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無血でソ連を崩壊させたレーガンと他国の流血によりロシアを潰したいバイデン そのとき中国は?
ソ連のゴルバチョフ書記長とこんなに仲良くしながらソ連を崩壊させたレーガン大統領(写真:ロイター/アフロ)
ソ連のゴルバチョフ書記長とこんなに仲良くしながらソ連を崩壊させたレーガン大統領(写真:ロイター/アフロ)

旧ソ連を崩壊させるべくレーガン元大統領はNATOを利用したが武力は使っていない。ロシアを潰したいバイデンは早くから計画を練りNATOを使って軍事ビジネスを強大化させ、全人類に災禍をもたらしている。最後に笑うのは習近平か。

◆ソ連を崩壊させるためにレーガン元大統領が描いた周到なシナリオ

1981年1月に共和党のロナルド・レーガンがアメリカ大統領に就任したとき、(旧)ソ連の軍事力はアメリカを凌駕し、巨大化していた。しかしソ連のブレジネフが書記長(1966年4月~1982年11月)となってからは、激しい腐敗がはびこっているにもかかわらず軍拡路線を進めていたので、防衛費に多くの国家予算が割かれ、国民経済が疲弊し、ソ連国民は政府に不満を抱いていた。レーガンが登場したのはそういう時期と重なっていたのだ。

強烈な反共で知られるレーガンは、ソ連を「悪の帝国」と名指しで非難し、その代わりに「力による平和」と呼ばれる一連の外交戦略でソ連と真っ向から対抗する道を選んだ。その主たるシナリオには、たとえば

  • 1983年3月に戦略防衛構想( Strategic Defense Initiative=SDI)(スター・ウォーズ計画)を打ち出し、国防費を大幅に増額して、ソ連にプレッシャーをかける(するとソ連は実際、アメリカに追い越されまいとして、より一層の国防費を注ぎ、国家財政の破綻を招いていった)。
  • NATO諸国に呼び掛けて大規模軍事演習を行ない、ソ連に脅威を与えた。
  • ソ連の国民に、西側諸国は自由で民主的で食糧も豊富で幸せを満喫しているというプロパガンダを展開する。

といったものがある。その効果は抜群で、1982年に他界したブレジネフのあとに書記長になったアンドロポフが1984年に他界し、そのあとを継いだチェルネンコも1985年に他界するという政権不安定も手伝って、1985年3月にゴルバチョフが書記長に就任すると、ゴルバチョフは、「ペレストロイカ(構造改革)」や「グラスノスチ(情報公開)」といった改革路線を始めた。ソ連共産党に対する一党独裁に国民の不満があまりに激しく、このままではソ連邦が崩壊すると懸念したからだ。しかし、それがきっかけとなり、ソ連は崩壊した。  

その過程において、米ソともに血を一滴も流しておらず、1988年5月にレーガンがモスクワを訪問した時などは、ソ連のメディアは、まるでハリウッドスターのような扱いで好意的にレーガンを迎えたほどだ。

こうしてソ連を解体させてしまったのである。

何というスマートさだろう。

ちなみに、4月16日のコラム<「アメリカはウクライナ戦争を終わらせたくない」と米保守系ウェブサイトが>で紹介した、バイデン大統領のやり方を批判したダグ・バンドウ氏は、まさにこのレーガン政権で外交アドバイザーを務めた人物である。

◆中国はカウントダウンでソ連崩壊を待ちわび、新独立国を電撃訪問

フルシチョフ政権(1953年~1964年)時代の後半から激しい中ソ対立を始めた中国は、一刻も早くソ連が崩壊するのを待っていた。2008年に中国の中央テレビ局CCTVでも報道された中国外交部管轄の『世界知識雑誌』によれば、1991年9月7日、ソ連がバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の独立を宣言した翌日に、中国の当時の銭其琛(せん・きしん)外相はバルト三国の外相に電話し独立国家として承認することを告げ、3日後に中国の副外相がこれらの国の首都に到着して国交樹立に関する交渉を始めた。

この時点からソ連崩壊のカウントダウンが始まり、12月25日には李嵐清(り・らんせい)対外貿易部長(大臣)をはじめとする中国政府代表団はボーイング767チャーター便に乗ってモスクワに向かった。しかし政権交代に追われ対応できないと言われたので、行く先をウクライナとベラルーシュに変更しキーフフに飛んだ。

ウクライナの対外貿易大臣のオフィスで会談に入ったが、ウクライナ側は2人しか出席できないほどの慌ただしさで、それでも国交樹立のために「唾つけ」だけは終えて、一行は中央アジア諸国などを駆け巡った。

一方では12月27日午前に再びモスクワに引き返し、ロシアの経済貿易担当副首相などと会って、ロシア連邦政府が国連安保理常任理事国の(旧ソ連の)議席を引き継ぐことに賛成を表明している。

ウクライナと中国は、この瞬間からの友好関係を保っており、ソ連の武器製造基地だったウクライナの技術者を中国に呼び寄せ高給で手厚くもてなし、ミサイルや造船技術を学んだ。2013年に締結した「中国ウクライナ友好協力条約」は、今も有効だ。

このようにウクライナは、その意味では「親中国家」なのである。

だから「侵略された国」として「中国目線」に立っており、ゼレンスキー大統領の米議会でのオンライン・スピーチの中で真珠湾攻撃が平気で盛り込まれているし、ウクライナ政府の公式アカウントに、「侵略者」の代表として昭和天皇の写真を載せるということができる。これは「つい、うっかり」という類の話でないことは、今後のために認識しておいた方がいいだろう。

◆日本の支援でまぬかれた中国の連鎖崩壊

共産主義の国家・ソ連が崩壊したのに、なぜ同じ共産主義の国家である中国は崩壊しなかったのか?

最も大きな理由の一つとして、日本の支援が挙げられる。

1989年6月4日、ソ連崩壊のカウントダウンが始まっている最中、中国では若者が叫ぶ民主の声を銃口でふさぐという、凄惨な事件が起きた。人民を守るための中国人民解放軍が、天安門に集まる丸腰の若者に向け発砲し、戦車で轢(ひ)き殺したのだ。

その時はすでにテレビが普及していたから、その残虐極まりない映像は全世界に届き、衝撃を与えた。

西側諸国はすぐさま結束して厳しい対中経済封鎖を宣告したが、日本が「中国を孤立させてはならない」として、最初に経済封鎖を解除させてしまった。すると、それならわが国もと、雪崩を打ったように中国の安い労働力を求めて各国が投資し始めたので、中国はすぐさま「世界の工場」として繁栄を謳歌し、やがて経済大国に昇り詰めるに至っている。

もちろん、そこにはソ連と違って改革開放を進めていたという社会背景はあるが、それでも崩壊の条件は、あの時ほぼ整っていたと言えよう。その絶好のチャンスを潰したのは日本だ。

◆腐敗撲滅と軍民融合を進めなければソ連の二の舞

ソ連崩壊を招いた原因に、ブレジネフ政権時代に広まった腐敗と、国家予算の多くを国防費に注いで、国民経済が破綻したという状況がある。

そこで習近平政権に入ると、底なしの腐敗にまみれた政財界および軍に対する徹底した腐敗撲滅運動を始めた。

日本のほとんどのメディアは、これを「権力基盤がない習近平が権力を固めるための権力闘争」と位置付けてお祭り騒ぎのようにはしゃぎ、日本人の、真相を見る目を完全に曇らせてしまった。

筆者が習近平の狙いは「軍民融合」と「中国製造2025」の推進にあり、そのためには腐敗の構図を断ち切らないと中国は崩壊するのだと書いても、「習近平の悪口を書かないのは、中国政府のスパイ」という心無いバッシングがネットに飛び交うだけで、真相を見る勇気を持つ者は少なかった。

しかし、今になってようやく、事の真相が見えてきたはずだ(と信じたい)。

中国の国家としての最大の課題は「中国共産党による一党支配の維持」で、「ソ連の二の舞を演じてはならない」という教訓を肝に銘じている。

だから江沢民が蔓延させた底なしの腐敗を撲滅し、ハイテク化へと邁進し、軍を強化しても国民経済にマイナスの影響を与えないという「軍民融合」が何としても必要だったのである。

軍民融合が功を奏し、中国の国防費の対GDP比は、今もなお1.5%前後に収められている。

◆世界を血で染め冷戦時代に逆戻りさせるバイデンのロシア潰しのやり方

一滴の血も流さず、あの巨大な共産主義国家を解体させたレーガンの力量とスマートさに比べて、バイデンは何という残虐な形で、ロシア潰しをしているのだろうか?

4月24日のコラム<「いくつかのNATO国がウクライナ戦争継続を望んでいる」と、停戦仲介国トルコ外相>で、アメリカが「ロシアを弱体化させるまでウクライナ戦争を続ける」という趣旨のことを書いたが、事実、ウクライナをアメリカのブリンケン国務長官とともに訪問したオースティン国防長官は、それを裏付ける発言をしている。

4月25日にキーフから戻りポーランドで開いた記者会見で、オースティンは以下のように言っているのである

――われわれは、ロシアがウクライナ侵攻でやったようなことを二度と再びできないようになる程度まで、ロシアを弱体化させたいと思っている。われわれは、彼らが自分の力を極めて迅速に再生産できるような能力を持てないようになることを見届けたい。

バイデン自身も、たとえば2021年3月17日のテレビ取材で、プーチンを「殺人者」と断言し、今年3月1日の一般教書演説で「彼(プーチン)を捕まえろ!」と言い、そして3月26日に訪問先のポーランドでバイデンは「神に誓って(どんなことがあっても)、この男(プーチン)は政権の座にい続けてはならない」とまで言っている。

ホワイトハウスはバイデンが発言するたびに「失言」の火消しに追われたが、これがバイデンの本心であることは明白で、バイデンはロシアを嫌い、何としてもプーチンを政権の座から引きずり降ろそうとしてきた。

そのために2009年7月からバイデンはウクライナに通い続けて、親露政権を倒すクーデターを操り、バイデンの傀儡政権とも言える親欧米政権を誕生させ、ウクライナに「NATO加盟」を煽り、今日に至っている(詳細は『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』第五章に掲載した年表)。

ウクライナを血の海に染め、「狂気の野獣(プーチン)」を強引に檻から出して野に放ったのはバイデン以外の何ものでもない。

アメリカは1950年1月に「アチソン・ライン」を引いて、台湾や朝鮮半島などに軍事干渉しない趣旨の表明をして金日成(キム・イルソン)を喜ばせ、毛沢東の反対を押し切ってスターリンの同意を得て北朝鮮が朝鮮戦争へと突き進むのを誘導した。

1990年の湾岸戦争の開戦前、当時の駐イラクのアメリカ大使(グラスピー)は、わざわざフセイン大統領に「アメリカは、イラクとクェートの国境問題には介入しない」と告げて、イラクがクェートに軍事侵攻するのを誘い込んだ。

このたびもバイデンは2021年12月7日にプーチンに電話して「ウクライナが戦争になった場合、米軍は介入しない」と、わざわざ告げている。「だから、さあ、早くウクライナに軍事侵攻してくださいな」と誘導したのだ。

◆レーガンに憧れたトランプだったら、ウクライナ戦争は起きてない

トランプ(前大統領)は若いころからレーガン大統領に憧れていたという。

今ではトランプ自身のツイートアカウントは削除されているので、ストレートに見ることはできないが、2017年1月にDaily Mail Onlineが載せた写真にその証拠がある。レーガンのサイン入りのため、トランプが嬉しくて自分のツイートにアップしていたものである。

レーガン元大統領に憧れて握手する、若き日のトランプ前大統領(Daily Mail Onlineより)

レーガンは元俳優で、トランプは元ビジネスマン。二人ともネオコンのような戦争ビジネスが動かすアメリカ政治の垢に染まっていない。トランプは素直にプーチンが好きだった。われらが安倍(元)首相のように、「プーチンと同じ未来を見ている」レベルまで至っているのか否かは分からないが、少なくともトランプが大統領だったら、ウクライナ戦争は起きていなかったことだけは確かだろう。

どちらが世界平和と人類の幸せのためになるか、どちらが人命を尊重しているかは、説明するまでもない。

◆最後に笑うのは習近平か?

4月22日のコラム<ウクライナ戦争は中国の強大化を招く>に書いたように、バイデンがどんなに策略をめぐらしても、ロシアを除いた全人類がバイデン一人の狙い通りに動くわけではなく、いつまでもアメリカの「戦争ビジネス」の思うままに翻弄されるのを許すわけでもないだろう。

だとすれば、あと10年もしないで、アメリカのGDPを抜く中国が、アメリカがロシアを潰しにかかることによってさらに強大化していくという構図もあり得ることに、日本人は目を向ける必要があるのではないだろうか。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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