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日本の防衛を危機に!なぜ公明党は中国に配慮するのか?
公明党と離れられない自民党(写真:アフロ)
公明党と離れられない自民党(写真:アフロ)

安保3文書案に関して公明党が中国に配慮し「わが国」を削除して「脅威」だけを残した。中国で絶賛されている公明党は、遂に「中国の戦友」とまで呼ばれるようになった。その動画を文字化してご紹介する。

◆中国の顔色を重視して日本の安保理念のレベルを下げる公明党

日本の安全保障に関する「安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)」の文案討議に当たって、政府が当初示したのは「中国が日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイルを打ち込んだ事例」に触れた上で「わが国および地域住民に脅威と受け止められた」とする文案だった。

しかし公明党が反対した。

日本の多くのメディア(たとえば産経新聞)などによれば、公明党の言い分は「せっかく(11月17日にタイのバンコクで)日中首脳会談をやって安定的な関係を築こうと打ち出した矢先に、なぜ『脅威』などと書き込むのか。外交の妨げだ」ということだったという。9日の与党実務者ワーキングチーム会合で、公明党は一連の文言の削除を迫った。

その結果、「わが国および」を削除して、「地域住民に脅威と受け止められた」とすることになった。

脅威を受けているのは「わが国」=「日本」ではなく、「弾道ミサイルが着弾した地域住民だけ」という論理だ。

そのような「中国の顔色を窺(うかが)ってばかりいる公明党」に妥協した岸田政権も許せない。

北朝鮮の問題もあろうが、日本のEEZに中国のミサイルが着弾したのは日本を戦争に巻き込む危険性があるからこそ安保3文書が出てきているわけだし、防衛費の増額も図ろうとしているのではないのか。

それなのに、「わが国および」を削除したら、「日本国は脅威を受けていない」ということになり、防衛費を増額する理由も立ちにくい。地域住民だけが脅威を受けているのに、日本国民全体の増税をするという論理も成り立ちにくくなる。

このような矛盾した論理を平気で持ち込むほど、自民党にとって公明党は大切なのか?

そして、公明党はそこまでして、なぜ中国の顔を立てなければならないのか?

公明党が守ろうとしているのは日本国民ではなく、中国への配慮なのか?

◆中国では「戦友」とまで絶賛されている公明党

中国のメディアでは、公明党が「わが国」を削除したことに関して礼賛の声が高く、「日本は結局、中国を脅威とは位置付けていない」というコメントがネットにも満ち溢れている。

2021年10月7日のコラム<「公明党から国交大臣」に喜ぶ中国――「尖閣問題は安泰」と>や10月27日のコラム<日本を中国従属へと導く自公連立――中国は「公明党は最も親中で日本共産党は反中」と位置付け>などにも書いた通り、中国では公明党以上に親中的な政党はないと評価している。

このたびはまた、「安保3文書」に関して、公明党を「中国の戦友」とまで持ち上げる動画を見つけたので、それを文字化して和訳し、ご紹介したい。

動画を作成したのは劉曉非という論客で、今年10月22日の段階で「日本の公明党は公開で中国を力の限り支えている」というタイトルで、公明党を「中国の戦友」とまで讃えている。以下はその内容だ。

劉曉非氏のウェブサイトより

皆さん、こんにちは。私は劉曉非です。

最近、日本の自公連立与党が作業グループを結成して会議を開き、国際情勢について議論しました。議論の内容は、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3つの重要文書の改訂に関してです。

両党は話し合いの中で、ウクライナ問題に関しては、ロシアの脅威が高まっていることで一致しましたが、中国に関しては一致しませんでした。自民党関係者は、中国の判断を重大な安全保障上の脅威のレベルにまで引き上げるべきだと言いましたが、公明党は「そんなことは言ってはならない。公明党は安全保障戦略において中国に対する強硬的な言葉を用いることには賛成できない。日中関係を重視しなければならない」と強く主張したのです。

もっとも、今回の公明党の主張は意外ではありません。彼らはいつもそうだったからです。1960年代半ばの発足から現在に至るまで、この党の基本方針は、日本の軍国主義に反対し、日中友好と日韓友好を主張することにあります。この党の創始者である池田大作の教師の一人は、第二次世界大戦中に軍国主義に反対したため、刑務所で亡くなりました。池田の兄は、中国での作戦に参加させられましたが、帰国後、池田に中国における日本軍のさまざまな悪行を話して聞かせたので、池田は幼い頃から軍国主義に反対していました。したがって公明党はずっとこの考え方に沿って、こんにちまで歩んできました。

1968年、中国が国連での法的地位を回復する前から、池田は公明党を代表して政策を発表し、日本は中華人民共和国を承認し、日中は外交関係を正常化し、国連は中華人民共和国の法的地位を回復させるべきだと主張していました。1969年、公明党は「台湾問題は中国の内政問題であり、日本人は干渉してはならない」と主張しました。1971年には、「一つの中国」を支持し、「二つの中国」に反対しました。そして過去における、いわゆる「日台条約は違法で無効であり、米軍は台湾と台湾海峡から撤退しなければならない」とも主張していたのです。

その後、日本の一部の歴史教科書が戦争を美化した時には、公明党は基本的に私たち中国側に立って、中国の味方をしたのです。

しかも、2015年、公明党党首の山口那津男が訪中したのは、中国人民抗日戦争記念館に行き、戦争に反対する意思を表明するためでした。靖国神社参拝についても、公明党は日本政府要人の参拝に一貫して反対してきました。今年4月に安倍晋三元首相が靖国神社を参拝したときにも反対表明をして、安倍晋三に釘を刺さなければならないと発言しています。

だから今、日本の連立与党の一員として、公明党は自民党に対し、中国とアメリカの間で一方的な立場に立たないよう警告を発し続けなければならないし、またアメリカの共犯にならないように注意を喚起しなければならないのです。日本はアメリカの東アジア担当副保安官ではないのですから。

結局のところ、日中間に横たわる多くの問題に関して、公明党は基本的に私たち中国と同じ立場に立っていると結論付けることができます。これこそが、わが国(中国)の指導者が、公明党を日本の政界との重要なコミュニケーションのチャネルとして積極的に利用する理由なのです(筆者注:こうして中国は公明党などを介して日本の政治をコントロールしている!)。

では(中国)国内の外交界はどうみているでしょうか?

一般に、公明党は刹車片(ブレーキ)とみなされています。つまり、日本の自民党や他の人々が歴史の車輪を戻し、極端な右翼に偏り軍国主義の方向への行動が出始めると、公明党が現れて、そういった動きにブレーキをかけるということなのです。少なくとも、この右翼傾向の趨勢を減速させることができます。

もちろん、公明党の役割には限界があります。日本最大の政党ではなく、日本社会全体が右傾化傾向にある中で、公明党が動員できる人数は多数を占めているわけではないからです。

したがって私たち(中国人)は、公明党が中国と完全に一致しているから公明党がいてくれさえすれば日本全体にブレーキを掛け、全ての問題を解決してくれると期待するわけにもいきません。

しかし、日本にこういう一群の人たちがいるということは、限りなく重要なことです。(一部省略)公明党は今もなお、アメリカが日本を使って中国と戦わせようとしていることに反対し、日本の軍国主義に反対しているのです。

ですから、彼ら(公明党)の声が大きくても小さくても、数が多くても少なくても、私たちは皆、彼ら(公明党)が成し遂げてきた成果を忘れてはなりません。私たちと同じ塹壕の中で戦ってくれている限り、どの国の人であれ、彼らは皆、私たちが尊敬しなければならない戦友なのです。

以上が動画の内容だ。

特に太字部分と、そこに書いた「筆者注」にご注目いただきたい。

◆自公連立は日本の国益にかなうのか?

一部では、公明党の山口那津男氏が、年明けには訪中する予定があるから、「わが国および」を削除させたのだろうという見方もあるが、それはそれで正しいとしても、とてもそのようなレベルではなく、公明党そのものが、「中国のためにある日本の政党」のようなものなのである。

それも、このような世界一「親中」の党が、日本の政権与党であるという現実を、日本人はどう解釈すればいいのだろうか?

自民党がなぜ公明党と手を組んだかに関しては少なからぬ本が出版されており、筆者は勉学のために佐高信氏が著した『自民党と創価学会』を読んだ。その帯には「理念なき野合の内幕を暴く」とか「自民党 政権維持のために信義も捨てる」などという言葉が並んでいる。つまり、票集めをするために公明党と組んだのだということが、さまざまな証言を基に書かれている。

となれば、目的は旧統一教会と組んだのと同じで、違いは、旧統一教会は政党を立ち上げていないということと、公明党は信者から強制的に寄付を集めるという反社会的行動はしていないということになろうか?

何れにしても、「票集め」により「政権を維持するため」ということでは一致しているわけで、自民党がいつまでも「反日・親中・親韓」的傾向の強い政党と手を結んでいるべきではないと思うのは筆者ひとりではないだろう。

自民党自身の中にも、二階俊博(としひろ)元幹事長や林芳正(よしまさ)外相のように、中国に高く評価されている親中派がいるので、もし「思想信条」で結ばれているのなら、自民党自身も二つに分けるべきではないかとさえ思うのである。 

分けないのは、そうすれば「自民党内の右も左も」当選できるからで、政権与党を維持するために「思想信条」=「信義」を捨てたと言われても仕方ないだろう。

これが日本の民主主義なのだから、何とも情けない。

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。「中国問題グローバル研究所」所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。2024年6月初旬に『嗤(わら)う習近平の白い牙』(ビジネス社)を出版予定。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She successively fulfilled the posts of guest researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.

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