
10月1日の論考<WWⅡの同盟国・米中の敵国は日本 そこに潜む中国の恐るべき「新型軍国主義・日本とG2」構図>では、米中が「フライング・タイガース」というキーワードを軸に、かつての共同の敵国・日本に向き合っている構図を分析した。
今回は米中に露(ロシア)が加わって、日本を敗戦に追い込んだ連合国枠組みの現代版が動きつつあるのを解説したい。
習近平の狙いや、何処(いずこ)に?
◆狙いは台湾統一
結論を先に言ってしまえば、狙いは「台湾統一」にある。
その証拠を時系列的に図表1に示す。但し、内容が多すぎるので、図表1を2枚に分けて示したい。
図表1:習近平が狙う「米中露戦後秩序の構図」と「新型軍国主義国家・日本」の関連性


公開された情報に基づき筆者作成
図表1内のナンバー「1」で示したように、「日独伊」敗戦後の世界秩序に関しては、1943年11月の「カイロ会談」と、カイロ宣言精神を受けて1945年2月に行われた「ヤルタ会談」がある。カイロ会談が「米中英」であったのは、蒋介石がソ連のスターリンを嫌ったためで、やむなくルーズベルトはスターリンを外してカイロで会談と密談を行なった。と同時に同じ1943年11月に、今度は蒋介石を外して「米ソ英」が「テヘラン会談」を行なっている。この二つの会談の精神を受け継いでいるのがヤルタ会談(米ソ英)だ。
したがって中国は、このヤルタ会談には中国(中華民国)の決意が反映されているとして、現在のロシア(旧ソ連)を含めた「米中露」が戦後秩序を形成したと位置付けている。
これを大前提として図表1を解説すると、おおむね以下のようになる(大雑把だが、日本関係は青色、ロシア関係はオレンジ色などで区別した。注目点は黄色でマークした)。
「2」の日中共同声明から「4」に至るまでの流れにおいて、日中関係は基本的に友好的だったが、「5」の「日本の集団的自衛権の限定容認/平和安全法制」から事態は急転換していく。
「7」をご覧になると明らかなように、中国政府は「高市発言」より前に、すでに「台湾介入=戦後秩序を乱す」という法理を形成していたことがわかる。
そこに「10」にある「高市発言」が発生したのだ。まるで中国政府が待ち構えていたようなタイミングだった。
ここから習近平は一気呵成(いっきかせい)に
【日本の台湾武力介入→日本の侵略行為→敵国条項→中国の自衛権発動】
という国連憲章「敵国条項」の構図へと論理展開し始めた。いうまでもなく、「敵国条項に抵触するような行動をとる国家・日本が国連安保理常任理事国入りするなどということは絶対にあってはならない」という主張へと結びつく。
見逃してならないのは「8」の動きだ。
これ以降、習近平はロシアを「第二次世界大戦の戦勝国側の同盟国」として扱い、フライング・タイガースにより「米中がかつての同盟国」という枠組みを、「米中露(旧ソ連)が戦勝同盟国である」という枠組みへと拡張していくのである。「8」に続き、「18」~「20」、「24」と、事態が急展開しているのが可視化されていると思う。
注目すべきは「19」にあるように、APEC「中国年」での多国間枠組みでの協力を要請していることだ。APEC「中国年」とは今年11月18日から中国の深圳で開催されるAPECのことを指す。すなわち、深圳APECで習近平は「米中露戦後秩序の構図」という枠組みを全面に出し、「米中露」対「日本」、さらに進んで「米中露」対「日独」体勢を展開していく可能性が大きいということである。
この過程で、高市発言がどれだけ大きなきっかけを作ってしまったか、そして習近平がいかに大戦略の枠組みで「台湾統一」を何が何でも実現しようと狙っているかが鮮明になってくる。
台湾統一のためなら習近平は何も惜しまない。なぜそうなのかに関しては拙著『G2構想』の【終章 台湾統一へのカウントダウン】で詳述した。
◆ドイツと対峙するロシアの構図
実はいま、ロシアは「ドイツ」をターゲットとして図表2にあるような形で論理展開を行なっている。
図表2:ロシアが警戒するドイツの「再軍事化」

公開された情報に基づき筆者作成
ドイツの現在のメルツ政権は、ショルツ政権以来の「ツァイテンヴェンデ(Zeitenwende、時代の転換点)」戦略を大幅に加速させ、国防費の急増と「欧州最強の通常戦力」を目指す方針や、現役26万人・予備役20万人を目標とする兵力拡大などを遂行している。具体的にはリトアニアへのドイツ軍旅団の恒久駐留、あるいはウクライナの長距離打撃(Long-Range Fire)能力への支援を実行し、さらにフランスとの核抑止協力へと踏み込んでいる。
したがってロシア側からは急速な「ドイツの再軍事化」として認識され、習近平の戦略と利害が一致している。
第二次世界大戦における連合国の敵国側である三国同盟は「日独伊」だったが、イタリアは1943年9月にすでに降伏しており、1945年2月に行われたヤルタ会談では主として「日独」を対象としていた。
プーチンとしてはウクライナ戦争を「ナチ」を撲滅させる一環として位置づけており、ドイツが好戦的になっていることは、日本を新型軍国主義国家と位置付けて闘っている習近平とは、非常に相性がいい。もちろん「米中露」枠組みを呼びかけたのは習近平の方だが、ドイツが先頭に立ってNATO強化を図るのであれば、「敵国条項」を持ち出して中露提携路線を進むのは非常に都合のいいことである。
だからこそ、図表1の「20」にあるように、プーチンはわざわざ今年8月13日に日本の領土であるはずの択捉(えとろふ)島に上陸して見せた。前日の12日には「北方領土は第二次世界大戦の結果として確定した」と表明している。日本では、「なぜプーチンが突如?」と疑問を呈するだけで、それに対する正解を見出して研究者あるいはメディアはいなかったように思うが、実態は「習近平に呼応して動き」だったのである。
この姿勢により、プーチンと習近平はガッチリとタグを組み、そしてトランプはその習近平を、高市早苗とは比較にならない形で破格の熱烈歓迎をして見せた。
◆日本はこの事実を正視せよ!
高市早苗および日本国政府に言いたい。
日本はこの事実を正視しなければならない。
いま世界で何が起きているのか、習近平がいかなる巨大な枠組みで、日本をその「壺」に落とし込んでいるのかを直視しなければならない。
図表1の「10」、「21」にある通り、高市早苗はまるで「飛んで火に入る夏の虫」のごとく、習近平の思うままの「壺」に自らを落とし込んでいるような言動をしている。
それが見えないほど、日本政府は無知蒙昧であるとしか言いようがない。
高市早苗は日本をどこに落とし込んでいこうとしているかを自覚すべきだ。
猛省を促したい。
この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。
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