワの友人」から頂いた多くの情報の内、一部を取り出して概要を示す。


ラブロフ外相はプロ中のプロの外交官で、国連大使も歴任した米国通でもあります。もちろん今回の訪中は大統領の強い意を受けてことです。私自身、長いことソ連時代からの中ソ関係、そしてソ連崩壊後の中露関係を見てきましたが、ソ連時代を含め、ここまで蜜月になってきたことはなかったように思えます。

バイデン政権の本質は、反露・反中であることは明確なので、これは必然的に更に中露の関係を強めていきます。ラブロフ外相自身、訪中に先立って「ロシアにとっての戦略的最重要パートナーは中国である」と言い切っており、もはや同盟成立をも辞さないトーンになりつつあるように見受けられます。

ロシアは、米国とは頻繁に対立しても、欧州とはうまくやってきたし、欧州に現実的かつ大局観ある政治家もいましたが、この欧州との関係が近年稀にみるほどに悪くなっています。西とうまくできないことが明確な中、唯一の同志が中国という訳です。

実を言いますと、ロシア国民は元々中国や中国人が好きではありませんが、中国同様、国民が政治や外交を決める国ではありません。米国流価値観への挑戦は長年ロシアが言い続けてきたことではあるし(多くの点で米国自身に問題があることも確かです)、ようやく中国もそれが分かってきたか、という思いさえあります。

ロシアにいて、今懸念している材料はウクライナ問題です。ロシアから東ウクライナのドンバス地方の紛争を激化させるつもりはないと考えていますが、ウクライナの現政権の支持率急落、その一方でバイデン政権がウクライナへの軍事支援を拡大する方針を打ち出していることに力を得て、「ウクライナ+米国」、そして英国までがこの挑発行為をするのではないかという見方がここではあります。中国のウィグル、香港、台湾の問題などと違って、今も紛争地域がそのまま残っており、ウクライナ側の対応如何では軍事紛争が拡大します。

一方、このウクライナへの接近を中国も図っていました。特に軍事、ロケットと航空技術の分野で、金に困っているウクライナの事情につけ込み、航空機エンジンの会社の買収を企てましたが、米国によって阻止されました。今のウクライナ政権は米国の支持なしには持ちませんので、当然の対応ですが、中国はどう出るか、「もうウクライナと手を握ることはない」くらいの対応になるでしょう。米国の影響力が更に強まっていますし。こうなると、ウクライナを巡っては利益相反があったロシアと中国が更に結びつきを強めると思われます。

中国は、2014年のクリミア併合を未だに国家として承認はしていませんが、ロシアのメデイア等(当然政権の代弁者ではあります)では、中国も米国の一連の理不尽な対応を見て、ロシアとの関係強化を打ち出すためにクリミア併合承認に動き出す可能性がある、というような気の早い報道もありました。

余談ですが、プーチン大統領はバイデンが彼を「殺人者と思う」というコメントに対し、冷静な対応を見せて、間にメデイアなどを入れず、直接オンラインでつないで衆人環視の下で「明日にでも議論しようではないか」と言いました。バイデンのディベート下手を見透かしてのことではあります。こういう即興での会談では頭の回転の速さと弁舌のうまさの差がはっきりと出ます。この点では、勝負にならないでしょう。

共産党という組織に守られている中国共産党のリーダーたちもこの点では公開討論にも慣れていないし、こんな提案はできないかと思います。

ロシアから見ると、2014年のクリミア併合以来、ずっと欧州と米国の理不尽な振舞に怒りまくり、耐えてきたところに、中国という同志が現れたことは朗報だろうと思います。


◆ラブロフ外相訪韓と中朝首脳親書交換

習近平にはロシアとの関係を徹底的に強化して、対米戦略を練っていくという狙いがあることは確かだ。

その証拠に3月23日の夕方、ラブロフは韓国を訪問した。

24日に行われる韓露国交樹立30周年を記念する「2020-2021韓露交流の年」開幕式に出席するためという口実はあっても、中国が韓国を中露側に引き寄せるための行動であることは明らかだ。力関係から言って、習近平がプーチンに頼み、プーチンがラブロフに訪韓させたと見るのが正しいだろう。

というのは、「モスクワの友人」によれば、ロシアにおけるラブロフの訪中は、そんなに大きく扱われてはおらず、訪韓に関してはほとんど報道されていないとのこと。それに比べて中国におけるラブロフの行動に関する報道の扱いは尋常ではなく大きく熱が入っている。訪韓のニュースも、私自身、実は中国の報道で知った。

ラブロフの韓国入りと時間を合わせて、3月23日には、習近平は北朝鮮の金正恩と口頭親書を交換している。習近平は金正恩に「両国人民に立派な生活を与える用意がある」と北に対する経済的支援を示唆し、金正恩は習近平に「敵対勢力の挑戦に対して両国の協力を強化したい」と「仲間」としてのエールを送っている。

これは即ち、先ずは中露朝で蜜月関係を強化し、朝鮮半島で韓国だけが孤立している危険さを韓国に身に染みて実感してもらい、一人韓国だけがアメリカ側に付いているのは安全保障上も危ないと思わせるのが狙いだろう。

◆北朝鮮のミサイル発射

中国は北朝鮮がミサイルや核実験などで暴走するのを嫌っているが、無難な「通常の軍事訓練的な範囲内」のミサイル発射ならば、このタイミングでやってくれるのは、大いに歓迎だろう。

日本では専ら、「バイデン政権の出方を見極めてから、どうするかを北は決めているのだ」といった傾向の分析が多いが、背後にいる中国の動きを見逃さない方がいい。

文在寅の「右を見たり、左を見たり」という風見鶏外交はみっともないが、日本は北を非難したり「アメリカとともになら、中国を名指しで批判する」という段階までようやく来てはいるものの、習近平の国賓来日をまだ「中止する」とは言えないお方が政府与党にはおられる。

菅政権も「そのお方」が背後にいての政権のようなので、「右を見たり、左を見たり」外交は基軸にあるように思われてならない。

情けないではないか。

いや、情けないだけでなく、これはもう「危険な領域にある」と危惧するのである。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授、北京大学アジア・アフリカ研究所特約研究員、上海交通大学客員教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗 1月末出版、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文版・英文版もあり)、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Chinese Issue Global Research Institute, Professor Emeritus, Doctor of Science at the University of Tsukuba. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Chazu Chugoku Kenkoku no Zanka (Japanese Girl at the Siege of Changchun) (including Chinese and English versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chaina jajji — Motakuto ni narenakatta otoko (China Judge: The Man Who Couldn’t Become Mao Zedong),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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