2020年末、世界的に市場で鉄鉱石と石炭が極端に高騰した。この二つの原料レベルの一次製品は我々の生活と密接な関係を有し、製鋼には大量の鉱石と石炭を要する。しかも鋼材は不動産、大規模インフラ建設、自動車、家電等の多分野に関連し、石炭も発電や暖房等の多方面に広く用いられる。資源埋蔵量と生産能力から言って、この2種類の商品はここ数年で相対的に供給過剰の状態にあるのに、何故これらは何れも2020年下半期に高騰したのだろうか?以下では中国国内のメディアと学者のいくつかの観点をまとめ、次の2方面から自らの考えを述べる。
一、米中大国間競争から派生した豪中競争が鉄鉱石、石炭の最近の価格高騰を招いた表面的原因
鉄鉱石、石炭の最近の高値推移は米中大国間競争から派生した豪中間の政治と経済貿易競争の結果である。中国は鉄鉱石と石炭の消費大国である。しかも中国が輸入する鉄鉱石と石炭は相当な割合がオーストラリアからのもので、鉄鉱石の割合が特に高い。中国は世界でもインフラ建設の規模が最大の国であるが、中国の自国鉄鉱石はコストが高く、品質が劣るばかりでなく、主に量が充分ではない。中国は毎年11億トンの鉄鉱石の輸入を必要としているが、凡そそのうち7億トンがオーストラリアからのもので、約67%を占める。ほかにブラジル19%、南ア3%、ペルーとマレーシアが各2%である。その他の国が約7%を占める。このような輸入総量と構造が中国の鉄鉱石の面におけるオーストラリアへの依存をもたらしている。
中国経済が迅速にコロナ禍から回復し、大規模インフラ建設、都市化、内部経済循環等が何れも急激に拡張しており、より多くの石炭と鉄鉱石が必要とされている。中国の石炭使用量は非常に大きく、2019年一年の消費は37.億トンを超えた。その実、中国は石炭が足りないのではなく、地下に埋蔵された石炭は少なくとも300年間利用可能である。しかし問題は、中国の石炭資源分布が極めて不均等なことで、北方と西北に比較的多く、東南では比較的少ない。然るに経済の中心は東南部、とりわけ東南地区にある。石炭は体積の大きな商品で、輸送量が増せばコストが高くなる。通常の場合、オーストラリアから海運での中国の港までのCIFは、山西の炭坑の産出価格よりも安い。もう一つの原因は、中国国内の石炭の多くが採掘コストが高く、発熱量の低い褐炭であることである。中国東南の沿海経済発達省がオーストラリア、インドネシア等の国から石炭を輸入しても却って品質がより優れ、海運コスト価格がより安い。従って、中国は毎年3億トン近い石炭を輸入しなければならない。こうして、中国の毎年の石炭消費総量は40億トンで、全世界の石炭消費量の約半分を占める。その実、オーストラリアの石炭生産量とFOBは世界で優勢という訳ではない。世界最大の石炭産地は中国内蒙古で、年産量は10億トンに達する。世界第2位の産地は中国山西省で、年産量は9.7億トン。世界第3位はインドで、7.1億トン。世界第4位は中国陝西省で、年産量は6.3億トンである。中国の石炭の主な輸入元は、インドネシア、オーストラリア、フィリピン、モンゴル、ロシア等である。 オーストラリアから見ると、石炭は主にインド、日本及び中国に売る。 ここ数年、中国はオーストラリアとの関係があまり好くない。一つの重要な原因は、トランプ氏就任後、米国の対中政策が激変し、中国を全面的に封じ込め始めたことである。オーストラリアは米国に追随し、急先鋒となっている。オーストラリアが中国に対抗することに熱心な所以は、イデオロギー上の原因以外にも、中国のオセアニアやオーストラリア内における影響力が強くなり過ぎるのを懸念しているからである。オーストラリアは面積が770万平方キロメートルある反面、人口は約2500万人しかおらず、北京若しくは上海の実際の常住人口にも及ばない。オーストラリアは中国から最も近い、規模の比較的大きな英語圏の国であり、従って中国人移民の重点目的地となっている。中国人移民が増えれば、影響力も増し始め、オーストラリアの白人グループの緊張と抵抗感を引き起こす。そのほか、オーストラリアは一貫してオセアニアを自国の勢力範囲としてきた。中国の影響力が増大後、オーストラリアは圧力を感じ始めた。中国は外部の競争相手であるだけでなく、内部の潜在的リスクにもなった。オーストラリアは米国が構築した“ファイブアイズ”のメンバーであり、米国と最も緊密な同盟関係にある。中国人移民の数を制限し、移民の政治への参与を制限する以外に、トランプ氏の呼びかけにも応じて、ファーウェイの機器を禁止したほか、米国の航行の自由作戦にも参加、軍艦を南シナ海に派遣して示威行動を行なった。但しオーストラリア当局は重要な一点を忘れている。それは自国が経済の上で高度に中国に依存していることである。とりわけ輸出製品の40%の額が中国向けであり、鉄鉱石、石炭、液化天然ガス、牛乳、海鮮等である。現在トランプ氏が大統領選に敗け、オーストラリアはバツが悪い。オーストラリアのように“中国から恩恵を受けながら、中国に唾する”国に対し、中国は当然制裁をしなければならない。従って、先頃あるメディアが、少なくとも53隻のオーストラリア産石炭を載せた輸送船が、海を漂流中で、一時的に中国で入港できなくなっていると報じた。さらに数十隻の液化天然ガスの輸送船も、中国で入港できなかった。中国人の気質からすれば、たとえ国内で石炭が欠乏し、電気が欠乏したとしても、オーストラリアのような国に対しては同等のお返しをするだろう。そのほか、中国はオーストラリア産の大麦、牛肉、ワイン、綿花等の農副産品に対しても様々なレベルの貿易制裁を実施した。ある評論は、オーストラリアは自国の対中政策の傲慢さと浅はかさの為に代価を支払う時が来たとしている。私個人もこのような観点に賛同する。中国とオーストラリアの貿易問題は、今回の鉄鉱石と石炭の高騰の誘引となった。私個人は、鉄鉱石の高騰は資本投機の要素以外に、オーストラリア側において、中国がオーストラリアの鉄鉱石に比較的依存していることに鑑みて、オーストラリアが或いは鉄鉱石の高騰を通じて中国に報復したのではないかと推測している。そのような事情が存在する可能性は大きい。何故なら鉄鉱石は石炭と異なり、その産地が比較的集中し、主にオーストラリアとブラジルであり、しかもオーストラリアの3社の企業とブラジルの1社の企業とに独占されているからである。ブラジルは資源の面で中国にとっても比較的重要で、例えば中国の大豆輸入の面で、米国に代替できる2番目の選択肢である。鉄鉱石の面では、オーストラリアに代替できる2番目の選択肢である。言い換えると、中国が米国からの大豆の輸入を制限した場合、必然的にブラジルからの輸入が増加し、中国がオーストラリアからの鉄鉱石の輸入を制限した場合も、必然的にブラジルからの輸入が増加する。そうであるから、ブラジルが傲慢になり始めた。米国という兄貴分と共に中国を包囲し、例えば最近中国はブラジルに新型コロナ肺炎のワクチンを優先的に供給したが、却ってブラジルによって中国ワクチンの基準が不透明である等と“デマを浴びせられた”。更に12月初頭、ブラジル最大の鉄鉱石企業であるヴァーレは、2020年の産量予測を下方修正すると宣言した。これが鉄鉱石市場の火に油を注ぎ、価格高騰を誘発した。中国―米国―ブラジルの大豆競争、及び中国―オーストラリア―ブラジルの鉄鉱石競争という三角関係を通じて、大国間競争の複雑さを見ることができる。外交学的には、永遠の友もなければ、永遠の敵もなく、永遠の役割もなく、永遠の利益しかないというのは道理あることである。鉄鉱石と石炭の不足と価格の持続的な高値推移によって、中国も痛みを味わう。少なくとも鉄鋼企業は原料価格高騰により、このあと不動産価格、自動車価格及び家電価格にこれを伝播させるだろう。石炭の不足並びに価格高騰は発電に影響を与え、企業や住民の電力使用に影響を与える。とりわけ中国が正にコロナ禍の悪影響を脱し、経済が急速に回復中であり、またちょうど厳冬に当たるからである。中国でこれまでのところ電力供給は安定と秩序を保ち、住民生活の電力使用はまだ大きな影響を受けていないとは言うものの。最近ではやはり湖南、江西で電力供給が逼迫し、浙江でも電力使用制限が生じた。中国国家発展改革委員会は既に関係部門企業と共同で、電力需要を着実に保障し、電力の全体的に安定し秩序ある供給を確保する為の措置を講じている。
私は以前に言ったことがある。「仲良くすれば双方に利益があるが、争えば双方ともに傷つく」と。如何なる貿易戦争もその結果は何れも共倒れであり、ウィンウィンにはならない。どちらの傷がより浅いかを競うだけである。中国は国土が広く、石炭資源が豊富で、生産を始動し、輸送能力を高めれば、傷はいくらか浅くできるだろう。従って、オーストラリアと中国との競争は、必ずオーストラリアの方が傷がより深くなる。誰かが推算したところ、若しも豪中貿易が中断したら、中国のGDPは0.5ポイント下がるが、オーストラリアの下げ幅は6ポイントを超えるという。結局のところ、オーストラリアの方が中国に依存していて、中国がオーストラリアに依存しているのではない。貿易戦争で真の勝者になるのは難しいのであるから、長期的観点に立てば、オーストラリアはこの点がはっきりわかるはずである。中国は戦いを好む国ではない。従来から「喧嘩を売られなければ、自分から売ることはない」のだ。オーストラリアの対中政策に一定の見直しがあれば、豪中関係は徐々に正常な軌道に戻るはずである。但し目下のところ、鉄鉱石と石炭の価格の高値推移は、まだ一定期間続くだろう。
二、2020年FRBの無制限の量的緩和が、世界主要国の14兆ドルのマネーサプライを促し、これが世界的な資産価格の高値推移を招いた深層原因
ブルームバーグが最近公表したデータによれば、2020年の米国、中国、ユーロ圏、日本等世界12大主要大型経済主体の総マネーサプライは既に94.8兆ドルに達した。世界主要8大経済主体だけでも2020年に14兆ドルの貨幣が新規に増加し、増加幅は2003年以来のあらゆる年のデータを超えたのみならず、2017年の8.38兆ドルの水準をも遥かに凌駕した。これは史上前例なきデータで、正にこれほど膨大な量の貨幣を印刷したおかげで、全世界の資産価格が幾度も暴騰した。全世界の主要中銀の貸借対照表が急速に膨張し、FRB、ECB、日銀、BoEの貸借対照表の規模が各国GDPの凡そ50%前後を占めた。これら中銀の債務規模は、2008年のサブプライムローン危機の時に僅か10%、2019年に僅か36%だったものが、たかだか10年で既に数倍になった。これでは必然として資産価格のバブル、大規模インフレあるいはグローバル債務危機がいつ起こってもおかしくない。中銀の貸借対照表の膨脹は、本質的には量的緩和が招いたものである。量的緩和は実際は負債であり、主に向かう先は国家の政府負債で、この10年間で、これら国家の政府債務は急速に膨張し、米国の政府債務だけで28兆ドルを超える。トランプ氏在任の4年間で、何度もFRBに圧力をかけてマイナス金利を実施、このビジネスマン大統領は、マイナス金利で米国債を発行しさえすれば、米国政府は返済を少なくできる上に、この種のやり方で金を稼ぐことも可能だと考えた。トランプ氏はまた欧州が既にマイナス金利を実施しているので、米国も同様にやるべきで、さもなければ欧州によって米国が出し抜かれると考えた。これらの貨幣が流入した分野の価格は大規模に高騰する。大口商品分野に流入したので、全世界の大口商品の価格が暴騰した。鉄鉱石価格が繰り返し高騰し、銅価格が繰り返し高騰し、非鉄金属価格が繰り返し高騰した。従ってこれがハイパーインフレと資産価格バブル高値推移の根本原因である。
歴史は次の事を証明している。即ち、一般にドルインデックスが90を突破すれば、全世界の流動性が逼迫に向かい、往々にして爆発危機が起こる。他方ドルインデックスが90を割り込むと、全世界の流動性の氾濫を示し、インフレが到来して、資産バブルが必ず起こされる。現在ドルインデックスが既に90を割り込んでおり、従って、大口商品価格の大幅な高騰は単に始まりに過ぎず、最も厳しい結果として2008年よりも更に厳しい経済危機を引き起こす可能性がある。企業家、投資家の方々はやはり転ばぬ先の杖、備えあれば患いなしを心がけるのが良いでしょう。
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