デジタル経済は機械化(事務またはデータ処理—デスクトップパソコン端末)、ネットワーク化(固定ネットワーク、モバイルネットワーク、モノのインターネット—ポータブルPCまたは携帯端末)、共有化(デジタル化応用―クラウド端末)という3つの発展段階に分かれる。目下、中国はデジタル経済が既に機械化段階を超越し、正にネットワーク化段階を飛び越えつつあり、間もなく共有化段階に進もうかという状態にある。デジタル経済発展の原動力はコンピュータの基盤技術によって決まるので、技術進歩の社会発展への影響はますます大きくなっており、生産方式、生活方式、商業モデルが加速度的に進化しつつある。全体としてみれば、社会生産力ニーズが技術の進歩を促し、技術の進歩がまた経済の発展を一層促すのである。これに基づいて、筆者は以下の文中で将来5年間のデジタル経済における基幹技術の発展動向を予測している。
一、コンシューマインターネットからインダストリアルインターネットへ(To CからTo B、To Mへの転換)
目下、中国のTo Cインターネットエコシステム全体がインターネット会社によって独占される時代に入っており、分野によっては完全に数社の寡頭によって独占されてしまい、To C市場の春秋戦国時代は既に終焉、未開拓の地がもはや無く、中小型インターネット企業にとっては簡単な投資と創業では市場シェアを獲得して強大化することが難しくなっている。現在のインターネットエコシステムは既にインダストリアルインターネット、即ちTo B時代に突入し、インターネット企業、電信キャリア、ソフト類企業が続々とインダストリアルインターネットの主戦場へと進出して分け前に与ろうと考えており、将来5年間、群雄割拠のTo B大市場は20兆元を下らない市場規模が見込まれる。それは主に企業クラウドコンピューティング、工業デジタル化、工業デザイン、インダストリアルインターネット、スマートマニュファクチャリング、VPN、デジタルツイン工場、工業ロボット等の分野に集中する。
To B市場よりも更に新しい波がTo Mの勃興である。To Mモデルの下では、旧来型の企業がスマート化個別生産モデルに突入する。顧客は自らのニーズに基づいてインダストリアルインターネットプラットフォーム上で自らの製品ニーズを発信し、自分の製品を加工してくれる企業を探して、製品のカスタマイズ生産を行うことが可能となり、こうして顧客を中心にしたTo M(消費者から製造者へ)のビジネスモデルが形成される。To Mは多くの中間流通による価格上乗せ段階を跳び越して、顧客から工場への直接の連結を実現でき、顧客が製造業者やデザイナーに直接アクセスできるようになり、顧客により良質で、更にコスパの高い、個別化された専属製品を提供することが可能だ。もちろん、これには工業企業による小ロットでの迅速生産の実現が求められる。このような在庫を無くし、中間業者を回避し、定量による生産の新しいビジネスモデルは、各者の価値を最大化し、製造業の供給側構造改革をより大々的に推進して、旧来の生産要素による生産率を向上できるのみならず、企業の生産ライン、サプライチェーン、内部管理制度ないしは全体のビジネスモデル変革を余儀なくさせて、“シェア工場”を可能なものにする。注意すべきことは、To Mは共通ニーズを排除する訳ではなく、個別化製品にも適度の規模を持たせることである。スマート化と標準化がその基本的特徴である。To Mモデルの勃興を促す原動力は95年以降に生まれたZ世代(1995年-2009年生まれ)だ。彼らは権威を崇拝せず、しかも思いがけず常識を打ち破り、ブランドの知名度ではなく自我を追求するので、To Mのような逆向的なECモデルが、商品流通の各セクションから好評だ。目下、アリババが既にTo Mを第9大戦略に据えている。
二、クラウドとネットの融合
インダストリアルインターネットの重点は、コンシューマインターネットとインダストリアルインターネットの間に存在する溝を徐々に埋めていくことである。To C分野では、中国の電信キャリアが重要な転換のタイミングを逸したが、To BおよびTo G分野では、クラウドとネットワークの融合が電信キャリアに重要な突破口を提供している。中国電信(チャイナテレコム)はクラウド・ネットワークの一体化と全面クラウド化発展戦略を打ち出し、クラウドとネットワークの融合には4段階の意味が含まれるとしている。即ち、ネットワークは基盤であり、クラウドを核心とし、ネットワークはクラウドに伴って動き、クラウドとネットワークは一体である、というものだ。中国移動(チャイナモバイル)はTo B市場向けにクラウド・ネットワークアーキテクチャを再構築し、引き続きクラウド・ネットワーク業界専用ネットワークを構築している。そのクラウドレイアウトでは“一つのクラウド、一つのネットワーク、一体化サービス”というクラウド・ネットワーク一体化戦略を打ち出している。中国聯通(チャイナユニコム)は雲聯網(クラウド接続)、雲組網(クラウドネットワーキング)、雲専線(クラウド専用回線)、雲寛帯(クラウド広帯域)、聯通雲盾(クラウドシールド)、スマートビデオネットワーク(CU-SVN)、金融セレクトネットワークを含む七大商品を打ち出している。
2019年12月9日、チャイナテレコムは一部機構に対し改革を行い、グループの「網発部(ネットワーク発展部)」を「雲網(クラウド・ネットワーク)発展部」に改称し、グループの「企信部(企業情報化部)」と「網運部(ネットワーク運用部)」を統合して「雲網運営与信息化部(クラウド・ネットワーク運営と情報化部)」にすると発表した。5G時代においては、目まぐるしく変わる業務ニーズと日進月歩の技術がネットワークアーキテクチャの変革を絶えず推し進める。CTとITの技術融合、ネットワークとクラウドの融合が目下のところ広く認められた業界動向だ。電信キャリアから言えば、5Gによってネットワークとアプリケーションの結合をより重視するようになる。キャリアはネットワークか業務かにかかわらず、どちらもクラウド化が加速しつつある。同時に、5GによってキャリアはOTTおよびクラウドサービスプロバイダとより多くの協同協力をするようになる。従って、チャイナテレコムが業務部門の見直しを行うことは時宜に適っており、チャイナテレコムが業界動向に順応し、戦略的転換を進める決心をしたことを表しているのである。目下、ネットワークとクラウドも融合の流れにあり、多くのネットワーク設備が既にクラウド化している一方で、ネットワークの企画配置でも如何にクラウド化の業務をより好くサポートするかを考慮しなければならなくなっている。よってクラウドとネットワークの融合は将来のネットワーク進化の方向性の一つなのである。
三、デジタルツインが台頭
デジタルツインとは即ち物理的設備またはシステムをベースにして、デジタル版の“クローン”を創造することである。あるいは、ある種のソフトウエアインタフェースを通じて既にデジタル化され、正に稼働中の物体の実際状況を可視的デジタル体において再現したものである。デジタルツインは工法精確度要求が比較的に高いハイエンド装備製造業に由来し、3Dデジタル化設計技術とプリセット技術を採用するものだ。デジタルツインはまたハイエンド製造から生活消費財製造、インフラ分野へと裾野を拡げつつある。あらゆる事象が次のことを示している。即ち、デジタルツインはデジタル化の波の必然の結果で、デジタル化において経るべき過程であり、デジタル世界は将来、物理世界に奉仕するために存在し、物理世界はデジタル世界によってより秩序だって美しいものに変わるのだと。
北京五一視界数字孿生科技股份有限公司(51WORLD)は先駆的なデジタルツインプラットフォーム会社で、オリジナルのAll-element scene(AES)を基礎に、物理的シミュレーション、工業エミュレーション、人工知能、クラウドコンピューティング等の技術を融合し、デジタルツイン応用エコシステムを定義し直し、政府および企業が新たなデジタル化グレードアップを行うのをサポート、デジタルツインをリードする。51WORLDはAESを通じてデジタルツインプラットフォームを構築し、マルチソース時空データの融合、都市デジタル基盤の構築、多元的エミュレーションモデル模擬等の応用価値を実現する。AESは既に全世界の1000社を超える大中型政府および企業によって広く応用され、都市、工業団地、交通、車輛、水道事業、港湾、空港、不動産等10余りの業界等分野をカバーしている。新型スマートシティ建設は将来の一つの重点投資方向性であり、デジタルツイン都市は、既に大規模実施段階に入っているのだ。
2020年4月、騰訊雲(テンセント・クラウド)はデジタルツイン都市の“テンセントソリューション”——City Baseを発表した。テンセント・クラウドのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)、GIS、AI、ブロックチェーン、ビッグデータ等の技術を活用し、協力パートナーと提携して10余りのアプリケーションシナリオをつくることで、都市計画、建設、管理およびサービス等の各段階に広く応用でき、産業や都市のデジタル化の全面的グレードアップの助けとなる。目下、City Baseは既に深圳、武漢、貴陽、重慶等の都市における関連の建設モジュールの中に急速に根付きつつある。
北京悉見科技公司は空間スマートエンジンおよび室内外高精度地図を通じて、物理世界とデジタル世界の複合現実インタラクションを実現し、複合現実デジタルツイン基盤の構築に尽力する。2020年末までに、全世界に数億平方メートルのコンシューマレベル複合現実高精度地図を擁し、全く新しいシナリオスマート情報エンジンとなり、スマートシティ、スマートパビリオン展示ホール、スマート商業エリア、スマート文化ツーリズム等のシナリオのためにデジタルツイン能力を提供し、政府と企業が効率的にデジタル化、スマート化、科学技術化転換およびグレードアップを実現するのをサポート、5Gとデジタル経済時代をリードする。
四、産業デジタル化からデジタル産業化へ、そしてビッグデータ資本化へ
技術が進歩する条件の下では、あらゆる産業のデジタル化が可能なので、デジタルは産業の潜在資源だと言うことができる。デジタルは潜在資源から収集可能、保存可能、計量可能なものに転じた時に資産を構成する。これが即ちいわゆるデジタル産業化である。これら分散したデータがビッグデータを形成し且つ収益をもたらし得る時、デジタルで構成されたビッグデータは資本に転じる。これが即ちビッグデータ資本化である。
換言すると、物理的・原子的な産業世界がデジタルによって描写されるプロセスが即ち産業デジタル化のプロセスである。データが統計可能、評価可能になるプロセスが即ちデジタル産業化のプロセスである。デジタルが集合してビッグデータとなり、しかも収益をもたらし得るプロセスが、即ちビッグデータ資本化のプロセスである。
物理的な世界が抽象的なデジタル世界に転じると、これをデジタルリソースと呼び、デジタルリソースが計量可能、評価可能になったものをデジタルアセットと呼び、デジタルアセットが収益をもたらし得るならばこれが資本に転じる。資源から資産へ、資産から資本への“三段跳び”が、デジタル経済発展の必然的法則であり歴史の流れなのである。
五、デジタル通貨、6G技術および人工知能も将来の中国デジタル経済の発展動向
物理世界の金融システムは工業経済に基づくものだ。デジタル経済時代には必然的に新たな金融システムが求められる。デジタル経済に基づくデジタル通貨はブロックチェーン等の基盤技術が不断に改善されていく条件の下で、世界規模の金融変革ないしは金融革命を引き起こし得る。6G技術はマイクロ波通信と光波通信の利点を兼ね具える。即ち通信速度が速い、容量が大きい、指向性が強い、安全性が高い、そして透過性が強い等の特性である。5Gと較べると容量、帯域、遅延が大幅に向上するのみならず、より緊密に物理世界と融合し、生産の各セクションと融合し、生活の各方面と融合するのだ。興業証券の情報によると、国家電網(SGCC)は606億~834億元を出資して、5G免許を取得した四大キャリアの一つと合弁会社を設立、共同で5G基地局を建設して、5G業界に殴り込みをかけようとしているという。SGCCの架線塔を全国に遍く林立させれば、5Gや6Gの基盤となり、急速発展は時間の問題となる。人工知能は工業経済からデジタル経済へと突入するのと同じく、デジタル経済のハイレベル段階が即ちスマートエコノミーである。デジタル経済時代は既に専用人工知能技術を有している。例えば顔認識、画像認識、スマート音声認識、レベル4の自動運転等である。これはまだスマートエコノミーの“揺籃期”であり、スマートエコノミーが発展すれば現存の物理世界と人の価値観をひっくり返すこともある。スティーヴン・ホーキング氏が予測したように、人類を滅ぼすこともあながち無いとは言えないかも知れない。
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