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旧統一教会が牛耳る「日本の選挙の民主」と「中国の民主」_中国「わが国は民主的だ」世界ランキングで1位
民主主義の擁護を求めて集まった群衆(写真:ロイター/アフロ)
民主主義の擁護を求めて集まった群衆(写真:ロイター/アフロ)

53ヵ国を対象としたNATO傘下の世論調査「あなたは自国が民主的だと思うか?」で、中国が世界一となった。その背景には米中関係があるが、統一教会に牛耳られている「日本の選挙と民主」とを比較考察したい。

(本稿では、旧統一教会は「統一教会」と略記する。)

◆「わが国は民主的だ」 世界ランキングで中国が1位

日本では統一教会と自民党議員などとの長きにわたる深い癒着が次々と暴かれ、まるで日本の政治が統一教会によって動かされていたような不気味さが漂っている。

そのような中、8月23日にEUメディアのウェブサイトmodern diplomacyに調査研究歴史家のエリック・ズエッセ氏が<53カ国のNATO所属(機関)の世論調査で、中国人が最も「自国を民主的だ」と思っていることが判明>という見出しの論考を公開した。

それによればNATO傘下の「民主主義同盟」が53ヵ国を対象に世論調査を行ったところ、中国人の83%が「自国は民主的だ」と考えていることがわかり、これは調査対象となった53ヵ国の中で最も高い割合だったというのである。第2位はベトナムで77%、3位と4位は同点のフィリピンと台湾で、75%だった。

53ヵ国すべての平均は 56%だが、アメリカは平均よりも低い49%で、順位はコロンビアと同点で並び、第40位&41位だったという。

対ロシアのアメリカ軍事同盟であるNATOが、敵対国家として排斥しなければならない標的リストの中に入れることを検討している中国が、NATO傘下の民主主義同盟が調査した53ヵ国の中で、「自国は民主的だ」と考えている「民主化度」において第1位で、中国を非民主的国家として排斥しようとしているアメリカが、民主化度認識において第40(もしくは41)位というのは、いったいどういうことかと、エリック・ズエッセ氏は皮肉っている。

したがって、「その国に住んでいない人々が保持しているその国についての見解は、与えられた外国の報道機関の表現ミスによるものかもしれない」と考察し、その報道は「特定の敵国」に対する「期待的見解」であるかもしれないと警告を発している。

それを筆者なりの言葉で表現すると、以下のようになろうか。すなわち、

――現在、アメリカや日本には「民主主義国家vs.専制主義国家」という価値観外交の概念があり、特に「中国の国家運営が不透明で、非民主的である」という批難を基本とした対中包囲網がアメリカを中心とした西側諸国によって形成されている。では、その批判対象となっている「中国はどれくらい非民主的か」ということを考察すると、データとして表れたのは、中国人が世界で最も「自国は民主的だ」と思っているという結果で、民主の旗頭として世界をリードしていこうとしているアメリカの国民は「自国は民主的だ」と思っている人が半数以下しかいない。したがって、他の国が特定の国を「非民主的だ」と非難したとしても、その国の国民が自国を非民主的だと考えていない場合には正当性を欠く。自国民が自国をどう考えているかに関しては、客観的なデータで把握しなければならない。

こんな感じになろうかと思う。

◆日米は、どれくらい「自国は民主的だ」と思っているのか?

実は、この世論調査の結果自身は今年5月30日に<民主主義認識指数2022>として公開されている。

この報道によれば、民主主義認識指数(DPI)は、民主主義に関する世界最大の年次研究で、50ヵ国以上を対象とし、世界人口の75%以上の民意を代表しているとのこと。そこで、5月30日に公開されたデータを基本として、<民主主義認識指数 2022>に付記してある過去3年のデータから、米中日3ヵ国のデータを拾って以下のような図を作成してみた。

「民主主義認識指数2022」のデータを基に筆者作成

アメリカ国民(青色)は総じて自国が民主的だとは思っておらず、日本(黄色)も類似の情況にはあるが、2022年になってやや上向きであるのは、2021年の情況を反映しているので、2020年あるいは2021年に何が起きたかを考えると、自民党総裁選挙なのに国民に向かって必死で主張を展開したからかもしれない。

驚くべきは、やはり、中国人民(赤)がこんなに高い割合で「わが国は民主的だ」と思っているという事実だ。しかも年々増加している。

◆中国人民は、なぜ「わが国は民主的だ」と思っているのか

それではなぜ、中国人民は「わが国は民主的だ」と思っているのかを考察してみよう。

残念ながら2018年以前のデータを得ることができなかったが、少なくとも2019年のデータを見る限り、まだ57%ではあるものの、日米を抜いて抜群に大きい。これは2018年の世相を表したもので、何と言ってもアメリカの対中制裁が始まった年であったことが最も大きな要因であろう。

対中制裁は2017年末から始まったが、誰の目にもアメリカ経済が中国経済に抜かれないようにするための制裁であることは歴然としている。特に習近平が2015年に発布したハイテク国家戦略「中国製造2025」の「危険性」を感知した当時のトランプ大統領が、宇宙領域やハイテク産業領域で中国がアメリカを追い抜こうとしていることに気づき、それを徹底して抑え込もうとしたものであることは明らかだろう。

そのとき同時にアメリカで進行したのが黒人に対する人種差別問題だった。

最も大きかったのは、2021年1月6日、大統領選挙による不正を訴えたトランプ支持者が、アメリカの議事堂に乱入した事件で、それまでまだ中国の若者の間にいくらか残っていたアメリカへの憧れ、「アメリカは民主的な国家だ」と信じていた気持ちを、一気に挫(くじ)かせてしまった。どれだけ多くの中国人民がアメリカの「民主」に幻滅し、「アメリカの民主など、少しも良くない」と痛感したかしれない。

2022年のデータは、2021年の世相を反映しているので、アメリカ民主への幻滅と、バイデン政権になってから陰湿になってきた対中包囲網に対する反感も手伝い、2022年のデータは、「83%」と、大きく跳ね上がったものと解釈できる。

中国では中国共産党による一党支配体制という明確な大原則があり、その上での国家運営に対して、中国人民は「他国と比べれば比べるほど、自国は民主的だ」と思うようになっているのである。

特に8月26日のコラム<和服コスプレ女子拘留 習近平政権は反日を煽っているのか? 日経新聞が中国ネットを炎上させた大連京都街>にも書いたように、ネットの力によって当局を動かすことができるという現象は、10億を超えるネットユーザーの心を一定程度満足させている。中国では赤ちゃんや超高齢者以外のほとんどすべてがスマホなどを通してネットにアクセスしているので、ネットの民意は全人民の民意に近いと解釈できる側面も持っている。

普通選挙がない分だけ中国政府はネット民意に敏感で、一党支配を維持するために「民意の反乱」が起きないように、非政治的なものであれば民意に即応する傾向を持つ。そうでないと一党支配体制が覆る危険性を孕んでいるからだ。

事実、2018年の民主主義同盟の調査では、以下のような考察が述べられている。

――調査データによると、厄介なのは、「国民の自国政府に対する幻滅」が、非民主主義国家においてよりも、民主主義国家における方が大きいという発見だ。驚くべきことに、民主主義国家の国民の64%が、政府が国民の公共の利益のために行動することは「めったにない」あるいは「まったくない」と回答している。アメリカやイギリスなどは長いこと自由世界のリーダーとみなされてきたが、国民の3分の2以上が、自国の政府は自国の利益のためにさえ行動していないと考えている(概略引用以上)。

では、誰のために行動しているのか。

自分自身のためにしか行動していないという典型的な例が、今般の統一教会と自民党議員を中心とした、長い期間続いてきた深い癒着だ。

◆選挙を「民意の消滅とリセット」に持っていったのは誰か?

信じがたいほどの闇が、いま日本の政治を覆っている。

それは戦後政治の大半を覆してしまうような、恐ろしい闇の世界だ。

岸信介元総理が、統一教会の開祖・文鮮明氏と1968年辺りに会って「反共・勝共」で意気投合して以来、自民党と統一教会の関係は脈々と続いてきた。

特に岸元総理とも懇意にしていた統一教会初代会長・久保木修己氏の遺稿集『美しい国日本の使命』が2004年に出版され、2006年に安倍晋三元総理が『美しい国へ』を出版したことのアナロジーや、自民党が提案している憲法改正案が統一教会の教義に酷似していることなどを考えると、日本の政治の骨格が統一教会によって形成されているのではないかという不気味さを覚える。

何よりも衝撃的なのは、選挙において統一教会が強力な集票の役割を果たしていたことで、国会議員などの立候補者は、何としても当選したいために統一教会のサポートにすがり、統一教会は国会議員の後ろ盾を得て布教を強化していくという「悪循環(相互補助?)」が出来上がっていることだ。

日本は「普通選挙」をしている国として、「民主主義国家」の範疇に入っているわけだが、選挙そのものが統一教会という集票マシーンで成り立っているとすれば、国民がどんなに政治に不満を抱いたとしても、「選挙をすればリセットされる」という「民意の消滅」が選挙によって具現化される。

選挙は「民意の表現」ではなく「民意の消滅とリセット」へと導くのが「日本の選挙と民主」だ。

これが「民主主義同盟」の世論調査の結果に表れている「自国は民主的だ」と思っている国民の割合の数値の低さの原因を示しているのではないだろうか。

少なからぬ国会議員が、国家のためでも国民のためでもなく、自分の利益のために立候補し、自分が当選するためなら手段を選ばない日本と化してしまった。

おまけに「反共勝共」から出発したはずの統一教会は、実は日本は朝鮮半島を侵略した原罪があるので、日本人から金を巻き上げ韓国に還元させるのは当然という、何やら「反日色」に基づいた霊感商法がまかり通っているようだ。その「反日的要素を持つ」統一教会に、嫌韓の自民党議員が支えられているという、この捻じれた関係のおぞましさよ!

自民党議員がどんなに「今後は関係を持ちません」と誓ったところで、「選挙」を「民意の消滅とリセット」に追い込んでいった「日本政治の責任」を徹底して追求し、それを許してしまったた日本の精神的土壌と社会構造を根本的に見直さない限り、日本人の悲劇は続くだろう。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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