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WWⅡの同盟国・米中の敵国は日本 そこに潜む中国の恐るべき「新型軍国主義・日本とG2」構図
中国・習主席が訪米 ホワイトハウスで歓迎式典(写真:新華社/アフロ)

9月26日のコラム<トランプ「中国は同盟国」発言は事前に習近平と調整 梯子を外された高市首相>の「追記3」に書いたように、米中首脳会談の成果文書にさえ「米中は第二次世界大戦のときは同盟国だった」事実を明記した。これは、9月22日に国連総会で「国連憲章から敵国条項を削除せよ」と主張した高市首相と「トランプ・習近平」ペアが真っ向から対峙する形を招いている。

本稿では、それならなぜトランプ大統領が「第二次世界大戦時の同盟国」宣言を持ち出すに至ったのかに関して考察し、2025年11月の「高市発言」後、中国が日本を「新型軍国主義国家」として批判し始めた事実との間の「恐るべき構図」を紐解くこととする。

キーワードは「フライング・タイガース」だ。

 

◆「フライング・タイガース活用」の発端は江沢民 トランプ発言までの流れ

『毛沢東 日本軍と共謀した男』で詳述したように、共産中国「建国の父」毛沢東は、死ぬまで一度も「抗日戦争勝利」を祝賀したことがない。日本軍に勝利したのは「中華民国」の蒋介石なので、蒋介石を打倒して中国共産党による「新中国(=中華人民共和国)」を誕生させようとしていた毛沢東は「抗日戦争勝利」を祝賀することは政敵・蒋介石に「おめでとう!」と言うことになるので、絶対に祝賀させなかった。

毛沢東が逝去した1976年以降は、小規模ながら各地域主催で「抗日戦争勝利記念」が祝賀されることはあっても、全国規模で祝賀されるようになったのは1995年からである。

なぜなら1991年12月に旧ソ連が崩壊し、長年にわたって激しかった「中ソ対立」が消え、1995年5月に、当時の国家主席だった江沢民が初めてモスクワで開催された「反ファシスト戦争勝利記念祝賀大会」に招待された。

大会に出席した江沢民は興奮した。

実際は反ファシスト戦争において、日本軍と戦ったのは「中華民国」で、「中華人民共和国」は日本敗戦の4年後である1949年に誕生した国だ。したがって胸を張って「日本軍の侵略戦争に勝利したのは中華人民共和国である」とは言えない。

だというのに、この私が「反ファシスト戦勝勝利者側」の戦列に入れて貰えた…!

この事実は江沢民の自尊心を激しく刺激し、1995年9月から中国国内でも大々的に全国規模で「抗日戦争勝利・反ファシスト戦争勝利記念日」として祝賀されるようになったのである。「抗日戦争勝利記念」だけでなく「反ファシスト戦争勝利記念」というのが必ず付いているのは、このことが原因だ。

しかし、中国人民は日本軍の侵略と戦っても、ドイツやイタリアなど、いわゆる「日独伊・三国同盟」による「ファシスト国家」と戦ったわけではない。そこで「反ファシスト」であることを印象付けるために、江沢民は翌10月に米国にいる「フライング・タイガース」の老兵を「抗日戦争・反ファシスト戦争勝利50周年記念」行事の一環として招聘し「権威を付けた」のである。「反ファシスト」という、格上げされた共産中国を見せるために「フライング・タイガース」を利用したのだ。

招待された側にジェフリー・グリーン(Jeffrey Greene)という人物がいた。グリーン自身は元米海兵隊パイロットでフライング・タイガース老兵ではないのだが、1995年のフライング・タイガース老兵訪中団に同行し、ドキュメンタリーを制作。グリーンはは1998年に米国の民間非営利団体である「米中航空遺産基金会(Sino-American Aviation Heritage Foundation)」を設立した。

2007年にはフライング・タイガースの歴史や史跡の保存を目的とする別の民間団体「フライング・タイガース歴史協会」も設立され、米中航空遺産基金会と互いに協力しながら大きな役割を果たしていく。

習近平政権の2013年代になると、駐米中国大使(崔天凱)はフライング・タイガースの歴史は習近平が唱える「新型大国関係」の軸になるとして盛大な招待会を開催。

その後の経緯は図表1に示したが、これらに呼応したトランプ1.0政権における当時のトランプ大統領の動きも見逃せない。2018年12月20日、トランプは中国系米国人の第二次世界大戦従軍者全体を表彰する法律にサインしたのだ。続いて2019年1月29日、ワシントンの退役軍人省本部で、5人の中国系「第二次世界大戦」退役軍人を表彰する式典を開催した。その5人の中にフライング・タイガースのエンジニアがいた。

ただ、この法案はトランプ本人が発案したものではなく、中国系米国人団体であるC.A.C.A.(Chinese American Citizens Alliance=中国系米国人市民同盟。1895年設立)が2016年から進めた運動を受け、2017年に共和・民主両党議員が法案化し、上下両院を通過したものだ。

こういった米中双方からの相互作用を受け、図表1にある通り、2025年9月19日に、トランプと習近平が電話会談をして「米中は第二次世界大戦で肩を並べて戦った盟友」であり、フライング・タイガース遺族を天安門の楼閣に招いた事実を確認し「トランプ・習近平間の共通認識」へと持って行った。

トランプはこの時期、10月末日に予定されている韓国での米中首脳会談を控えてウキウキしており、その勢いで韓国での米中首脳会談を「G2ミーティング」と称してはしゃいでいた。習近平が周到に仕掛けた「戦略的誘導」に完全に乗った形だ。

 

 図表1:フライング・タイガースに関する米中間の相互作用

公開された情報を基に筆者作成

かくして、冒頭で述べた9月26日のコラム<トランプ「中国は同盟国」発言は事前に習近平と調整 梯子を外された高市首相>で書いたトランプの「中国は第二次世界大戦における米国の同盟国」発言が出てくるのである。

これは2013年9月17日に駐米中国大使が「フライング・タイガースの歴史は新型大国関係(G2)の軸を成す」と発言した通り、「フライング・タイガースはG2構想の精神的軸を形成し、米中がかつて同盟国であった」という事実を米中首脳が合意文書で確認し合うところにまで至ったということになる。

 

◆高市首相の「国連憲章の敵国条項」撤廃要求と、習近平が非難する「新型軍国主義国家・日本」の恐るべき構図

このような凄まじいことが米中間で進んでいるとも知らず、日本では周知の如く、2025年11月7日の高市首相による台湾有事に関する、いわゆる「高市発言」が出てくるわけだ。

習近平にとっては「待ってました」と言わんばかりのタイミングでの「高市発言」だった。

中国は図表2に示したように日本を「新型軍国主義国家」と称して、激しく非難し、同時に習近平とトランプの距離を縮めていく。

図表2:「高市発言」が招いた中国の「新型軍国主義国家」としての日本批判と「習近平・トランプ」の呼応

公開された情報を基に筆者作成

図表2の出来事を一つ一つ説明すると膨大な文字数を必要とするので、詳細は省き、結果的に如何なる構図になっているかをご説明したい。

1.高市首相は米中がどのように呼応しながら「G2構想」を形成すべく動いたかを全く知らずに、迂闊にも2025年11月7日に「高市発言」を放った。図表1にある現象が進んでいることに全く気付いていない(=世界が見えていない)中での発言だ。

2.米中で呼応しながら「フライング・タイガース」を用いて「第二次世界大戦では米中は同盟国だった」という構図の中には、「米中が力を合わせて戦った敵国は日本だった」ということが含まれている。

3.現在もなお、日本を米中共通の敵国にするためには「高市発言」は願ってもないタイミングでの発言だった。

4.国連憲章の「敵国条項」には、第二次世界大戦において連合国と戦った(日独伊三ヵ国からなる)ファシズム国家が、もし再び「軍国主義化」すれば「国連の承認なしに被害国は軍事的制裁を与えることができるというニュアンスのことが謳われている。

5.そこで中国は日本を「新型軍国主義国家」として徹底して非難し、「敵国条項」が今も現実として「生きている」という枠組みの中に日本を填め込んだ。

6.その時に同時進行していたのが「第二次世界大戦のとき米中は同盟国として日本と戦った」という事実の再認識で、それを米中首脳会談の合意文書の中に書き込むという芸当まで習近平は「トランプと共に」成し遂げたのである。

7.なお中国は村山談話(日本は第二次世界大戦でアジアなど周辺諸国に多大な苦痛と損害をもたらしたことを謝罪した談話)が発表された1995年には国連憲章から敵国状況を削除することに賛成票を投じたが、「現在は状況が違う」として図表2の2026年9月23日の欄にあるように「重要な現実的意義がある」としている。

 

これが如何に危険なものであるか、高市早苗は自覚していないし、日本政府も認識していない。その欠如はどこから来たかというと、何としても自民党が政権を維持していたいという鈍化した自民党議員の権勢欲であり、何よりも高市早苗の「高い支持率を得たい」という名声欲から来たものと判断することができる。そのためには、日本国の将来や日本国民の真の幸せなどはどうでもよく、戦争を知らない、そして中国に対して優越感を味わっていたい一部の若者たちの心に響くよう、「もう台湾が大好きで大好きで…」などと発言し、台湾有事に日本は立ち向かうという勇ましい言葉で支持率を高めていくという気持ちしかないからだ。

いま日本がすべきは米中の「G2構想」の実態を知ることであり、その枠組みの中に日本が落とし込まれている現実を認識することだ。それができなければ、日本は終わる。高市早苗の権勢欲が日本を弱体化させるところに追い込んでいく。

警鐘を鳴らしたい。

1941年中国生まれ。中国長春市で中共軍による食糧封鎖に遭い家族を餓死で失う。1953年日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『G2構想 勝つのは米国か中国か』(7月2日発売予定)、『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』、『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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『G2構想 勝つのは米国か中国か』

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