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建党100周年祝賀文芸公演、江沢民・胡錦涛等欠席させ「毛沢東と習近平」を演出
中国共産党100周年祝賀文芸公演(写真:AP/アフロ)
中国共産党100周年祝賀文芸公演(写真:AP/アフロ)

6月28日北京で建党100周年祝賀演劇大会が開催されたが、習近平は「毛沢東の新中国」と「習近平の新時代」を強調するため、鄧小平亡き今、江沢民政権と胡錦涛政権のトップを欠席させた。

◆中国共産党100周年を祝賀する演芸大会<偉大なる道のり>

6月28日夜、北京にある国家体育場(鳥の巣スタジアム)で「慶祝中国共産党成立100周年文芸演出」<偉大征程>(中国共産党100周年を祝賀する演芸大会<偉大なる道のり>)が開催された

舞台が始まる前に、アナウンサーが「偉大なる党が、中国人民を新しい道へと邁進させ、新時代へ奮い立って前進させるべく導いていったことを、共に祝福した」と解説したのが注目される。この祝賀大会が「習近平の新時代」を祝うためであるという位置づけが明示されたと解釈することができるからだ。

19時57分に習近平がチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会7人)と王岐山国家副主席などの国家指導層を引き連れて入場すると、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれ、真っ赤な服を着た2万人から成る観衆が立ち上がって赤旗を振った。そのように行動するように練習していたのではあろうが、「真っ赤っか」に燃える会場を満足げに見渡す習近平の顔がクローズアップされた。 

6月21日のコラム<中国共産党建党100周年にかける習近平――狙いは鄧小平の希薄化>でご紹介した中国共産党歴史展覧館と同じく、舞台は4つの章から構成されており、第1章は中国共産党の誕生と長征で、第2章は毛沢東による「新中国」の建国と朝鮮戦争をスタートとしたその後の発展、第3章は「鄧小平+江沢民+胡錦涛」の「過渡期の指導層」の足跡、そして第4章は習近平の「新時代」の場面だ。

第3章で、改革開放を紹介する時に、「特区」という言葉が2回も出てくるのが印象的だった。なぜなら拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』で書いたように、改革開放のきっかけを作ったのは習近平の父・習仲勲で、習仲勲は16年間の牢獄生活を終えたあと、広東省に派遣されて、深センを「経済特区」に持って行った人物だ。「一歩先に進めさせてくれ」(先行先試)と当時の国家のトップにいた華国鋒に懇願した。

だから、こんなところで、こっそりと、「鄧小平への復讐」をしていると、思わずニヤリとしてしまった。

第4章で貧困脱出を最初に持ってきたのは、鄧小平が唱えた先富論(先に富める者から富)によって貧富の格差が生じて、これでは社会主義国家ではなくなるという現実を、何としても、この自分の手で是正してやるという、これもやはり、「習近平の鄧小平に対する復讐の一つの形」とみなすことができよう。

習近平は軍事大改革を行い、軍民融合を進めているが、その結果「強軍大国」になったことも誇示された。コロナに打ち勝ったことも習近平の功績として位置づけられているのには、首をかしげざるを得ないが、もっと驚いたのは、出席した国家指導層たちのメンバー選定である。

◆江沢民&朱鎔基と胡錦涛&温家宝がいない!

なんと、江沢民政権の国家主席(兼中共中央総書記兼中央軍事委員会主席)であった江沢民と朱鎔基(国務院道理)および胡錦涛政権の国家主席であった胡錦涛(兼中共中央総書記兼中央軍事委員会主席)と温家宝(国務院総理)の姿がないのである。

上記CCTVのテレビ画面の下の方に文字化されたものがあるが、この最後の段落辺りに、チャイナ・セブンと王岐山以外の、この祝賀演劇大会に出席した、現在および過去の国家指導層の名前が列挙してある。100名以上の人名があるが、その中には「江沢民&朱鎔基」の名前も「胡錦涛&温家宝」の名前もない。

静止画面の情報もあるが、それを落ち着いてじっくり見ても、検索しても、この4人の名前は出てこない。

◆習近平の巧妙なトリック

これは実に巧妙なトリックだ。

つまり、舞台の第3章は、中国共産党歴史展覧館第三部分同様、「鄧小平+江沢民+胡錦涛」を一つにまとめた「過渡期の指導者」として位置づけられているが、鄧小平は他界しているので、ここで江沢民と胡錦涛がいなければ、まさに「過渡期の指導者」は存在せずに「新中国を建国した毛沢東」と、「新時代を築いた習近平」の二人だけの存在となる。

「中国」という国家にも、「中国共産党」という100年の歴史にも、「毛沢東と習近平」しかいないのである。これが習近平の「主張」でもあるのだ。

ここまでしないと、「鄧小平への復讐」は達成されないのだろう。

いや、まだまだ今からだとは思うが、少なくとも建党100周年を、どこまでも最大限に活用しようとしている習近平の心が透けて見える。

弁明はいくらでもできる。

江沢民が高齢なので主席が困難だろう。そなると、朱鎔基も出席しないようにしないと、江沢民が不機嫌になるだろう。なぜなら江沢民と朱鎔基は犬猿の仲だからだ。

江沢民&朱鎔基を省いたのなら、胡錦涛が出席することにも江沢民は腹を立てるだろう。おまけに江沢民は胡錦涛とも犬猿の仲だ。となれば温家宝一人が出るのも具合が悪い。そこで4人全員を出さないことにしたと、こう釈明すればいいことになる。

いずれにせよ、習近平の行動は、「鄧小平への復讐」を念頭に置かない限り、正確には分析できないことは確かではないだろうか。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。2024年6月初旬に『嗤(わら)う習近平の白い牙』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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