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韓国「二面相」外交
2021年4月4日
中韓外相が中国で会談(写真:新華社/アフロ)
中韓外相が中国で会談(写真:新華社/アフロ)

4月3日、日米韓の安保担当高官がアメリカで対面協議を行ったが、同日、韓国外相が訪中し王毅外相と会談した。3月の米韓「2+2」で中国名指し批判を断った韓国の二面相ぶりと習近平の戦略を考察する。

◆日米韓の安全保障担当高官がアメリカで

日本時間の4月3日、日米韓3か国の安全保障担当高官がアメリカのメリーランド州にある海軍士官学校で対面式の協議を行った。日本からは北村国家安全保障局長が、韓国からは徐薫(ソ・フン)国家安保室長が出席し、アメリカのサリバン大統領補佐官と話し合った。協議では、北朝鮮の非核化や朝鮮半島の平和と安定を維持するためには3ヵ国の連携が不可欠という認識で一致したという。

会談ではほかにも、海洋進出を強める中国に対する抑止力や、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取り組みに関しても協議したとのことだが、そもそも「自由で開かれたインド太平洋戦略」から「戦略」という文字を削除したのはなぜだったのかを思い出して欲しい。

安倍元首相が中国を国賓として訪問したいという強い願望を持ち始め、「自由で開かれたインド太平洋戦略」は決して習近平が唱える「一帯一路」に対抗するものではないと言い始めた頃から「戦略」の2文字が削除されたのではなかっただろうか?

そして昨年春、まだトランプ政権だった時に、アメリカから「尖閣諸島を中国から守るためにアメリカの沿岸警備隊と日本の海上機関が共に行動しようではないか」という趣旨のオファーがあったようだが、それを当時の安倍首相は断ったという。断った理由は言うまでもなく、自分を国賓として招聘してくれた習近平を、今度は日本への国賓として招聘する準備をしていたからだ。日本の自民党に君臨する二階幹事長は、どんなことがあっても習近平を国賓として来日させるという意思を変えていない。だから安倍元首相も二階幹事長の言うとおりに動かなければならない。だから「習近平に顔向けならないようなことはできない」として、アメリカのオファーを断ったとのこと。

この情報に関しては、私自身はある関係筋から聞いているが、3月9日付けのForbesにも同様の内容が載っているので(激震! 中国「海警法」の尖閣圧力 VS アメリカ非公式連絡)、間違いないものと思われる。

バイデン大統領にしても選挙中に「中国を刺激してはならない」として「自由で開かれたインド太平洋」という言葉さえ「安全と繁栄のインド太平洋」に置き換えたくらいだから、いくら日米韓3ヵ国が「 『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた取り組みに関しても協議した」などという声明を出しても、それが対中強硬策として3ヵ国が連携したなどという、真に迫って来るインパクトはない。

◆韓国外相の初訪問先は中国だった

「あまり真実味がない証拠」は簡単に見つかる。

4月3日、就任したばかりの韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官(外相)は中国を訪問し、福建省アモイで王毅外相(兼国務委員)会談した。中国では鄭義溶外相の訪中を大きく取り上げ、就任した後の「最初の訪問国がアメリカでなく中国であった」ことを、至るところで強調している。

その鄭外相は会談で概ね以下のように述べている。

 

――韓国は中国との関係が発展することを非常に重視している。韓国は、中国共産党が建党100周年記念を迎えることを心から祝賀し、さまざまな分野で中国との協力関係を強化し、韓中国交樹立30周年を機に、両国関係のさらなる発展を促進することを望んでいる。(中略)韓国は、南北関係の改善、朝鮮半島の非核化、半島における恒久的な平和メカニズムの確立に取り組んでおり、中国が半島問題において引き続き重要な役割を果たすことに感謝するとともに期待している。

韓中両国は、今年前半に、両国の外交部間の新たなハイレベル戦略対話と、次官級の外交・安全保障に関する「2+2」対話の第1回目を開催することに合意し、韓中関係の将来の発展に関する委員会を早急に設置し、両国の外交関係樹立30周年の記念行事の準備を開始することに合意した。(引用ここまで。)

 

これはアメリカでの安保担当高官による日米間3ヵ国の会談の実質的な効果を薄めるに十分ではないだろうか。

韓国はなぜここまで露骨に中国寄りの言動を取るようになってしまったのだろう。

中国の最近の動きを見てみよう。

◆習近平はバイデン政権誕生と同時に動いていた 

バイデンは選挙運動中から、トランプとの違いを明確に打ち出すために、盛んに「国際境に戻る」とか「同盟国や友好国との連携を強化する」と言っていた。

だから習近平は最初からそのための予防線を張り、まず韓国を中国側に取り込むことに熱心だった。

バイデン政権が正式に誕生したのは今年1月20日だが、1月24日になると習近平は韓国の文在寅大統領に誕生日の祝電を送り、続けざま1月26日には文在寅に電話し、中韓首脳電話会談を行っている。そこでは前述の鄭義溶が述べたのとほぼ同様の話が成され、さらに習近平の訪韓問題にも触れたという。

その結果3月18日に行われた米韓「2+2」会談では、韓国は「中国を名指しで批判することを拒否した」のである。

習近平戦略の何と効果的なことよ!

事実、鄭義溶は3月31日の訪中前の記者会見でも訪中時も、いく度にもわたり「韓国は米中どちらの側にも立たない」と明言しているのである。「米中両国と仲良くする」という意味でもあると解説されているが、中国からすれば「アメリカ一辺倒」でさえなければ、差し当たって「米韓離間」は成功したと言えるだろう。

中国のネットには「韓国のバランス外交」という種類の見出しの記事が数多くみられる。たとえば「韓国外交バランス術:外交長官は訪中し国家安全担当首長は訪米」など、皮肉たっぷりだ。他の報道では「長官の方が首長より身分が上」というのもあり、韓国はアメリカよりも中国を重視しているといった記事も散見される。

 

翻(ひるがえ)って、わが日本。

習近平の国賓招聘を未だに「中止した」とは言えないのだから、どんなにアメリカの要求に従い中国を名指し批判してみたり、アメリカの海軍士官学校で安保担当高官が対面式の会談を行ったところで、日本の対中強硬姿勢の本気度など、到底信じることはできない。次には日本が韓国のように「二面相」外交と揶揄されないように願いたいものだ。

(本論はYahooニュース個人からの転載である)

遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授、北京大学アジア・アフリカ研究所特約研究員、上海交通大学客員教授などを歴任。著書に『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗 1月末出版、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文版・英文版もあり)、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Chinese Issue Global Research Institute, Professor Emeritus, Doctor of Science at the University of Tsukuba. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Chazu Chugoku Kenkoku no Zanka (Japanese Girl at the Siege of Changchun) (including Chinese and English versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chaina jajji — Motakuto ni narenakatta otoko (China Judge: The Man Who Couldn’t Become Mao Zedong),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.