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トランプ「中国は同盟国」発言は事前に習近平と調整 梯子を外された高市首相
9月24日にワシントンで開催された米中首脳会談における習近平国家主席夫妻とトランプ大統領夫妻(写真:ロイター/アフロ)

9月24日、米中首脳会談を終え、歓迎式典でスピーチしたトランプ大統領は、第二次世界大戦のときに「中国はアメリカの同盟国だった」と述べたが、この言葉はアドリブではなく、会談前から周到に米中両国間で調整したものと判断される。

 日本では、高市首相が機先を制して米中首脳会談の前にトランプと日米首脳会談をして「対中認識を共有し日米同盟の絆の強さを再認識した」と宣言しているだけに、トランプのこの言葉はあくまでも「トランプ流のアドリブに過ぎない」とか「リップサービスでポロリと出たまでだ」と自らに言い聞かせている傾向にある。高市首相のメンツを保とうと必死のようだが、そういった弁明は通じないことを、ホワイトハウスが公開しているスピーチの場面を通して検証する。

 日本政府は現実から逃げずに、日本国民のためにもファクトを直視すべきではないのだろうか。

 

 

◆ホワイトハウスが公開した歓迎式典動画が証明:トランプの「中国は同盟国」発言は米中両国で事前に調整準備した結果

 日本時間9月25日(現地時間9月24日)、ホワイトハウスの公式YouTubeチャネルは<歓迎式典におけるトランプ大統領と習近平国家主席のスピーチに関する動画>を公開した。【9:57】頃をご覧いただくと、トランプが「第二次世界大戦において中国は米国の同盟国だった」という趣旨の発言をしている場面を確認できる。その40秒後の【10:37】辺りに中国語通訳の音声が聞こえる。

ここでは、3つの方法によって、トランプの「中国は同盟国だった」という発言は、決してアドリブではなく、米中首脳会談が行われる前から、米中間で周到に調整し準備されていたものであることを証明する。

1.「中国は同盟国」関連はトランプのスピーチ原稿の3分の1を占める

まず、ホワイトハウスの動画からトランプのスピーチを文字化し、「第二次世界大戦のとき中国は米国の同盟国だった」関連の話題がどれくらいの割合を占めているかを観察してみよう。

図表1にスピーチの台本全文を掲載し、そのうち「第二次世界大戦のとき中国は米国の同盟国だった」関連の話題部分に黄色マーカーを付けてお示しする。

図表1:トランプのスピーチ台本全文と「中国は同盟国」関連部分(黄色)

ホワイトハウスの動画を基に文字化は筆者が作成

図表1から明らかなように、スピーチ全文のうち約3分の1が黄色で染められていることが分かる。正確に計算すれば文字数で「189/576=32.8%」だ。

この部分でトランプは以下のように述べている。

――共通の利益に焦点を当てれば、多くのことを成し遂げられると確信しています。歴史を通して、共通の利益の追求は、広大な海を越え、途方もない距離と多くの違いを乗り超えて、私たちを結びつけてきました。そして第二次世界大戦では、米国を同盟国にさえなりました。第二次世界大戦で共に戦った私たちの偉業を見てください。勇敢なアメリカ人パイロットたちは志願して中国に赴き、あの伝説的な国と、あの伝説的なフライング・タイガースの存続のために戦いました。彼らの行動はまさに驚くべきものでした。そして、米海兵隊が中国の人々と出会ったことがきっかけとなり、海兵隊は今日でも使われている中国語のフレーズ「ガンホー(gung ho)」を採用するに至りました。海兵隊はこのフレーズを大きな熱意を表す表現として使いますが、中国語では文字通り「共に働く」という意味です。両国民が力を合わせて戦争に勝利したように、習近平国家主席と私は今後も共に力を合わせ、両国のより良い未来を築いていきます。

習主席、彭夫人、この歴史的なご訪問に改めて感謝申し上げます。アメリカ合衆国へようこそ。本当にありがとうございます。ありがとうございます。(スピーチの関連部分文字起こしは以上)

 

これだけ長い話を、「アドリブ」や「トランプのちょっとした思い付き」などでできるはずがない。もしアドリブというのなら、この「アドリブ」(黄色部分)を除いたら、トランプのスピーチは、ほとんど何もなくなってしまう。

2.トランプは台本を見ながら「中国は同盟国」とスピーチしている

次に、トランプが図表1の黄色い部分を喋っているときに、トランプは「台本を見ながら喋っている」という写真をお示ししたい。

図表2:台本を見ながら「中国は同盟国」関連の発言をするトランプ

ホワイトハウスの動画の関連部分をスクリーンショットして、その時の英語とその和訳を筆者が付加

図表2から明らかなように、トランプは台本を見ながら「さらには第二次世界大戦においては(中国は)米国の同盟国にさえなった」と話している。アドリブならば、台本を必死で見る必要はない。聴衆を見据えながら、いつもの「トランプ節」を豪快に放言すればいいだけだ。したがってアドリブではない。

3.習近平も台本を見ながら「トランプ大統領が先ほど言ったように」と「同盟国」の話をしている

ホワイトハウスの動画の【13:00】辺りから習近平のスピーチが始まり、中国語のスピーチと英語の通訳が交代で流れる。【23:00】辺りから「第二次世界大戦」の話に触れるが、このとき習近平は「先ほどトランプ大統領が述べた通り」と、「台本を見ながら」言っている。

もしトランプがアドリブで「中国は同盟国」関連の話をしたのならば、習近平のスピーチの台本に「先ほどトランプ大統領が述べた通り」という言葉が書いてあるはずがないのである。

おまけに、その英語通訳が流れているとき、トランプは少しも驚いていない。当然のこと(すでに熟知していること)を聞いているような、自然なままの表情をしている。その瞬間を切り取って図表3に示す。

図表3:トランプに呼応して「第二次世界大戦」の話をする習近平と、その英文通訳を聞いても特に驚かないトランプ

ホワイトハウスの動画の関連部分をスクリーンショットして、その時の英語とその和訳を筆者が付加

このとき習近平は以下のような事を話している。

――第二次世界大戦中、中国と米国はファシストの侵略に対し肩を並べて共に戦いました。まさに先ほどトランプ大統領がおっしゃった通り、中国人民も米国国民も、この歴史を決して忘れないでしょう。(習近平がスピーチで「第二次世界大戦」に関して触れた部分はここまで)

 

以上の3つが、ホワイトハウスの動画からアドリブでない証拠として挙げられる顕著な場面である。

ちなみに、「中国は同盟国」発言が予め準備されていた証拠として、習近平が北京を発つ前日である9月22日に、中国共産党の機関紙「人民日報」は、突如「フライング・タイガース」に関する記事を大きく扱っていたという事実もある。

上記「1」で示したトランプのスピーチの主要部分を「フライング・タイガース」が占めていることをご確認いただきたい。

◆晩餐会で習近平が「日本の軍国主義侵略者」を批判

9月24日夜、トランプは習近平のために豪勢な晩餐会を催したが、その席で習近平が挨拶し、以下のような言葉で日本を非難した。

――80年以上前、中国と米国の人民は肩を並べて作戦に当たり、共に、日本の軍国主義侵略者と戦い、有名なハンプルートを開拓しました。 抗日戦争中、中国の軍人と民間人は数百人の米国人パイロットを救助し、数十万人の命を犠牲にしました。血と火によって築かれたこの友誼は、世代を超えて受け継がれていくでしょう。(晩餐会での習近平の挨拶の日本に関連した部分の抜粋は以上)

ここで言う「ハンプルート」とは、日本軍のビルマルートを遮断するために、中国軍と米軍が協力して開設した「インド北東部のアッサムと雲南省の昆明を結ぶハンプルート」のことである。米軍のハンプ空輸作戦への参加は、中国軍に緊急に必要な戦略物資を提供するだけでなく、中国に駐留する米空軍「フライング・タイガース」を支援する役割も果たした。トランプが提起した「フライング・タイガース」に絡めて、習近平が晩餐会の挨拶として予め準備していたことが窺(うかが)える。

 

◆梯子を外された高市首相

9月26日、米中が呼応して、「米中首脳会談で合意に達した項目」に関して発表した。中国側は新華網が<中国と米国が合意に達した8項目の成果>という形で発表し、米国はホワイトハウスが<ファクトシート:ドナルド・J・トランプ大統領、歴史的な国賓訪問を主催し、中国との公正かつ互恵的な関係を推進 – ホワイトハウス>という形で発表した。

その中に、「両首脳は、米国と中国が第二次世界大戦で同盟国であり、共に戦って勝利を収めたことを改めて確認した」という項目がある。それほどに米中首脳は「(第二次世界大戦における)同盟国」であることを強調しているのである。

わが国の高市首相は、トランプが習近平と会う時に、決して「中国に傾かないよう釘を刺すために」、米中首脳会談前にトランプに会い、「大成功であった」と意気揚々と成果を述べていたが、何のことはない。トランプは高市と会う前に、習近平と周到に準備を重ね、「中国を同盟国と呼ぶ方法」を編み出していたのだ。

茂木外相は9月24日のNHKの単独取材<茂木外相 米中首脳会談直前の日米首脳会談 意義は非常に大きい>で、今回の日米首脳会談について「両首脳の信頼関係がさらに深まったと強く感じた。米中首脳会談の直前のタイミングで中国をはじめとするインド太平洋情勢について認識を共有し、強固な日米同盟を内外に発信した意義は非常に大きい」と述べている。また日中関係について「アメリカとの強固な信頼関係のもと、中国に対し、その立場にふさわしい責任を果たしていくよう働きかけていきたい」も述べているようだ。

日本は何を見ているのだろうか?

9月26日の読売新聞は<米中首脳会談、日本政府は情報収集・分析急ぐ…トランプ氏「同盟国」発言など利用した中国の「宣伝戦」警戒>という見方を披露しているが、今さら情報を収集して分析を急いでも遅い。おまけに【トランプ氏「同盟国」発言など利用した中国の「宣伝戦」警戒】とあるが、ここで中国の「宣伝戦」を警戒するというレベルなのだろうか?

これを論じ始めたら、二つや三つの論考では収まり切れなくなるので、ここでは控えるが、高市早苗は潔く「トランプに梯子を外されたこと」を認めるべきだろう。

米中は「G2構想」により、世界に新しい秩序を形成しようとしている根本的なファクトに目を向けよと言いたい。

 

この論考はYahoo!ニュース エキスパートより転載しました。

1941年中国生まれ。中国長春市で中共軍による食糧封鎖に遭い家族を餓死で失う。1953年日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。内閣府総合科学技術会議専門委員(小泉政権)や中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『G2構想 勝つのは米国か中国か』(7月2日発売予定)、『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』、『米中新産業WAR』(ビジネス社)(中国語版『2025 中国凭实力说“不”』)、『嗤(わら)う習近平の白い牙――イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』(ビジネス社)、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』(ビジネス社)、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』(PHP新書)、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(PHP)、『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』(遠藤 誉 (著), 白井 一成 (著), 中国問題グローバル研究所 (編集)、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(毎日新聞出版)、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版・韓国語版もあり)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。 // Born in 1941 in China. After surviving the Chinese Revolutionary War, she moved to Japan in 1953. Director of Global Research Institute on Chinese Issues, Professor Emeritus at the University of Tsukuba, Doctor of Science. Member of the Japan Writers Association. She has served as a specialist member of the Council for Science, Technology, and Innovation at the Cabinet Office (during the Koizumi administration) and as a visiting researcher and professor at the Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Sciences. Her publications include “2025 China Restored the Power to Say 'NO!'”, “Inside US-China Trade War” (Mainichi Shimbun Publishing), “’Chugoku Seizo 2025’ no Shogeki, Shukinpei ha Ima Nani o Mokurondeirunoka (Impact of “Made in China 2025” What is Xi Jinping aiming at Now?), “Motakuto Nihongun to Kyoboshita Otoko (Mao Zedong: The Man Who Conspired with the Japanese Army),” “Japanese Girl at the Siege of Changchun (including Chinese versions),” “Net Taikoku Chugogu, Genron o Meguru Koubou (Net Superpower China: Battle over Speech),” “Chugoku Doman Shinjinrui: Nihon no Anime to Manga ga Chugoku o Ugokasu (The New Breed of Chinese “Dongman”: Japanese Cartoons and Comics Animate China),” “Chugogu ga Shirikonbare to Tsunagarutoki (When China Gets Connected with Silicon Valley),” and many other books.
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